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観客1人1人の頭の中に主戦場がある…!『主戦場』ミキ・デザキ監督に聞く!

2019年4月21日

慰安婦問題を巡る論争をあらゆる角度から検証、分析したドキュメンタリー『主戦場』が関西の劇場でも4月27日(土)より公開される。今回、日系アメリカ人の映像作家でYouTuberのミキ・デザキ監督にインタビューを行った。

 

映画『主戦場』は、慰安婦問題をめぐる論争を様々な角度から検証・分析したドキュメンタリー。慰安婦問題について、デザキ監督の胸をよぎるさまざまな疑問があった。慰安婦たちは性奴隷だったのか、本当に強制連行はあったのか、元慰安婦たちの証言はなぜブレるのか、日本政府の謝罪と法的責任とは…この問題を検証すべく、日本・アメリカ・韓国で、肯定派と否定派それぞれの立場で論争の中心にいる人びとに取材を敢行。さらに膨大な量のニュース映像や記事の検証を交え、慰安婦問題を検証していく。

 

デザキ監督は、2007年にJETプログラムのALT(外国人英語等教育補助員)として来日。山梨県と沖縄県の中高等学校で5年間に教鞭を執りながら、YouTuberとしても活動してきた。初めて政治的なコンテンツとしてアップロードしたのは「ゲイとして日本で生きること」というインタビュー動画。当時について「そんなに話題にはならなかったので、学校は私がYouTuberであることを知らなかったと思います」と振り返る。(「Racism in Japan」をアップロードした時は教師生活は終わっていた。)また、ALTとして授業に関わる傍ら、差別についての授業を実施しており「学校側は私の価値観を知っていました。学校側はその授業を好評価しており、全クラスで行いました」と明かす。50分間の授業について「差別一般に関する内容を講義しています。どんな差別があるか紹介し、その変遷を話して、5分程度で日本におけるレイシズムの例を挙げる時間がありました」と解説し、この5分間が最終的に動画へ結実した。授業を受けた生徒達からも反応があり「沖縄では、祖父母が差別を経験している話を聞いた生徒が多く、レイシズムとつながり、理解が深まった」と感じている。

 

本作の編集にあたり、元教師のデザキ監督は、観客に良い情報提供を行いつつ、2時間を眠くさせないことを目標に掲げた。一番大変だったのは「2時間という尺の中で、ずっとおもしろく新鮮な映像を最後まで提供し続けること」だと明かす。教育的な作品にするために、エンターテイメントとして価値がある作品にしようとはしておらず「1カットが長く、長い間同じ人物に話させている。エンターテイメントの側面が損なわれるが、教育的側面がある語りをしっかりと聴かせることが大切」だと考え、二要素のバランスについて徹頭徹尾、意識していった。なお、慰安婦問題をめぐる論争に対し、監督自身が大きな責任を背負っていることは認識している。誠実な態度を示すために「右派・左派の説得力のある意見を提示することを心掛けました」と正直に話す。撮影している2,3年の間に感じたことに対し「観客にも両方の意見に揺るがされる追体験してもらうこと」を意識しており「私が結論を述べることには意味がない」と語った。

 

作中では、右派と左派の発言から受ける印象は大きく異なる。デザキ監督は「右派の方は『左派が非理性的で感情的に発言している』と批判する。もしかしたら、左派の方が『ハルモニらの証言を聞くべきだ』と話すからかもしれません」と解説していく。右派が感情的に見える、という意見に対し「もしかすると、彼らの主張は、日本は凄い、という視点に立脚しているからかもしれません」と示唆する。その基本として「彼らには『自分たちの祖先が悪いことをするはずがない』という主張がある。その根本的基盤の上に議論が積み重ねていくために感情的に見える」と説明し「右派の主張を信じている方の多くは、本作を観ても『右派の方が論理的だ』と思うかもしれないですね」と仄めかた。

 

現在、右派の方達は、アメリカを””と云っており、アメリカの人達に自分達の歴史観を伝え、説得して支持を得ようとしている。この言葉を聞いた時、デザキ監督は「これはメタファーとして有効に働く」と気づいていく。タイトルを考えていく中で「アジアと私達の記憶にある戦争が主戦場になっている。記憶の取捨選択を決めていく中で戦いが起こっている。本作を観ている観客1人1人の頭の中に主戦場がある」と受けとめ、最適な言葉だと直感。なおかつ、この言葉は「慰安婦問題が日韓の外交問題における主要な戦いの局面であり、現在のアジア全体で起こっている主要な歴史認識問題としても相応しい」と捉え、本作のタイトルに採用した。

 

多様な視点を以て本作に取り組んだデザキ監督は、本作の続編を作る気はなく「出来る限りの全てを詰め込み、2作目を作る必要がないように制作しました」と話す。本作だけでしっかりと観られるクオリティにしており「鑑賞した方が慰安婦問題に対して全体像を理解してくれたら」と願っている。

 

映画『主戦場』は、4月27日(土)より、大阪・十三の第七藝術劇場と京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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