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ボーダーのない世界を作るきっかけとなる作品になれば…『おいしい家族』ふくだももこ監督に聞く!

2019年8月30日

家族における絆とそれに向き合う主人公の心境や新しい家族のあり方を映し出す『おいしい家族』が9月20日(金)より全国の劇場で公開される。今回、ふくだももこ監督にインタビューを行った。

 

映画『おいしい家族』は、映画監督のほか小説家としても活躍する新鋭ふくだももこ監督が、かつて自身が手がけた短編映画『父の結婚』を長編化。妻を亡くした父親が再婚するまでの親子の日々を描いた原作短編映画から、舞台を離島に移し、エピソードやキャラクターを追加して家族の絆とそれに向き合う主人公の心境をより深く描き出した。銀座のコスメショップで働く橙花は、母の三回忌に実家のある離島へ帰るが、そこでなぜか父・青治(せいじ)が母の服を着て生活している姿を目撃する。驚く娘を意に介さず、青治は「この人と家族になる」と居候の男性・和生(かずお)を紹介する。
テレビドラマ版『この世界の片隅に』で注目を集める松本穂香さんが主人公の橙花(とうか)に扮し、長編映画で初主演を飾った。父・青治役は原作短編映画でも同じ役どころを演じた板尾創路さん、青治のパートナーでお調子者の居候・和生を在日ファンクのボーカルで個性派俳優としても活躍する浜野謙太さんが演じる。

 

本作のベースとなった『父の結婚』は、若手映画作家の発掘・育成を目的とした文化庁委託事業「若手映画作家育成プロジェクト(New Directions in Japanese Cinema=ndjc)」の2015年度に製作された作品。30分の短編という条件の中で、ふくだ監督は「明るい映画を撮ろう」というテーマを設け「誰かが結婚したら明るくなる。誰が結婚したらおもしろいか。オトンがオカンの格好をして男性と結婚するストーリーは観たことないし、おもしろい」と発想していく。劇場公開された際には、舞台挨拶で板尾さんから「長編にしたい」とまでコメント頂き好評だった。だが、短編作品であるため「ビジュアル先行となり面白可笑しくやっているだけに見られてしまう。作品の本質が伝わっていなかった」と次第に気づいていく。そこで、「長編作品として制作し、自分の主張や思考を全部詰め込もう」と思いを秘めてきた。

 

長編作品にするにあたって、本作のプロデューサーは「家だけの話ではなく町の話にしないか」と提案。ふくだ監督は、島を舞台として設定し「話を広げていくカギとして、新たに高校生のキャラクターを追加し、別の角度から橙花と出会わせれば広がる」と構想していく。キャスティングにあたり、板尾さんだけは『父の結婚』から続投。長編化の報せを聞き一緒に喜んでくれた。松本穂香さんは「『ひよっこ』を観てオモロイ顔がいいなぁ」と気に入り、浜野謙太さんは「和生役は、役者を本業としていないミュージシャンがいいなぁ、と候補に挙げ、忙しい中でも奇跡的にスケジュールを頂けた」とツイていた。笠松将さんは「私の師匠であるサトウトシキ監督の『名前のない女たち うそつき女』に出演しているのを観た。舞台挨拶でも朴訥としていて雰囲気のあるえぇ子やな」と感じ、オファーしていく。なお、本作に対し、松本さんは「主演として自身を観てしまうけど、関係なく、凄く可愛い世界だな」と好反応。笠松さんも「初めて、出演作品で自分を意識せず、こういう世界があるんだ」と新鮮に感じた。板尾さんからは「説教臭くなく、いい映画やな」と言ってもらったが、ふくだ監督は「あくまで役者さんの力ですけどね」と謙遜する。

 

公開を直前に迎えた現在、自身の思想が明確になったと認識しており「この映画は私の思想映画」だと力説。本作を観た外国の方からは、字幕からの影響もありLGBT作品だと思われていることも認識しているが「それは間違ってはいない。だが、作品をカテゴライズされたくない。国籍も性別も血縁も関係ない、ただの家族の話」と主張する。さらに「私が養子であることは家族を考える上で大きい。両親と兄とは血縁がない」と告白。現在では「物心ついて以来、家族とは何か?と考えざるを得ない。でも、全くネガティブに不幸に思ったことがなく、家族とは血のつながりではない」と見出している。

