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2時間近くの夢を見て楽しんで笑ってもらえたら…『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』成島出監督に聞く!

2020年2月12日

まったく異なる目論見で“嘘夫婦“を演じることになった男女の運命を描く『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』が2月14日(金)から全国の劇場で公開。今回、成島出監督にインタビューを行った。

 

映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』は、太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチさんが独自の視点を交えたスクリューボールコメディとして「グッドバイ」のタイトルで戯曲化、演出した舞台を映画化。戦後の復興期、文芸雑誌の編集長・田島周二は何人もの愛人を抱えていた。さすがにこのままではまずいと思った田島は彼女たちと別れる決心を固めるが、愛人たちを前にすると優柔不断な性格が災いし、別れを切り出すことが出来ずにいた。困り果てた田島は、ガサツで金にがめつい担ぎ屋・キヌ子に女房を演じてくれと頼み込む。しかし、泥だらけの顔を洗ったキヌ子は誰もが振り返る美しい女性だった。
大泉洋さんが田島役を、小池栄子さんが舞台版でも演じたキヌ子役をそれぞれ演じるほか、水川あさみさん、橋本愛さん、緒川たまきさん、木村多江さん、濱田岳さん、松重豊さんらが顔をそろえる。監督は『八日目の蟬』『ソロモンの偽証』の成島出さんが務めた。

 

中学・高校時代から太宰治を好んで読んでいた成島監督は、太宰作品について「陰と陽がある。『人間失格』や『斜陽』に代表される陰なドロドロした世界がある。一方で、ユーモア小説と呼ばれる太宰の作品がおもしろい。世間では評価されていないが好きだった」と振り返る。『グッド・バイ』は未完の遺作であり、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんが独自の視点を以て舞台化された作品。監督も鑑賞し、お気に入りだ。「小池栄子さんの演技も素晴らしくおもしろい舞台。劇場が湧いていた。演劇賞も沢山受賞している」と羨ましく感じており「演劇の映画化は難しいが、このおもしろさを映画で再現出来るかな」と構想していく。本作プロデューサーと脚本の奥寺佐渡子さんにも観劇してもらい、良い反応があり、映画脚本の開発が始まった。

 

戦後の混乱から復興へ向かう日本が舞台の本作。「1950,60年代の古典的な喜劇映画に近い匂いが良い」と考え「豊かになっていこうとした時代の生命力を個人の力を基にして描きたかった」と成島監督は語る。バスター・キートンやチャールズ・チャップリンのような昔のアクションを大事にして取り組んでおり、CGを極力使わず古典的な撮影技術で撮影していった。また、当時の自立した強い女性像が象徴的に描かれており、現代でも通用するテーマを備えている。キヌ子は孤児であるが体を張って働いており「自分のお金でお洒落して文化を楽しんでいる。恋愛経験がなくとも、女性が強いからお互いに嫉妬し合わないことが格好良い」と受けとめ「僕自身がそういう女性が好きで惹かれる」と告白。逆に「常に男が駄目であることが僕の映画」とまで言い放つ。

 

大泉洋さんが演じた田島のキャラクターについて「独特の軽やかさとイジラれキャラも含め、甘ったれや我儘さを活かして作っています」と説く。本作は、当時のおおらかな時代を反映させたストーリーとなっており「このおおらかさは今の映画界にはない。どこにいってしまったのか」と嘆きながらも「笑うことは人間にとって大事なこと。劇場の中で、クスクスに始まり、ゲラゲラと笑い出し、最後にはワハハとなる映画独特の笑いを残したい」と思いを込めている。「チャップリンのような古典の笑いは映画の原点として強い」と考えており「小津安二郎監督のユーモアは今観ても色褪せない。ちゃんとした映画を撮りたい思いがありました」と語っていく。

 

小池栄子さんは『八日目の蟬』で初めて成島監督作品に出演し、今作で5作目となる。まさに成島組の常連になっており「仕事する度に尊敬する。凄い努力家で絶対にサボらない」と敬意を表す。さらに「ヨーロッパの女優さんみたいなスケールがある」と捉えており「女優として幅が広いのでおもしろい。絶世の美女から泥だらけの女まで嘘っぽくなく演じられるのは彼女ぐらいしかいない」と絶賛。舞台から長い時間をかけてキヌ子を作りあげた小池さんとの仕事を楽しんだことが伺える。なお、太宰治の原作では、キヌ子の声は鴉声だと形容されており「牛みたいに力が強くて声が悪い。だけど、とんでもない美貌の持ち主である滅茶苦茶なキャラクター。小池さんにしか出来ないキャラと声ですよね」と称えた。また、本作に登場する個性的な女性達には役柄のバックグラウンドをそれぞれ設定しており「元々のケラさんによる舞台があるなかで、女優それぞれにしか出来ない演技をやってくれた。キャスティング含め上手く出来たので、同じシチュエーションでどのようなキャラが待っているか、楽しんで貰えれば」とお客さんの反応を期待している。

 

本作は、物語を通じて人生の素晴らしさを観客に語りかけていく。監督自身は、人生の素晴らしい瞬間を突き詰めようと映画を撮り続けており「太宰も人生が分からず、何度も心中未遂をしたり小説を書いたりしている。映画監督も同じなんじゃないかな。はっきり云えるようになったら映画を撮らなくなってしまう」とこれまでを顧みる。また、昨今の現代社会に対し「皆がギスギスとしてイライラしている世の中になっている」と嘆き「休憩したほうがいい人にこそ観て楽しんでもらい、良い意味で息抜きをしてもらえたら。映画の中で2時間近くの夢を見て楽しんで笑ってもらえれば嬉しいな」と願っていた。

 

映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』は、2月14日(金)より全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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