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連続猟奇殺人に取り憑かれた男の運命と愛の行方を描く『迫り来る嵐』がいよいよ劇場公開!

2019年1月3日

(C)2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited

 

猟奇殺人事件の解明に挑む素人探偵の青年が思いがけない運命を辿る様を、高度経済成長期へと移ろいゆく1990年代後半の中国社会を背景に描く『迫り来る嵐』が、1月5日(土)より全国の劇場で公開される。

 

映画『迫り来る嵐』は、経済発展に向けて社会が激変した1990年代後半の中国を舞台に、殺人事件の捜査に取り憑かれた男の運命を描いたサスペンスノワール。小さな町の古い国営工場で警備員を務めるユィ・グオウェイは、泥棒検挙で実績をあげ得意になっていた。ある日、近所で若い女性を狙った連続殺人事件が発生。刑事に憧れるグオウェイは勝手に捜査を進め、犠牲者のひとりに似た女性に出会い接近するが……

 

本作では、新人監督ドン・ユエのダイナミックな語り口と共に、テレビドラマ「項羽と劉邦」のドアン・イーホンが主演を務め、「修羅の剣士」のジャン・イーイェンが物語の鍵を握るヒロイン役を演じる。2017年の第30回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、最優秀男優賞(ドアン・イーホン)と最優秀芸術貢献賞を受賞した。

 

映画『迫り来る嵐』は、1月5日(土)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、京都・烏丸の京都シネマで公開。

陰鬱なストーリーだが、スピード感のある展開には楽しさすら感じる。ずっと大雨が降り続け重苦しい空気に包まれる中、次第に事件に深入りしていく主人公ユイの姿には、張り詰めた気持ちで目が離せない。

 

ユイの、いかにも分不相応な行動を取ってしまう様子が物哀しく感じた。工場の警備員だが、連続殺人事件の犯人を捕まえようとする。「俺は周りの奴等よりも優秀なんだ、工場では名探偵って呼ばれてる」そんな平凡な男のささやかな自尊心を、少しずつ傷つけていく細かい描写の積み重ねが絶妙に上手い。冒頭の名前の呼ばれ方ひとつをとっても悪意がある。ちょっとした台詞のひとつひとつや何気ない風景描写が、ユイという人間の心情と「この時代の不安感」を描き出すために、緻密に計算されて織り込まれていた。

 

劇中では詳しく説明されないが、この物語の舞台である1997年は香港がイギリスから中国に返還される直前。小さな工場で働く主人公達にとって、世の中に起きつつある変化は、自身の生活に関係があるかはよく分からない。返還される香港に移り住めば、今より良い暮らしができるんじゃないか。淡い希望を抱いていた時代を生きる小さな工場町に住む人々の心が折れていく様が切ない。

 

原題は「暴雪将至」。迫りくるのは単なる強風ではなく、凍えるような冷たい雪をまとった冬の嵐だ。このタイトルの意味が示されるラストでは、むなしい気持ちで灰色の空を見上げてしまう。 ある老人が終盤に語る台詞に、この物語のもう一つの可能性を仄めかしているようで、ただただ戦慄した。もしもそうだとしても、すべて辻褄が合うのだから。

fromNZ2.0@エヌゼット

 

物語の緩急があまりなく、淡々と第三者的に語られているような感覚に陥った。雨の情景が印象的で安定のしない、心を常に不安にさせられるような画作りには感嘆させられる。主人公ユイの不可解な行動が、観る人を不安定にさせていく。雨の中、工場で犯人を追い詰めていくシーンがとても印象的だ。顔も姿も分からない犯人を探すが、レインコートを着て歩く人々は誰が誰だか分からず、全員が犯人のような気がするし、犯人じゃない気もする。犯人探しに取り憑かれていくユイが次第に犯人のように見えてきてしまう。

 

ユイの持つ絶妙なアンバランスさ、心の動き、行動と言動の不一致を上手く演じあげたドアン・イーホン、凄過ぎる。 久しぶりにゾワッとする怪談話を聞いたかのような作品であり、主人公達が発する感情の起伏を感じない不思議な映画体験だった。

from君山

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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