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吉行さんは女優人生を懸けて臨んだ…!『雪子さんの足音』浜野佐知監督と山﨑邦紀さんを迎え舞台挨拶開催!

2019年7月13日

“月光荘“という洋館を舞台に、大家の女性と洋館の常連女性、そして下宿人の男子大学生という3人の思惑が複雑に絡み合う様を映し出す『雪子さんの足音』が、大阪・九条のシネ・ヌーヴォでも、7月13日(土)より公開。初日には、浜野佐知監督と脚本を担った山﨑邦紀さんを迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『雪子さんの足音』は、第158回芥川賞候補になった木村紅美の小説「雪子さんの足音」を、吉行和子さん主演で映画化。「月光荘」という名の洋館で2階を下宿人に貸している大家の川島雪子は、放蕩息子の死をきっかけに月光荘の大部屋ををサロンとして開放する。サロンの常連でテレフォンオペレーターをしている小野田香織は、肉親や職場の人間関係に対して屈折した感情を抱いていた。ある日、香織は男子大学生の湯佐薫をサロンに招き、その日から夕食会や部屋への食事の出前、ぽち袋に入ったお小遣いなど、雪子と香織の過剰なまでの善意と援助が薫に向けられる。やがて薫は月光荘から逃げ出してしまうが、それから20年が過ぎ、雪子が孤独死したということを知った薫は、再び月光荘を訪れようとする。監督は『百合子、ダスヴィダーニヤ』の浜野佐知さん。吉行さんのほか香織役で菜葉菜さん、薫役で寛一郎さんが共演。寛一郎さんの父でもある名優・佐藤浩市さんも友情出演している。

 

上映後、浜野佐知監督と山﨑邦紀さんが登壇。吉行さんと共に作り上げた本作について熱く語る舞台挨拶となった。

 

浜野監督は、1972年にピンク映画の監督としてデビューし、現在までにピンク映画を400本近く撮り続けている。だが、ピンク映画では日本の女性監督としてカウントされないと知り、30年の経歴があるピンク映画の監督としてのプライドと作品を日本映画界に認めさせるためには一般映画を撮らなければいけないと気づいた。1998年に『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』を撮り、翌年、1999年7月24日にシネ・ヌーヴォで関西初公開して頂いたことを今でも感謝している。以後、また自身の映画を上映したいと思いながら、6本の一般映画を撮り続け「今回、『雪子さんの足音』を完成させ、本日を迎えました」と感慨深い。

 

吉行和子さんには、『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』以降、全ての作品に出演して頂いている。2017年の7月のある日、吉行さんのマネージャーさんや菜葉菜さんとお酒を飲んでいたら、吉行さんから「とんでもないばあさんを演じたい」とLINEメッセージが届いた。浜野監督は「吉行さんの気持ちを直球で受け取った」と手応えを感じていく。同じ女性として「吉行さんは、TVや映画では物分かりの良いおばあさんかいじわるばあさんしか演じさせてもらえない、と感じていた。女の一生を経験し、心の中にはいくつになっても決して枯れない欲望や願望を抱いているおばあさんをやりたいんだ」と吉行さんの気持ちを受けとめた。

 

第一作目を撮り終えた後、吉行さんが「浜野監督が映画を撮られるなら、脚本を見ないでも出演します」と事務所の社長に伝えたことを浜野監督は明かす。今回、初めてのリクエストを受け「私に撮れ、と言っている」と直感。女が撮るべき作品だと受けとめ、吉行さんありきの映画を作ろうと決意する。様々な作品を検討したが最適な作品がなかなか見つからない中で、2ヶ月後に『雪子さんの足音』が発表され、脚本家が見つけ、映画化に向けて動き出した。

 

脚本を担った山﨑さんは「原作を書いた木村紅美さんは純文学を書かれており、尾崎翠さんを尊敬している作家」だと解説。だが、映画化するにあたり「おもしろいおばあさんとして描かれているが、高円寺のボロいアパートの女主人という設定は吉行さんに合わない」と困惑。そこで、木村紅美さんから小説の原型となった『たそがれ刻はにぎやかに』では、古い洋館に1人で住んでいるクララさんという老女が主人公の物語として描かれていると知り、「クララさんと雪子さんをドッキングさせれば、吉行さんが演じられる雪子さんが出来上がる」と着想していった。吉行さんから「雪子さんを演じ、女優として生きてきて、最後に物凄いご褒美を貰った気がする」と仰って頂き、浜野監督は「今作は、吉行さんが女優人生を懸ける程の意気込みで臨んでくださった」と感謝している。

 

映画『雪子さんの足音』は、大阪・九条のシネ・ヌーヴォで公開中。8月3日(土)からは、神戸・元町の元町映画館でも公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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