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自分を必要としてくれる人がいれば生きていける…『調査屋マオさんの恋文』今井いおり監督に聞く!

2019年10月25日

変わりゆく認知症の妻を記録し続ける元調査屋の物語『調査屋マオさんの恋文』が、10月26日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。今回、今井いおり監督にインタビューを行った。

 

映画『調査屋マオさんの恋文』は、変わりゆく認知症の妻を記録し続ける元調査屋の物語。家族を顧みず、仕事一筋に生きてきた。元調査屋の男は、認知症を発症した妻の記録を始める。日々変わりゆく妻のために何ができるか。おぼろに浮かび上がる、愛の記録…

 

今から5年前、本作の主人公である佐藤眞生(さとうまお)さんに出会う前、今井いおり監督は映像制作の仕事に嫌気が差し、精神的に疲れていた。「この仕事は本当におもしろいのか。出来ることなら、おもしろい仕事だけけをやりたい」と強い思いを抱いていたが、実際はそんな風には生きていけない。次第に「自給自足をしながら、おもしろい仕事ができればどれだけ幸せか」と我儘な思想にとらわれていた。

 

実際に自給自足について調べていくなかで、佐藤さんが自給自足に関する実体験を書いた本を発見する。SNSを通じてコンタクトを取り「自給自足を学びたい」と考え、実際に会うことに。佐藤さんと話していく中では、認知症を患う奥さんについても聞くようになった。奥さんのことを細かく記録している「縫子生」を見せてもらい「映画になるんじゃないか」と気づき、今井監督はカメラを回していく。現在の佐藤さんを撮りながら、次第に「過去の佐藤さんが奥さんにしてしまった裏切りを償うために行っている介護を映画にしたい」と考えるようになった。また「仕事は年を取れば、過去の栄光でしかない。周りに自分を必要としてくれている人がいればいい」と身に沁みていく。「現代は生産性が叫ばれているが、人間にとっては一番大事なものではない。周りの人が大事。佐藤さんは奥さんが認知症になり、ようやく素直になり認めることが出来た」と実感した。

 

だが、介護経験がなかった今井監督は、編集作業がなかなか進められなかった。しかし、当時の監督自身が2,3歳の娘を育てながら「介護と育児は似ている」と気づき、再び映像素材を見直していく。「佐藤さんは家庭を顧みず、息子さんや奥さんが大変なことになってしまい、それまでの生き方を辞めた」と捉え、佐藤さんの生き様を自らに反映し「帰宅後は編集作業等をせず直ぐに休んでいた。勿論、作業は進まない」と正直に語る。一旦、撮影素材を忘れていたが、客観的に見ることができ、不要なシーンや説明が必要なシーンに気づけており「先輩の方に『全て文字に起こしなさい』と言われ、実践してみた。同じような画のシーンがあるが、カテゴリが違う」と理解を深められた。

 

編集作業の途中、佐藤さんから「出来上がった映像を観たい」と何度もリクエストを受けていく。だが、決して内容について口出しはしなかった。振り返ってみると「佐藤さんは、よくぞ上映の許可をしてくれた。懐が深く、自分の恥ずかしい事情まで見せてくれた」と、今井監督は感謝の気持ちしかない。

 

映画『調査屋マオさんの恋文』は、10月26日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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