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永遠に語られていく映像として上映していきたい…『夏少女』鍋島惇さん、東原三郎さん、四國光さんを迎え舞台挨拶開催!

2019年8月12日

桃井かおりさんが主演、瀬戸内海の小島を舞台に少年と不思議な少女の交流を描く『夏少女』が、製作から23年の時を経て劇場初公開。8月12日(月・祝)には、鍋島惇プロデューサー、撮影の東原三郎さん、四國光さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『夏少女』は、広島の過去と現在をつなぐかのように出現した美しい少女を描いたファンタジー。1996年に完成しながら、諸般の事情で上映されなかった作品で、2019年に初の劇場公開が実現。瀬戸内海に浮かぶ人口3000人の小さな島に暮らす12歳の少年マモル。マモルの母は郵便船で船長を務め、父は雑貨屋を営んでいるが、それぞれが戦争の傷跡を抱え込んでいた。そんなマモルの前に、ひとりの美しい少女がこつ然と姿を現し…

 

上映後、鍋島惇プロデューサーに加え、急遽、撮影・東原三郎さんと、劇中に登場する絵を描かれた四國五郎さんのご子息である光さんが登壇。様々な経緯があった中で出来上がった本作は、打ち出すテーマに合わせて8月公開になったことに対し、鍋島プロデューサーは感慨深く感じている。

 

24年前に、呉市の蒲刈島で撮影された本作は、現地の子供達が参加できる夏休みの間に撮り終える必要があった。だが、脚本を務めた早坂暁さんによる台本の出来上がりが遅く「全てのスタッフが蒲刈島に到着した頃は台本は何もなかった」と東原さんは明かす。しばらくして、ようやく東京からFAXが届き、助監督がスタッフに配り撮影が始まった。当時を振り返り「少年達の演技が素晴らしく、助監督が一から手取り足取り頑張りました。この作品の桃井さんは素晴らしいです。寛平さんは白血病を患っている役で痩せている必要があり、現場の場所移動は走っていました」と懐かしむ。

 

さらに、鍋島プロデューサーは「早坂さんは遅坂さんと呼ばれていました」と加えていく。早坂さんに書いてもらう度に途中は逃げられたこともあり、トラウマになりながら「本作の撮影では、現場が全て差し込み状態、前代未聞、有り得ない」と憤慨するしかない。「映画を作る時は、台本を受け取って読み込んで台詞の活かし方を考える。そこから画が出来上がると編集するが、台本がないと全く動けない」という事態になり、撮影期間を2週間失った。どうにか撮影を終え仕上げて23年前に出来上がった本作は、まずは、新宿西口にあった安田生命ホールで有料試写会にて上映され満員に。だが、以降は東京では上映されておらず、広島と長崎の一部で上映。その後、5年かけてフィルムを探し、ようやく見つけ出し、上映できる状態になった。

 

本作では、四國五郎さんの絵が重要な役割を果たしている。遺体をそのまま見せるのは余りにも生々しく、四國五郎さんの絵が悲惨だが訴える力を伴っていた。四國さんのご子息である四國光さんは「父は広島で生涯を絵と詩で平和運動を行っていた人間です。『おこりじぞう』という絵本は全国で朗読会や朗読劇が行われています」と紹介。「父の絵が何処で登場するか数えてみましたが、最低8枚は出てきています。早坂さんから頼まれて相当な数の絵を描いたのではないか。昔の絵だと感じさせるためにインスタントコーヒーを溶かして筆で紙に塗って古い絵に見せかけた」と明かしながら、このエピソードに笑っている。さらに「父はデッサンをするために少女と対話しながら、12歳と云えど平和についてしっかりとした考えを持った聡明な少女だったと書き残している」と添えた。

 

最後に、鍋島さんは「今でも被爆者の語り部を行っている方から『これが風化していくことに耐えられない』と聞きます。この作品が出来上がったことは、テーマ性としては古い映画ではありません。永遠に語られていく映像として期待して望んでいることです」と訴え「今回、東京と同時に大阪でも上映が叶いました。今後、上映を拡大して皆さんに観て頂きたい」願いながら、舞台挨拶は締め括られた。

 

『夏少女』は、大阪・十三の第七藝術劇場で公開中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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