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元名門校教師と問題児たちの交流描く『12か月の未来図』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2019年5月1日

(C)ATELIER DE PRODUCTION – SOMBRERO FILMS – FRANCE 3 CINEMA – 2017

 

移民の子供たちの学力低下、教育の不平等といったフランスが直面している深刻な社会問題を背景にしたヒューマンドラマ『12か月の未来図』が、5月3日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『12か月の未来図』は、問題だらけのさまざまな生徒とエリート教師の交流から、移民や貧困などフランスが抱える社会問題をユーモアを交えて描いたドラマ。ベテラン教師のフランソワは名門高校からパリ郊外の教育困難中学へ転任することとなった。移民などさまざまなルーツを持つ生徒たちを前に、これまでは生粋のフランス人の生徒たちを相手にしていたフランソワは、生徒の名前を読み上げるだけでも一苦労というありさま。勝手の違う環境の中で日常的に巻き起こるさまざまな問題をベテラン教師のプライドをもって格闘していた。そんな中、遠足で訪れたベルサイユ宮殿でお調子者のセドゥがトラブルを起こし、退学処分をくだされてしまう。長い教師生活で感じたことのない使命感を抱いたフランソワはセドゥの将来を守るために戦いを挑むが……

 

本作の監督は本作が長編デビュー作となるオリビエ・アヤシュ=ビダル。実際に中学校の教育現場に2年間通い、入念な取材を実施。そこで得た経験に基づいて、カタブツの教師とトラブルだらけの生徒たちとの交流や成長のドラマを感動的に紡ぎ出した。

 

(C)ATELIER DE PRODUCTION – SOMBRERO FILMS – FRANCE 3 CINEMA – 2017

 

映画『12か月の未来図』は、5月3日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、5月4日(土)より、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、5月24日(金)より、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。

本作を観て、フランスの教育格差に疑問を持ち、インターネット等で調べてみると現実は深刻だった。まさか、自分の名前を読めないという大人までいるとは…

 

背景には移民問題があり、日本には縁がない話だと感じるだろうか。だが、実際には、日本も教育格差が年々広がっている国であり、決して遠い話ではない。貧困による教育格差以外にも勉強にすら苦手意識を持ち、自分から蓋をしてしまい、結果的に授業についていけなくなってしまった生徒も多くいる。勉強ができない、と自身に刷り込んでしまうと、一問目が考えたら分かる問題でも関係なく、書く気力すら起きない。

 

本作で提示されるフランソワの教育方法には、思わず驚きの声が漏れるものがあった。フランソワも最初は手探りだが、さすが名門校の元教師として徐々に波に乗っていく。日常に溶け込ませた勉強方法は彼らの関心を引くには効果的で、アナグラムを取り入れた時点からは、鑑賞している私自身が本作に引き込まれ、授業を受けているようだった。

 

教師陣それぞれの生徒に対する態度の違いでも思ったが、生徒が諦めていることを教師まで「こいつらはできない」と教育を放棄してしまうと、生徒に残るものは何もない。生徒が多感な時期だからこそ扱いは難しいが、一歩上の立場だからこそ出来る教育や取り組む姿勢を見せれば、生徒との衝突がいつしか対話に変わり、お互いの間に絆すら生まれることを本作は強く証明している。

 

最も印象に残っているセリフは「優しくするとつけあがり、厳しくすると反発する」。日本でも教師が対応できる範囲は年々狭まっており、解決策を自分でも考えた時はかなり悩まされた。この答えが出せない人は、本作を鑑賞し、是非一考してみてほしい。

fromねむひら

 

「僕はバカだから」この言葉を聞くと、壁を感じるようになったのは大人になってからだ。もし誰かにそう言われたらあなたは相手にどう返すだろうか。馬鹿ってなんだろう。何が人を馬鹿だと決めてしまうのだろう。

 

「名門校で教師をするこの私が地方の貧困層に教えるなんて絶対やだ!」そう顔面に書いてあるかのような顔をするフランソワは、移民や貧困層の子供が通う小学校に不本意にも赴任することになった。学校に登校してみれば毎日がパーティー騒ぎのようで困惑する。彼は教科書に載っているかのような「賢い人」を体現したキャラクターだ。だが、堅くて相手の気持ちを考えてやれない非情さも含まれる。馬鹿を真正面からバカにするような人間でしかない。フランソワには「勉強が嫌いなこと」が理解できなかった。しかし、問題児セドゥの存在が彼を変えていく。セドゥはフランソワによって少しずつ「学ぶこと」を学んでいく。フランソワのお勧めした行動を実行する素直さには心が洗われた。セドゥに対して羨ましささえ覚えてしまう。自分に対してそんなに一生懸命になってくれる人間なんて、ほんのひと握りしかいない。涙が出た。

 

「教える価値のない子なんていません。」国民教育省の女性の言葉には思わず頷いた。生まれた環境・人種によって、学ぶことに格差があるということは本来あってはいけない。誰にでも学ぶ権利がある、そして学ばない権利もある。だからフランソワはセドゥを待ち続けた。

 

「大人が子供の未来を守る」というシンプルだが大切なことが本作にはしっかり描かれている。教育について説教臭さもなく、コミカルかつ現代的に描くことによって見やすさを高めている。胸を張って「良い映画」だ。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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