派手さがなくとも、観終わった後に心に響く作品…『ひかりの歌』杉田協士監督と松本勝さんと並木愛枝さんを迎え舞台挨拶開催!
ある人への思いを引きずったまま孤独の中にいる女性4名の心模様を描き出す『ひかりの歌』が、2月1日(金)より、関西の劇場でも公開されている。2月2日(土)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に杉田協士監督と松本勝さんと並木愛枝さんを迎えて舞台挨拶が開催された。
映画『ひかりの歌』は、映画化を前提に開催した「光」をテーマにした短歌コンテストから1200首の応募作の中から選ばれた4首の短歌をベースに、全4章構成の長編作品として映画化。高校で美術講師をしている詩織、ガソリンスタンドでアルバイトをする今日子、バンドでボーカルとして活動する雪子、写真館で働く幸子。都内近郊でそれぞれの生活を送る4人。旅に出てしまう同僚、閉店を目前に控えたガソリンスタンドの仲間、他界した父、長い年月行方がわからない夫……誰かを思う気持ちを抱えながら、それを伝えることができずに毎日を過ごす彼女たちが次の新たな一歩を静かに踏みだしていく。
上映後に、杉田協士監督と松本勝さんと並木愛枝さんが登壇。本作の第4章に出演の2人を中心に鑑賞後のお客さんに寄り添うような雰囲気で舞台挨拶が行われた。
本作は、夏・冬・夏・冬と2年をかけて撮った作品で、杉田監督は「撮っている間はそれぞれの2章ずつの撮影が精一杯。長編映画になり大阪でも御披露目でき幸せで嬉しいです」と公開の喜びを表す。ゆったりとした佇まいで話しており、松本さんは「映画と同じで、監督のトークショーも余白が沢山あります。余白の中で映画と同じように感じて頂ければ」とフォローしながら「派手な事件は起こらない。分かりやすい映画ではないですが、観終わった後に心に響く作品です」と評した。
これまで刑事役やヤクザ役等が多かった松本さんについて、杉田監督は「今回は、大人しめな役柄を観てみたいな」と思い、並木さんの相手役に抜擢。松本さんは「台本を頂いた時、僕が演じるの!?」と驚いた。また、並木さんについて「相手は映画界では実力のある…」と絶賛しようとすると、並木さんは「私は気持ちが重くなる役ばかりでしたので…」と謙遜。2人のトークを眺めながら、杉田監督は「最近になって並木さんとお会いするようになりました。映画の中と印象が違い、こんなにチャーミングな方なんだ」と気づいたことを打ち明け、2人が出演した第4章について「私が観たくても未だに観られていない2人の姿を映画の中で実現出来たら」とキャスティングの理由を明かした。台本を受け取った2人は「これは役作りをしないと演じられない」と困惑。撮影前に2人だけの時間を頂き、まるで夫婦のようなデートをしてキャラクターを作り上げた。「現場入りの時には、本当の夫婦だと思う感覚なりました」と松本さんは感謝している。
4章それぞれにテイスト違う物語が連なっているが、杉田監督は「監督の私が意図したことではなく、それぞれの章でご一緒したかった方達の持つ雰囲気やリズムに私達が教えてもらいました」とコメント。4章それぞれを撮り始めると一生懸命になり「他の章まで考える程まで器用には出来ない」と告白するが「1章ずつしっかり作ることに集中し、あとで編集してみたら思った以上に繋がった」と出来上がりに満足している。特に第4章はリズムが違うと感じており「愛枝さんが声をかけるリズムは現場でビックリしました。脚本には書いてあるが、台詞では想像以上。映画を物語っており、自然とカメラの置き方や映像の組み立て方が他の章と変わっていきました」と振り返った。松本さんも「撮影ではミラクルがあった。偶然が重なって最高のシーンが撮れて、鳥肌が立つことがあった。予算の豊富な作品ではないが役者への気遣いがあり、繊細さが映画に現れている」と感心している。なお、第4章の意図として、杉田監督は「この2人で撮りたいと思った時、私の作業は短歌と愛枝さんと勝さんとロケ地の千葉でお世話になった方達に導いてもらった。誰かが居なくなってしまう話や既に誰かがいなくなった場所の話を若い時は撮っていたが、誰かが帰ってくる話をずっと撮りたかった」と話し、2人に感謝を表した。
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- 映画ライター
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