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ユダヤ人青年が偽の語学レッスンで命つなぐ『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2022年11月14日

HYPE FILM, LM MEDIA, ONE TWO FILMS, 2020(C)

 

強制収容所からの生還を果たしたひとりのユダヤ人青年の姿を描く『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』が11月18日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』は、第2次世界大戦時にナチスドイツの強制収容所に入れられたユダヤ人の青年が、自身をペルシャ人と偽り、架空のペルシャ語のレッスンを行うことで生き延びていく姿を描いた戦争ドラマ第2次世界大戦中、ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年のジルは、自分はペルシャ人だと嘘をついて処刑を免れ、一命を取り止める。しかし、そんなジルに、将来イランのテヘランで料理店を開きたいという夢を抱くナチス将校のコッホ大尉が、ペルシャ語を教えるよう命じてくる。とっさに自ら考えたデタラメの単語をペルシャ語と偽って披露したジルは、コッホ大尉の信用を取り付けることに成功するが、その後も偽のペルシャ語レッスンを続けることになり…

 

本作の監督は『砂と霧の家』で知られる、ウクライナ出身のバディム・パールマン。主人公のユダヤ人青年ジルを『BPM ビート・パー・ミニット』のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、ナチスのコッホ大尉役に『約束の宇宙(そら)』のラース・アイディンガーが演じた。

 

HYPE FILM, LM MEDIA, ONE TWO FILMS, 2020(C)

 

映画『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』は、関西では、11月18日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、11月25日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、12月2日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

本作の主人公であるユダヤ人青年のジルは、実に運が良い男である。ナチス親衛隊に捉えられ集団移送中のトラックの中で、偶然にも隣にいた男からペルシャ語で書かれた希少本を食料と交換して手に入れることに。その後、突然射殺される可能性が合ったにも関わらず、下手な芝居で一命を取り留められた。一見するとコメディのような展開ではあるが、生き延びることを切望する男を真摯に捉えている。強制収容所に連行された後、ペルシャ語が分かる人間を欲していたコッホ大尉に目を付けられたことで、更に一命を取り留めてしまう。コッホ大尉は終戦後にテヘランで料理店を開く夢を叶えるためにもペルシャ語を必要としていた。そこで、<偽のペルシャ語>を教えることに…嘘をついているかもしれないと思われるユダヤ人はこんな処遇を受けるとは…運が良い、としか言いようがない。そもそも、元々はコックに就いていたドイツ人がナチス・ドイツの中で大尉になっているということ自体は、どのように理解すれば良いのか。ジルに出会ったことを考えれば、彼もまた運が良い男とも捉えられるだろうか。

 

ジルとコッホ大尉の関係性が変化していく様子は実に興味深い。収容所の中では明らかな上下関係があるが、2人だけが存在する空間の中では、先生と生徒の関係だ。生徒は真面目に学習し、単語を次々に欲していく。とはいえ、デタラメな言葉なので、考え出すにも限界がある。そこで、気づいた方法は言語学的にも興味深い。お互いに夫々の方法で記憶していく必要があり、一種の同志的な関係性も育まれていく。しかし、周囲の人間からは、特異な関係性に見えてしまい、疑いの目が付けられ、幾度もジルは危険な状況に遭遇してしまう。されど、ジルが持つ運の強さが勝っていた。歴史を考えれば、最終的に2人の運命は明暗が分かれることは明らかだが、ジルが成し得たことには驚きと共に感動すら覚えてしまう。事実を基に脚色が加えられた本作ではあるが、戦時下においても人間同士の熱いドラマが収容所においても起こっていたんだな、と改めて気づかされた。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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