誰もが山懐に抱かれて暮らしている…『山懐に抱かれて』遠藤隆監督を迎え舞台挨拶開催!
四季を通じて牛を完全放牧し、草だけで育てるという“山地酪農“。そんな困難な酪農を岩手県の山間で営んでいる大家族の24年を追いかけた『山懐に抱かれて』が関西の劇場でも8月31日(土)より公開。初日には、遠藤隆監督を迎え舞台挨拶が開催された。
映画『山懐に抱かれて』は、岩手県の山あいで、酪農を営む大家族の24年を追ったドキュメンタリー。テレビ岩手が独自に取材し、放送を続けてきたテレビ番組に追加取材と再編集を加え、開局50周年記念映画として公開。岩手県下閉伊郡田野畑村で5男2女と夫婦の9人で暮らす吉塚一家。父の公雄は「みんなが幸せになる、おいしい牛乳をつくりたい」との思いから、自らの手で山に牧場を切り開いて牛を完全放牧し、限りなく自然に近い環境で、草だけを餌に牛を育てる、安心安全の酪農「山地酪農」を実践している。プレハブの家でのランプ生活、大自然を駆け回り牛の世話をする子どもたち、父と成長した子どもたちとの衝突、仲間たちとともに挑んだプライベートブランド設立、第二牧場への夢など、実現困難を極める酪農に挑んだ家族たちが歩んできた24年を丹念に追っていく。ナレーションを、吉塚一家の牛乳を長年愛飲しているという女優の室井滋が務める。
上映後、遠藤監督が登壇。
山地酪農の魅力に惹かれた遠藤監督は、全国に紹介したくて吉塚さん一家を取材し続けてきた。取材をしていく中で「彼らは真っ直ぐに私達を見て話してくれる。正直に生き家族に寄り添い一生懸命に仕事している」と気づき「僕が持っていないものを彼らは持っている」と印象に残り、長年にわたり取材に通っている。
父の公雄さんは、山地酪農を実現するために絶えず頑張っているが、遠藤監督はお母さんの心境が気になった。「実は、お母さんは幼い頃に両親を亡くし、お姉さんと共に親戚の家を回りながら生活していました」と明かし「家族が揃ってご飯を食べるような暮らしがしたいねと夢に描いたそうです」と伝えていく。岩手県での上映の際には、吉塚さん夫妻が来場し舞台挨拶をして頂いており「奥さんは『ランプの下で食事を始めるシーンでは涙が止まらない。あの時点で夢が叶っていたんだ』と繰り返し仰っていました」と話し「なんて欲のない素晴らしい女性なんだ」と感動した。
本作は、元々はTVで「ガンコ親父と7人の子どもたち」シリーズとして4回放送されている。遠藤監督は、このタイトルがお気に入りだったが、映画化にあたり「大家族ものだと間違われてはいけない」と興行側に言われ、十分に考えていく中で『山懐に抱かれて』が思い浮かんだ。「時に優しく時に厳しく存在している自然が吉塚さん一家を見守ってくれている」と感じると共に、翻って「私共やお客様も、山懐に抱かれて暮らしているんだな」と気づかされていく。
今回、映画として制作し「一人一人と顔を見合わせて一緒に場を共有できる」と感動すると共に「TVでどれほど大ヒットしても拍手は聞こえてきません。映画は見て頂ける一人一人の顔と向き合える」と幸せを感じながら、舞台挨拶は締め括られた。
映画『山懐に抱かれて』は、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで上映中。また、9月14日(土)より京都・烏丸の京都シネマと神戸・元町の元町映画館で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
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