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「絶対間違いないラストがあります!」とプロデューサーに連絡。『愛がなんだ』今泉力哉監督に聞く!

2019年5月2日

好きな男のためなら仕事も友達もそっちのけで全てを捧げてしまうOLの恋愛模様をコミカルに描く『愛がなんだ』が全国の劇場で公開中。今回、本作を手掛けた今泉力哉監督にインタビューを行った。

 

映画『愛がなんだ』は、アラサー女性の片思い恋愛ドラマ。28歳のOL山田テルコ。マモルに一目ぼれした5ヶ月前から、テルコの生活はマモル中心となってしまった。仕事中、真夜中と、どんな状況でもマモルが最優先。仕事を失いかけても、友だちから冷ややかな目で見られても、とにかくマモル一筋の毎日を送っていた。しかし、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、マモルにとってテルコは単なる都合のいい女でしかなかった。テルコがマモルの部屋に泊まったことをきっかけに、2人は急接近したかに思えたが、ある日を境にマモルからの連絡が突然途絶えてしまう…

 

角田光代さんの小説を1年半かけて脚本に仕上げられた本作。脚本家の澤井香織さんにベースのストーリーを考えてもらい、原作から省略したり追加したりしながら出来上がっている。今泉監督は「今回、原作から脚本にする取り組みにおいて、澤井さんの存在が本当に大きかった。さらに、プロデューサーと定期的に集まりながら取り組み、本作の台本は出来上がっている」と語る。特にキャラクターの個性は意識しており「テルコは皆から否定される人にしたくなかったので、テルコを肯定的に見るキャラクターとして職場の後輩を入れました。また、ナカハラがテルコの鏡になるので、ナカハラのシーンも追加しています」と明かした。

 

キャスティングは「上手くいきました」と自負しており「一緒に仕事をしたい人とつくれたので良かった」と喜んでいる。岸井ゆきのさんは幼く見える可能性があるため、「20代前半に見えるとテルコのような恋愛をしていてもイタさが薄まってしまう。役柄の年相応に見せられるなら岸井さんにしたい」と伝え、20代後半に見えるようにした。とはいえ「これまでも主役だけでなく、脇役でも多く活躍しているので、演技には信頼を置いていた」と言う。深川麻衣さんは、前作(『パンとバスと2度目のハツコイ』)以来だったが「以前ご一緒した現場で、ただ綺麗なだけでなく、負けず嫌いで男っぽい部分があることを知っていた。この役も出来ると思う」とプロデューサーに提案した。

 

原作小説では、登場人物の三角関係が緻密に描かれている。本作の前半では、マモルの印象は悪いが、結局はスミレの前ではテルコ化していく。今泉監督は「マモちゃんをはじめ、すべての登場人物がただの悪人に見えないように意識しました。相手によって関係性が変わリ、常に誰かが一番上に立っていると言うことが内容にしたかった。原作を読んだ時に、実は全員不器用で、テルコとすみれでさえ似ていると思った」と語った。

 

エンディングテーマとしてHomecomingsによる『Cakes』が流れ、本作は印象的に終わるが、過去作『サッドティー』でトリプルファイヤーに劇盤を依頼した経験が大きかったと今泉監督は言い、 「それ以降、映画音楽専門ではない方と取り組むことも増え、自分が好きなアーティストにお願いする機会も多くなった」と言う。Homecomingsは、これまでに京都みなみ会館等で、当時の劇場では希少な上映作品を選んで、LIVE付の上映イベントを企画してきた。今泉監督は、HomecomingsのLIVEを頻繁に観ているわけではなかったが「やり取りしていくなかで(ホムカミについての)Web記事をよく読んでいた。10歳程の年齢差があるのに観ていたり影響を受けた映画が同じだった」と嬉しそうに言う。「時代を軽々と超えている映画や音楽がある。私がつくっている映画もそうなると嬉しいし、映画のためにつくられた『Cakes』も、映画や音楽が評価され、10年後にこの映画を見た人が書き下ろしだと思わないような、そんな関係になっていたらいいな」と笑う。

 

なお、本作は、原作とは違った展開でエンディングを迎えていく。今泉監督は、どう終わらせるか迷っていた脚本づくりの最終段階で、知り合いの役者にお願いし、その時点でできていた台本を用いて読み合わせを実施。 「声になることで新たに想像できることがたくさんあった。そのタイミングで今回のラストシーンが思い浮かんだ。すぐさまにプロデューサーに電話して「絶対間違いないラスト、思いつきました」と伝えている。しかし、完成までには何度も再考しており「脚本開発の中で何度も加えたり消したりしたが、最終的に残した。あってよかったラストシーンです」と明かした。脚本に書いていなくても、現場や編集でつくっていくシーンも多いと言う。そのため、使用していないシーンも多くあり、「最初の編集時には2時間20分もあった。ポスターになっている幻のシーンも入れて、いつか完全版が出来れば。でも、まあ今のものがベストですけどね」と笑う。原作者の角田光代さんも試写で本作を見て気に入ってくださっていると言い、「試写で見て泣いてくださったんです。それで家に帰って自作を読み直そうとしたら自宅に本がなかったらしくて。本屋に走った、と聞きました。原作者に気に入っていただけるのはとても光栄なことです」と喜んだ。

 

映画『愛がなんだ』は、全国の劇場で公開中。

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映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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