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ピンチはチャンス!人生をポジティブに捉えられる作品になったら…『37セカンズ』佳山明さん、大東駿介さん、HIKARI監督に聞く!

2020年2月15日

ハンディキャップを持つ女性が、自らの力で新しい世界を切り拓いていく姿を描く『37セカンズ』が全国の劇場で公開中。今回、佳山明さん、大東駿介さん、HIKARI監督にインタビューを行った。

 

映画『37セカンズ』は、出生時に37秒間呼吸ができなかったために、手足が自由に動かない身体になってしまった女性の自己発見と成長を描いた人間ドラマ。脳性麻痺の貴田夢馬(ユマ)は、異常なほどに過保護な母親のもとで車椅子生活を送りながら、漫画家のゴーストライターとして空想の世界を描き続けていた。自立するためアダルト漫画の執筆を望むユマだったが、リアルな性体験がないと良い漫画は描けないと言われてしまう。ユマの新しい友人で障がい者専門の娼婦である舞は、ユマに外の世界を見せる。しかし、それを知ったユマの母親が激怒してしまい…
主人公のユマと同じく出生時に数秒間呼吸が止まったことによる脳性麻痺を抱えながらも社会福祉士として活動していた佳山明さんが、オーディションで見いだされ主演に抜擢。母親役を神野三鈴さん、主人公の挑戦を支えるヘルパー・俊哉役を大東駿介さん、友人・舞役を渡辺真起子さんがそれぞれ演じる。ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督の長編デビュー作となった。

 

映画『パーフェクト・レボリューション』で主人公クマのモデルにモデルになった熊篠慶彦さんと出会ったHIKARI監督は、障碍者と性に関する話を聞き、車いすに乗っている男性の障碍者によるSEXに関する内容を知り「女性の場合はどうなんだろう」と興味を持った。その後、アメリカで女医でありセックスセラピストでもある方にインタビューを行い、男性との違いや自然分娩などに関する話を聞く。アダルト漫画を描いている女性が多いことも知り、人間の想像力や脳の働き等が入り交じった脚本を執筆する。

 

監督自身はポジティブな性格で育ってきており、幼い頃から大人の嫌な部分も見て「こんな大人にはなりたくない」と決心。また、母子家庭で祖父母に育ててもらい、家族経営していた鉄工所では障碍者の方とも仕事で接していたので、特別なことではなく「今作で描いて、様々な方達に理解してもらえたらいいなぁ」と願っている。だが、20代の頃は好きな事をするがゆえに生活が苦しい経験にも遭遇しており 「自分はどうなればいいか。どうすれば平和な世界に出来るのか」と自らを問い詰めていった。そこで「人に優しくなれるには?」と考えた時、まずは「自分を愛して、自分の心がワクワクすることを していたら、周りがそのエネルギーを感じ取り、結果、周りも自分も幸せになる」 と考えるようになっていく。また「ポジティブな気分になれる映画が好き」と気づき「映画制作を通して世の中を良く出来る。人と人とがお互い理解しあえる作品を作れたらいいな」 と映画監督を志した。「人生は山あり谷あり。やりたいと思う方向に向かっていても選択する時があり、失敗しても、学ぶことがある。ピンチはチャンス」だと捉え「貴重な経験を以て高みにいけるかは自分次第。意外な方向に進んでも精神的に成長することがある。それを短時間で人々に感じ取ってもらえる作品になったらな」と願い、本作を描いている。

 

映画初出演にして主役を担った佳山さんについて、HIKARI監督は、彼女のピュアさや初々しさに惹かれ「演技ではない。目の前の出来事を素直に受け取り、リアクションできる能力があり良かった」と称えた。佳山さんは「ヒロインは障碍の当事者なので、その視点による様々な台詞があり、感情移入してしまいます」と打ち明け、初演技ながらも難しいシーンも果敢にチャレンジしている。その姿を見た大東さんは「明ちゃんはカメラが回っている瞬間を精一杯に演じていた。結果的にユマのイキイキとした生命力に繋がっている。一瞬一瞬に応えていく姿勢が明ちゃんの作品に対する向き合い方。結果的に生命力豊かな作品になった」と評した。大東さんは、2005年に俳優デビューして以降、15年間も俳優として活動し続けてきたなかで、一瞬一瞬を無心で挑むことの難しさも感じており「明ちゃんはこの瞬間を無心で挑んでいる。スクリーンで観て、特に魅力的に感じた。本来、役者はそうあるべき」と再認識していく。本作に参加する前にHIKARI監督とは出会っており「コミュニケーション能力が高く、親戚のような分け隔てない距離感で向かってくる」と独特の性格を理解する。同時に「仕事に対しては厳しい。ストレートで厳しい指摘はダメージが大きい」とショックを受けたが「結果的に良い薬となった」と感謝していた。これを受け、HIKARI監督は「基本的に私は自然体。勉強して挑んできてくれる役者が備えている皮を剥いでいきながら役柄を作り出していく」と自身の能力を説いていく。

 

監督自ら執筆した脚本を読んだ佳山さんは「何度も書き直して頂いています。インタビューも沢山されて書かれているので、リアリティある内容にグッときました」と感激している。大東さんは「障碍という言葉が刺さりました」と述べ「俊哉は過去に家族を失っており、その原因が自身にあるかもしれないと引き摺っている。自分の命を誰かに還元する気持ちで、人の為に生きる介助士を選んだ」と説く。さらに「救われない気持ちがあり前に進めない時に出会ったユマと出会う。彼女を支えるつもりが、いつの間に彼女に背中を押されていた」と理解していった。障碍について「知らないことに対して人間は暴力的になってしまう。知ることは救いになる。知らないことを知らないままでいることは障碍に近づいている。平気で人を傷つけてしまう生き方を選んでしまうことは心の障碍に近づく」と考え「俊哉の場合は、外の世界を知ろうとせず、自分の殻に籠って未来を知ろうとしない。現代社会が放つ空気感の中で刺さってくる」と印象深い。撮影に挑み、試写で作品を観て「外の世界に興味を持ち、知らない自分に気づけたことを肯定出来た。世界は興味で溢れている」と感じ「この映画を様々な人に届けたい。映画は娯楽ですが、時に強力な薬になる作用がある」と期待している。

 

HIKARI監督は日本に生まれ、今や人生の半分以上をアメリカで過ごしてきた。日本について「素敵な国だな。歴史や文化があり、食べ物が美味しいし、綺麗で平和である」と称えると同時に「一方では、どうしてもきちんとしないといけないと考える人が沢山いる。特異な方は叩かれるが、他人のことを言い過ぎている。ジャッジする人の方が間違っている」と冷静に分析する。佳山さんと出会い、彼女の素朴さや純粋さを感じ「明ちゃんがユマちゃんを演じながら成長していっていることが映像に映っている。役者達は本気なので、明ちゃんを引っ張ってくれた。そしてお互いに学んだ事はきっとある」と話す。佳山さんは、本作について「ユマの物語であり、映画はフィクションだが、私が映画に参加したということは現実。そういう意味では私の人生の大事な一部。みなさまにはそういう意味ではリアルな人生を観ていただけたら」と願っており「今後も機会を頂けたら有難いな。表現することのおもしろさを皆さんに教えて頂いた」と感謝している。HIKARI監督も「人生は分からないことで進んでいく」と伝え、次なる展望に目を輝かせていた。

 

映画『37セカンズ』は、全国の劇場で公開中。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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