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皆に頼ることで自分に引き込んでいく…『オーファンズ・ブルース』村上由規乃さんと工藤梨穂監督を迎え舞台挨拶開催!

2019年7月13日

記憶が徐々に欠落していく病を抱える女性が、行方不明の幼馴染を探しに旅に出る姿と彼女の心の葛藤を繊細に描き出す『オーファンズ・ブルース』が大阪・十三のシアターセブンでも7月13日(土)より公開。初日には、村上由規乃さんと工藤梨穂監督を迎え、舞台挨拶が開催された。

 

映画『オーファンズ・ブルース』は、失われゆく記憶に苦悩しながら幼なじみを探す女性の旅路を描き、ぴあフィルムフェスティバル2018グランプリを受賞したロードムービー。夏が永遠のように続く世界で生きるエマ。記憶が欠落する病を抱える彼女は、常にノートを持ち歩いて些細なことでもメモをしている。そんな彼女のもとに、行方不明の幼なじみヤンから象の絵が届く。消印を手がかりにヤンを探す旅に出たエマは、ヤンの弟バンら関わりのある人々に出会う。しかし旅が進むにつれ、エマの記憶の欠落は加速していき……。主演は『赤い玉、』『クマ・エロヒーム』の村上由規乃さん。

 

上映後、2人の学生時代の恩師でもある、映画批評家の北小路隆志さんを司会に迎えて、村上由規乃さんと工藤梨穂監督が登壇。学生時代を振り返りながら工藤監督の本質に迫る舞台挨拶となった。

 

☆撮影現場での工藤監督は?
北小路さん:

監督には様々なタイプがいます。工藤さんは、リーダーシップを発揮して、皆を引っ張るようなタイプには思えません。でも、出来上がった作品では皆が一つの方向に向かっています。熱い思いがある映画が出来上がっています。その演出の秘訣はどこにありますか?

村上さん:

引っ張っていくタイプではないですね。こちらがのめり込んでいくうちに、いつのまにか引っ張られています。それは、今のこの時間を忘れたくないという思いが監督の中で起点となっています。そんな彼女の視線を追いかけたくなります。忘れたくないことに対して眩しそうにしている工藤監督の姿があります。

北小路さん:

今作は卒業制作なので、学生達が最後の時間を一緒に過ごしています。戻ってこない時間を捉えようとしている作品のテーマと重ねて振り返られます。監督としてのスタンスはどう考えていますか?

工藤監督:

皆に頼っていくことで、自分の方に引き込んでいこうと考えていました。スタッフ・役者それぞれ1人1人と話す時間を設け、あなたはどう思うか?と聞き、その考えを採り入れていくことで巻き込んでいこうと考えていました。スタッフであっても自分の意見が反映された作品は愛着が湧きます。皆に自分の子供のように愛着を持ってほしくて、1人1人の意見を取り込めるようにしたかったです。

 

☆工藤監督に集うキャストやスタッフ達

北小路さん:

大学4年間で、スタッフやキャスト候補を見つけているんですよね。

工藤監督:

そうですね。4年間で映画作りをする中で、この人と一緒に映画を作りたいという人に声をかけました。

北小路さん:

この2人はどのようにして出来上がったんですか?

村上さん:

2年生の時に専攻した青山真治さんと北小路さんのゼミでの短編制作です。仕草から映画を作るというテーマで、工藤監督が選んだのは”噛む”でした。その脚本を読んで、私は絶対出演したいと思いました。

工藤監督:

当時、ゼミ以外でも取り組んでいたことがあり、自身が監督が出来るか不安でした。他にやりたい人がいれば、その作品を託そうとも考えましたが、彼女に「絶対に取り組んだ方がいい」と言ってもらい、初監督を務めることにしました。

村上さん:

その時に取り組んだことで『オーファンズ・ブルース』の制作に繋がりました。演出を行う時に仕草について細かく演技指導してもらいました。

 

☆筋肉を用いた映画表現

工藤監督:

筋肉を上手く使うことで感情を表現できると思い、この映画でも実践しています。

村上さん:

凄く感動しました。筋肉を使うことで全く違うように見えます。筋肉や肌や呼吸によって演技に違いをつけてみたかったんです。役者として良い経験をさせてもらいました。過剰な演出を行わずに映画を導いていく方法として工藤監督が自らの力で辿り着いた演出です。一緒に取り組みたいと思えました。

北小路さん:

筋肉で演技することはどこから会得しましたか?

工藤監督:

『アデル、ブルーは熱い色 』の撮影方法を参考しています。顔のアップが多用されている作品です。主人公のアデルが友達から問い詰められるシーンがあり、その時に、彼女が奥歯を噛んで頬の筋肉を動かすんです。それで彼女が緊張していることが十分にわかります。言葉や表情だけでなく、筋肉の動き一つで感情を表現できます。私はそれに感動して、自分の映画でも実践しようと思いました。

北小路さん:

台詞等で状況を説明してしまうと映画ならではのおもしろさを削いでしまいます。工藤さんが演出方法として考えたことは、言葉で明確に理解を促すより、人物たちの筋肉の動きや仕草によって感情を表現しようとしたことなんですね。

工藤監督:

特に本作では、人物の質量、この世界に立ち生きていることが何よりも大事になります。すると、芝居がかった動作やセリフよりも、そういった些細な仕草がこの映画において必要不可欠だったんです。

 

☆現場で泣いてしまう工藤監督

北小路さん:

工藤さんはよく現場で泣いていた、と聞きました…どういう時に泣くんですか?

工藤監督:

とあるシーンの撮影で泣き癖がついてしまい、卒業後、助監督として現場に行った際にも、どこかで泣いていました。助監督の際は出来ないことによる悔し涙が多いですね。

北小路さん:

卒業後は悔し涙ばっかり流していると聞いて心配になっていますが…

村上さん:

嬉し涙を現場で流していました。ペンションを貸して頂いた方々には良くして頂き、最後にスタッフでバラシ作業をしている時、工藤監督がいないと思ったら、駐車場で正座して手紙をしたためていました。最後の挨拶では嬉し涙で感謝されて、素敵だなぁと思いました。

北小路さん:

出来上がった作品は、僕達から見ても、よく頑張ってくれたなと言える作品になっています。あとは、様々な映画祭で僕らが想像する以上の評価を頂いて来ました。それは、工藤組の素晴らしいチームワークと様々な人達によるによる御厚意が、より良い作品作りに繋がったからではないでしょうか。

 

映画『オーファンズ・ブルース』は、今後、8月10日(土)からは、神戸・元町の元町映画館でも公開。初日には、工藤梨穂監督を迎え舞台挨拶を開催。また、8月11日(日)と8月13日(火)には、工藤梨穂監督 による 村上由規乃さん主演で2017年に制作された短編『サイケデリック・ノリコ』を2日間限定で併映。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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