 

また、去年の11月には、山戸結希監督が企画・プロデュースを手がけた『21世紀の女の子』が公開された。ふくだ監督は、山戸監督について「誰もみたことのないアプローチで完全に自分の世界を創造する人」と受けとめている。同時に「山戸さんには撮りたい映画があり、主張がある。同じ思想を以て映画界をどうにかしたい、女の子をどうにかしたい、という考えがある」と共感。だが「私が同じ手法を実践する必要はない。将来、映画監督になりたいと思う子にとって、山戸監督みたいになりたい、だけど、ふくだももこ監督みたいなやり方もあるな、と選択肢の一つに思ってもらえたらいいな」と考えている。山戸監督の影響で、自分にしか撮れない、明るい映画を撮ろう、という思考になり、翻って山戸監督には感謝していた。

 

なお、ふくださんは、映画監督だけでなく、執筆活動を行う小説家である。小説の映画化も検討しているが「小説と脚本は全く違います」と正直に話す。脚本は映画を作るための土台であり「映画は演じる役者と撮るスタッフがいて成立する総合芸術。その1つの歯車として脚本がある」と捉え「小説は、小説自体が1つの作品として完成する。脚本以上に自分の内面と向き合っていかないといけない」と苦しんでいるが、どちらも楽しさを感じている。

 

今後、西加奈子さんの小説を映画化したいと考えており「映像作家が西さんに魅力を感じるのは分かります」と共感を示す。とはいえ「西さんは小説でしか出来ない概念の話をやっている。今まで完璧に映像化できた作家はいないのではと感じている。しかも難しい原作が選ばれてきているので、取り組みたいけど、私に出来るのか」と不安は隠さない。他にも、多様な世界を描きたい、と考えており「今作が10年後にはスタンダードになっていればいい。もっと気楽に、自分や人を思いやれる人が少しでも増えていけば、世界は良くなっていく」と目を輝かせていた。

(C)2019「」製作委員会

 

映画『おいしい家族』は、9月20日(金)より全国の劇場で公開。

食卓のご飯を真上から美味しそうに撮る映画に、ハズレ無し!

 

ストーリーを真面目に分析すると、様々なマイノリティー問題を描いた問題作だと一見感じるが、個性豊かな家族たちのキャラクターと軽妙な会話劇は、ほのぼのファミリードラマとして本当に楽しめる。「父さん、母さんになろうと思う」予告では出オチのように使われるこのセリフは、可笑しいけれど、深い。その理由を語る件で、涙ぐみそうた。

 

本作は、ndjcで制作された30分の短編作品『父の結婚』から3年半越しでバージョンアップされ、非常に見ごたえがある。初の本格長編作品で監督も気合が入っており、ワンカットごとに「これは良い・・・!」とハっとするようなショットが続く。文壇でも活躍しており、マルチな才能を持つ監督が長編映画の作り手として今後どのように化けるか注目したい。

fromNZ2.0@エヌゼット

 

LGBTを題材にしたヒューマンドラマだと予想していたが、いざ鑑賞してみると本作の持つテーマはLGBTよりも深いところにあることに気づかされる。人と人との関わり方に始まり、社会の常識や普遍的な日常に我々の思考がいかに囚われているかまで教えてくれる。

 

「お父さんを僕にください」という衝撃的なフレーズを受け入れられなかった橙花の戸惑う姿が印象的で、普段の我々の心境は橙香に近いのではないかと考察した。映画やネットでの話や、他人の同性愛などに関して我々は肯定的だが、いざ自分の身の周りで、〝普通〟から逸脱した人間が生じてしまうと寛容的でなくなってしまう恐れがある。普通とは何か、人とは何か、ということを優しさ溢れる可愛い物語にまとめきった秀作だ。

 

ラストシーンでの最高な気持ちを損ねない白背景のエンドロールを選んだことにも拍手を贈りたい。

fromねむひら

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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