Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

言いたいことを自分の言葉で話せばラップになっていく…!『WALKING MAN』ANARCHY監督に聞く!

2019年10月10日

吃音症の青年がラップミュージックと出会い、人生を切り拓いていく様を描きだす『WALKING MAN』が10月11日(金)より全国の劇場で公開される。今回、監督のANARCHYさんにインタビューを行った。

 

映画『WALKING MAN』は、ラッパーのANARCHYさんが自身の実話を盛り込みメガホンを取り、野村周平さんを主演に描いた初監督作品。川崎の工業地帯で母と思春期の妹ウランと暮らすアトム。極貧の母子家庭の家に育ち、幼い頃から人前で話すことも笑うことも苦手なアトムは不用品回収業のアルバイトで生計を立てる毎日を送っていた。ある日、母が事故により重病を負ってしまうが、一家は家計が苦しく保険料を滞納していた。ソーシャルワーカーからアトムたちに投げつけられる心ない言葉。そんな過酷な日常の中、アトムが偶然出会ったのがラップだった。野村さんがアトム役を演じ、優希美青さん、柏原収史さん、伊藤ゆみさん、冨樫真さん、星田英利さん、渡辺真起子さん、石橋蓮司さんら俳優陣のほか、T-Pablow、WILYWNKA、Leon Fanourakis、じょう、LETY、サイプレス上野、hMzといったラッパーたちも顔をそろえる。企画、プロデュースを『地雷震』『スカイハイ』等で知られる漫画家の髙橋ツトムさんが務めた。

 

父親がミュージシャンのため、幼少の頃から音楽が近くにあったANARCHYさんは「将来は音楽をやるのかな」と自然と考えていた。子供が育つには最適な環境で過ごせなかったことで、世の中に対して伝えたいことや言いたいことが溜まっていった。当時、RHYMESTERやキングギドラ、SHAKKAZOMBIEやBUDDHA BRAND等、90年代以降のHIPHOPが全部好きで、ラッパーが一番格好良いと思っていた中学生だったので、職業にすることを意識せずにラップを始めた。なお、家で一人で過ごすことが多く映画も良く見ており「『ホームアローン2』が大好き。一人でも楽しめると勇気づけられた。何回も観たい映画です」と話す。

 

監督自身の経験を基にして、逆境を武器に出来るHIPHOPを本作に反映しており「子供の頃は強がっていたけど、HIPHOPで弱みを吹き飛ばせた。主人公のアトムは『何故、俺だけこんな辛い思いをしないといけないんだ』と思っている。ラップやブルースにとっては一番重要な要素であり、マイナスが武器になる。アトムにも武器にしてほしい」と願いを込めている。他にも、HIPHOPの要素を取り入れており「自分の人生やライフスタイルを形にして表現するのが俺の中でのHIPHOPで、まさにウォークマン自体がHIPHOP」と挙げていく。「目の前にウォークマンを見つけ、言いたいことが見つかること自体がHIPHOP。このテンポを保ったままストーリーを繋げていきたい」と考え「嫌な気分になるバッドエンディングな映画は好まない。最初はアトムがかわいそうだと思ってしまうけど、言いたいことが云えて成長していく様子が描けたらと思って作りました。出来るだけ余分な部分を省きたかった」と明かす。ANARCHYさんが映画を作ると聞いて、銃が出てくる派手な映画と思われることを懸念しながら「何かを抱えている男の子達が自分の口で話す一言は、歌う前からラップなんですよね。そういう映画にしたい」と語る。

 

自分の思いを語ろうとする過程で、アトムは三度ステージに立つ。最初は何もできないラップバトルだったが「アトムに悔しい思いを芽生えさせたかった。無理矢理ステージに上げられて歌えないのは当たり前」だと断言。だが、次の機会には自分の言葉を紡いでおり「何も言えなかった自分が悔しかったから、もう一度同じ場所に立った」ということが大事であり「本来ラップバトルはディスりあって戦う。だが、アトムはしなかった。アトムが自分の言いたいことをラップに載せて歌うことが重要」だと、アトムの変化を大事にしていった。

 

吃音症を抱えるアトムが歌うようになる過程を描くのは難しかったが「台本を作っていく中で、僕の中にアトムの気持ちは自然と入ってきた。彼の気持ちを理解し、アトムになりきって書くことに専念できた」と振り返る。ラストに歌う曲ではすべての思いを詰め込んでおり「アトムが今まで経験して感じたことをちゃんと歌おう。ラッパーが作った映画でそれが表現できなかったら、僕が作った意味がない。そこを失敗すると映画も失敗してしまう」と、プレッシャーを感じていた。「アトムにしか出来ない表現、アトムにしか伝えられないことをやりたい」という思いがあり「はっきりと発言できない人達が勇気を振り絞って一歩踏み出すような映画にしたかった」と、思いを伝えていく。

 

アトムを演じた野村周平さんについて、ANARCHYさんは「彼は俳優として人気者。街中にいるスケーターと変わらない。好きなことに対して純粋に取り組み、楽しみたいことをやる感覚が僕等と同じ。人として凄い好き」と魅力を感じている。映画を撮りたいと伝えると「僕にやらせてください。やりますよ」と云ってくれる人間味や男気に惚れ込んだ。撮影現場では「言葉が少ないアトムという役を表情や歩き方で自分に取り込んで演じている」と感じ、野村さんへの敬意と感謝と格好良さを抱いていた。

 

自己責任や社会の不条理について描いた本作だが、ANARCHYさんは「自分がやると決めたことや、自分が発する言葉に対して、自己責任を持つことが分かってもらえたら大丈夫。途中まで言われることは、アトムの責任ではないことばかり。最後のメッセージを伝えるために、しつこく自己責任という言葉を出している」と説く。現代を生きる若者に対し「何にでもなれるし、何でも出来ることに気づいていない子達が多い。文句がなくとも、もったいないな」と感じており「選択肢が増えているので、迷ってしまう。自分の直感を信じて一歩を踏み出し、時には転びながら、良い大人になれる。本作が、そのきっかけであり、勇気となる映画になれば」と願い、今作の公開を楽しみにしている。

 

映画『WALKING MAN』は、10月11日(金)より全国の劇場で公開。

Related Tags:
キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts