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80年代の表現が絶妙に効いている…!『サマー・オブ・84』ナマニクさんとUE神さんを迎えトークショー開催!

2019年8月12日

地元を騒がす連続殺人事件に興味を持った思春期まっただ中の少年4人組が、その恐ろしい真相ににじり寄っていく姿を描き出す『サマー・オブ・84』が関西の劇場でも8月10日(土)より公開。8月12日(月・祝)には、大阪・十三の第七藝術劇場にホラー・マエストロ ライターのナマニクさんとV-ZONEのUE神さんを迎え、トークショーが開催された。

 

映画『サマー・オブ・84』は、思春期まっただ中のオタク少年たちが隣家の警察官を殺人鬼と疑い、独自に調査を始めたことから、思いがけない恐怖に直面する姿を描いた青春ホラー。カナダの映像制作ユニット「ROADKILL SUPERSTARS(RKSS)」(フランソワ・シマール、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル)が、1980年代のスラッシャー映画やホラー、サスペンス、青春映画にオマージュをささげて描いた。1984年夏、アメリカ郊外の田舎町に暮らす好奇心旺盛な15歳の少年デイビーは、向かいの家に暮らす警察官マッキーが、近隣の町で発生している子どもばかりを狙った連続殺人事件の犯人ではないかとにらみ、親友のイーツ、ウッディ、ファラディとともに独自の調査を開始。しかし、そんな彼らの行く手には、想像を超えた恐ろしい現実が待ち受けていた…

 

上映後、ナマニクさんとUE神さんが登壇。1980年代の雰囲気を絶妙に取り入れた本作について大いに語り合った。

 

日本の80年代は、不景気だった70年代に比べて意外と明るく、1984年は、バブル景気となる前の元気な時代だった。だが、アメリカは暗くなっていく時代。本作について、ナマニクさんは「明るい80年代を描こうとしている姿勢は全くない。RKSSはオチから組み立てている」と解説。「前半はわざとドリーミーな80年代を表現している。主人公のデイビーは殺人鬼が隣に住んでいるかもしれなくて超クールだと云っているが、実際は全くクールじゃなかった。次第に暗くなっていく様子を映し出す」とRKSSが表現したたかったことを説明していく。UE神さんも「不安な要素を少しずつ見せてくる映画。隣の女の子の両親が離婚したり、地方活性化の失敗があったりして、郊外の方が不安。大らかな時代の終わりが実は84年」だと加えていく。

 

さらに、ナマニクさんは「日本は、5年後に平成がやってくる。89年がターニングポイント。明るい時代が来るわけないと感じた」と当時の日本を振り返り「同様に、アメリカの空気を連想して頂ければ、84年の状況が分かってくる」と説く。だが「この映画には80年代のゴリ押しがない」とも述べた。これを受け、UE神さんは「出発点が意地悪なところから始まっている。ウォークマンやBMX、チープカシオはあるが、80年代の定番アイテムが案外出てこない」と挙げていく。80年代の表現について、ナマニクさんは「殺人鬼は何故殺しているか全然分からない。80年代のスラッシャー映画の犯人にはよくある。理由があっても、『え、そんな…!?』な理由で殺している」と指摘。対して「2000年以降の殺人鬼にはいかんともしがたい理由を付けて説明過多」と違いを明確にしていく。

 

また、台詞や衣装には80年代ではないものも含まれている。会話の中にエイズに関する内容が少し出てくるが「84年に既にエイズは存在していたが、84年の暮れから話題になってくる」と解説。デビーとニッキーの会話には、スラングでconbo (conversation:やり取り)という言葉が出てくるが、80年代にはないスラングである。冒頭には、ボーリング場を横切るチアガールが映るが、スカートは21世紀以降のスタイルだった。『POLYBIUS』というゲーム機の筐体があったが「都市伝説になっている実在しないゲーム機、プレイするとあまりにも熱中し過ぎて気が狂うと云われていた。故障中で置かれていたが、好きな人は気づく。普通分からないことを彼等はやっている」とまで分析している。

 

細かい80年代ネタをナマニクさんは気に入っており「80年代の表現を前作『ターボ・キッド』でやり過ぎたがために、敢えてコレを選んだよ」と受けとめた。挿入されている音楽について「80年代レトロウェーブなテクノを専門にしているル・マトスが、ジョン・カーペンターを意識している」と捉え、「サントラも良い!配信もされていて、気に入って何回も聴いている」とべた褒めだ。改めて、本作の良いポイントとして「80年代の表現を抑えていて、映画自体の濃さがなく、意外と淡口。薄い紅茶や珈琲を飲んでいるつもりが、なぜか段々と濃くなり、一番最後に濃いシロップが沈んでいたような作品」だと挙げ、絶賛していく。

 

最後に、ナマニクさんは「字幕だと柔らかい表現になり、諄さが再現できない。単語の意味を調べた上で意識しながら、もう1回観てもらえたら」とリピーター鑑賞を促しながら「映されているものをよく観ると何かしら意味がある可能性がある。何度も繰り返し観ても大丈夫な映画」と太鼓判を押し、トークショーは締め括られた。

 

映画『サマー・オブ・84』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。また、8月24日(土)から、京都・出町柳の出町座、9月21日(土)から、神戸・元町の元町映画館でも公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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