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13の顔に浮かぶ哀しみと歓びを映し出す『あなたの顔』が関西の劇場でもいよいよ公開!

2020年7月17日

(C)2018 HOMEGREEN FILMS TAIWAN PUBLIC TELEVISION SERVICE FOUNDATION ALL RIGHTS RESERVED

 

近年は商業映画から離れ、舞台演出やインスタレーションを手がけていた台湾のツァイ・ミンリャン監督によるドキュメンタリー『あなたの顔』が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う休業要請の緩和により、7月18日(土)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『あなたの顔』は、商業映画からの引退を公言したツァイ・ミンリャン監督のドキュメンタリー。台北の街で見つけた一般の人びとと俳優で監督のリー・カンションが出演しカメラを前に自由に話し、動く人びと。遠慮がちにカメラを見据える人、身の上話を語る人、ハーモニカを吹く人、うたた寝をする人など1人1カットずつ極端なクローズアップでそれぞれの顔を映し出し、ライティングによって、まなざしや顔に深く刻まれた皺などから、人びとの人生やこれまでの時間を見つめていく。

 

本作は、第75回ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映され、台北電影節(台北映画祭)で最優秀ドキュメンタリー賞と監督賞、音楽賞、台湾のアカデミー賞といわれる金馬奨では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。なお、音楽を坂本龍一さんが担当している。

 

(C)2018 HOMEGREEN FILMS TAIWAN PUBLIC TELEVISION SERVICE FOUNDATION ALL RIGHTS RESERVED

 

映画『あなたの顔』は、7月18日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。また、7月24日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都、8月22日(土)より神戸・元町の元町映画館でも公開。

台湾で生きてきた市井の人達を映し出す本作。ただひたすら顔を映すだけだったり、突如として話し出し感情を露わにしたり、赤裸々にエピソードをマシンガンの如く話し出したり…台湾の人達が放つ表情を繋げただけの作品である。だが、一編の映画として成立し進行していく。巨匠ならではの手腕であると実感させられた。

 

撮影は、台北市内にある中山堂(旧 台北公会堂)で行われている。日本統治時代に作られ、日本が撤退する際の調印式が行われた場所だ。彼等はここで撮影する意味を感じながら言葉につまっただろうか。だが、彼等の顔に現れる皺には、ずっしりとした歴史の重みを感じさせられた。作中で大きな出来事は何も起きないが、坂本龍一さんのミニマルな音楽が静かに寄り添い、市井の人がいてこそ台北や台湾の歴史がある、と伝わってくる。本編の最後には、彼等の顔を映し出した中山堂だけを淡々と映し出す。台湾の過去と現在と未来が繋がった瞬間を切り取った作品でもあると実感させられた。

 

日本でこのような作品を実現できるだろうか。劇映画を中心に手掛けている監督ではパッと思いつかない。ドキュメンタリー映画の監督なら、想田和弘監督なら出来るのではないか。想田監督が作り出した観察映画の手法を用いれば、日本人ならではの『あなたの顔』を映し出すことが出来るかもしれない。監督が実際にやるか定かではないが、観てみたい気持ちをここに記しておく。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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