妻と暮らす詩人の男が孤独な青年に特別な感情を抱く『詩人の恋』がいよいよ劇場公開!
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韓国のリゾート地・済州島を舞台に、妻と平凡な日々を送る詩人の男が同性との愛に目覚める様を描く『詩人の恋』が、11月13日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『詩人の恋』は、韓国の済州島を舞台に、主人公の詩人が同性の青年に対して激しい感情を抱いたことから、愛や夫婦のあり方について、三角関係になった詩人とその妻、青年の3人が、もがきながら答えをたぐり寄せていく姿を描く。自然豊かな済州島で生まれ育った30代後半の詩人テッキは、スランプに陥っていた。そして、稼げないテッキを支える妻のガンスンが妊活を始めたことから、平凡だったテッキの人生に波が立ち始める。乏精子症と診断され、詩も浮かばずに思い悩むテッキは、ある時、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユンと出会う。セユンのつぶやきをきっかけに新しい詩の世界を広げることができたテッキは、セユンについてもっと知りたいと思うようになるが…
本作では、『息もできない』『あゝ、荒野』のヤン・イクチュンが、同性の青年にひかれる詩人として主演。監督は今作が長編初作品となるキム・ヤンヒ。テッキの妻ガンスン役を『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』のチョン・ヘジン、青年セユンをNetflixオリジナル韓国ドラマ『恋するアプリ LOVE ALARM』のチョン・カラムが演じた。
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映画『詩人の恋』は、11月13日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋、京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも順次公開。
二人の主人公、テッキとセユンはとても孤独だ。何もない田舎町での生活、毎日を生きていくだけならば困る事は特にないけれど、その代わり大きな夢もない。この狭い世界から飛び出す勇気はなく、背中を押してくれる誰かもいなかった。出会ってしまった二人の心が、近づきあい寄り添ってゆくのは必然だったのだ、と思わせる俳優の存在感は自然で気持ち良い。他作品での武骨ぶりとは別人としか思えないヤン・イクチュンの穏やかで優しいぼっっちゃり感。精悍で毅然とした好青年の流す繊細な涙がハッとさせるチョン・ガラム。そして、妻ガンスン役のチョン・ヘジンもとんでもなく上手い。夫を束縛するマイペースな妻のように見えるが、必死で生きている健気さが垣間見えるところが愛らしく感じる。
二人の出会うドーナツ店。建物が少なく寂しげな景色のこの町の、静かに深い夜の闇浮かぶドーナツ型のネオンの光は、行き場のない者たちを受け止めてくれるかのような温かさがある。ちなみに、通貨のレートに関して、韓国の10ウォンは日本円の1円弱程度。劇中で登場する2万ウォンは日本円にして2千円、3,000万ウォンは300万円程度だと思えば、それぞれのシーンの理解がしやすいだろう(但し、物価自体が日本よりも安い)。映画館で鑑賞後、きっとドーナツが食べたくなる。帰りに寄ることができるように、お近くのドーナツ店を確認しておくことをお勧めしたい。
fromNZ2.0@エヌゼット
愛や恋とは何だろう。作品タイトルから想起していた「恋」とは印象が違った。2人の間に芽生えた感情は恋か同情か、或いは違う類だったか。明確に区分しきれない情感が人には多くあると気づかされた。名前をつけて明確な枠組みに当てはめていくほど本当の想いからは離れていく。他人には「意味がさっぱり分からない」と言われても、テッキが胸の内を綴った詩が重要であるように、誰かを想う気持ちも人によって様々だ。死にたいと願う父親や金に執着する母親が息子に向けていた愛は間違っていたとしても、各人の選んだ道が正解だとも言い切れず。他人からは容易に理解されない心境もある。選んだ道を振り返った時、正しさを誇るか過ちを悔やむか。本作には、人に対するカテゴライズしきれない多様で曖昧な感情が描かれており、大切にしていきたい。
fromため
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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