皆さんが互いに肯定し合い、豊かな時代にしていく…『彼女が好きなものは』神尾楓珠さん、山田杏奈さん、今井翼さん、草野翔吾監督を迎え舞台挨拶開催!
ゲイであることを隠している高校生の男の子と、男同士の恋愛もの、を愛好しているクラスメイトの女の子の心模様を描きだす『彼女が好きなものは』が12月3日(金)より全国の劇場で公開。11月27日(土)には、現在先行上映中の大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田にて神尾楓珠さん、山田杏奈さん、今井翼さん、草野翔吾監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『彼女が好きなものは』は、『私がモテてどうすんだ』の神尾楓珠さんはが映画初主演を果たし、浅原ナオトさんの青春恋愛小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」を映画化。高校生の安藤純は、自分がゲイであることを周囲に隠して生きている。ある日、書店を訪れた彼は、クラスメイトの三浦紗枝がBL漫画を購入しているところに遭遇する。BL好きであることを秘密にしている紗枝は、純に口止めをする。純には妻子ある同性の恋人マコトがいるが、書店での出来事をきっかけに紗枝と急接近。友人とダブルデートをしたり、クラスメイトと遊園地で遊んだりするうちに、純は紗枝から告白される。純はある思いを胸に、彼女と交際を始めるが…
上映後、神尾楓珠さん、山田杏奈さん、今井翼さん、草野翔吾監督が登壇。「上映後の舞台挨拶なのでドキドキしています。どうでしたか?」と草野監督が尋ねると、拍手を受け、緊張が解け「完成したら映画は直すことも出来ないので。あとは、どういう風に届いて皆さんがどう感じてどういう感想を持ってもらえるか、緊張しますね」と明かした。
自身が演じたキャラクターについて「自分の価値観と周りの目とのギャップを感じ、隠しながら生きるのは難しいことだな」と純を通じて感じた神尾さん。「日常生活のシーンだとクラスメイトにはバレたくないけど映画としては引っかかりを作らなきゃいけない」と認識し「塩梅が難しくて、苦労してやりましたね。目の動きなどで伝われば良いな」と工夫している。また、クラスメイトと過ごすシーンでは「周りが笑うと、それに合わせて笑っていますけど、皆と目を合わせたり合わせなかったりの違いを出せたら良いな」と気遣った。「紗枝は真っ直ぐで素直な子だな」と思った山田さんは「紗枝も同じく人に言えない好きなものがある。でも純がゲイだということが分かった時、紗枝自身は自分の思いが分かり翻弄されていく役になる」と理解していく。「紗枝として素直に真っ直ぐに演じたいな」と心がけ「楓珠君がずっと純でスッと立っていてくれたので、純を人として好きになって支えたい紗枝の思いが伝わればいいな」と思いをこめて演じた。妻子を持ちながら、純を愛する誠役を演じた今井さんは「思春期にそういった悩みや誰にも言えないことを持って生きる純の苦しさや、恋愛関係として、唯一の純が心を開ける良き理解者」であることを踏まえ、純を大切にする役に勤しんだ。
病室でのシーンが印象に残っている神尾さんは「純として一番感情が出るシーン。純の本音や思いが全部表れているので、ちゃんと伝えなきゃいけない」と理解し「映画で表現する部分だけじゃなく、それまでの純の人生が全部出ればいいな」と情熱を注いだ。撮影の後半を迎えており「純としての人生が蓄積された上でのシーンだったので、思っていたよりは純としては意外とやりやすかったな」と自信がある。山田さんは、体育館で紗枝がマイクを取って話すシーンを挙げ「ずっと喋っているので、割と早々に台詞を覚えちゃって考えないでも喋れるようになんなきゃ」と自身を追い込み「最初の段階から毎日見て、何も考えないでツラツラ言えるようにして、本番は、監督も『生で出るものを撮りたい』と仰った。私としても紗枝の思いを載せてあげたいな」と心血を注いだ。初めて男同士のラブシーンを演じる今井さんは「作品でも監督がとても美しく描いてくださっていますので、楓珠君がしっかりしているので、歳上の僕が落ち着いて出来た」と納得。ヨーヨーを投げつけられるシーンがあり「人から見えないところでキスシーンがある中で、水風船が投げられる。撮影の中で分かっているんだけど、内心は『怖い怖い、痛いのかな』」と不安になっていた。だが「杏奈ちゃんの見事なコントロールで一発OKだったんですね」と一安心。自身で脚本を書いた草野監督は「ヨーヨーでやったらいいだろうな」と思いつき、映画版オリジナルのシーンとなっている。だが、撮影当日直前まで、お祭りのヨーヨーは水風船と違って割れない、と気づかず「重たいんです。凄い衝撃だったんだろうな。今井さんには申し訳なかったです」と侘びた。とはいえ、今井さんは「いえいえ、度胸がつきました」は黄にしていない様子だ。皆のコメントを聞きながら、草野監督は「病室や体育館でのシーンは、神尾さんや山田さんにお任せし、出てきたものを撮り逃さない」という心構えで挑んでおり「純君と紗枝ちゃんのキスシーンの撮影は重ねました。結果的に可愛いのが撮れました」と納得の出来栄えである。
さらに、各々が好きなものを関西弁で伝えることが求められ、神尾さんは「めっち好きやで……551の豚まんが」と観客をドキリッとさせ、山田さんは「私はお正月がめっちゃ好きやねん」と明かす。今井さんは「自分、アホやなぁ」と話し「関東弁で、自分、バカじゃん、って云われるより、アホやなぁ、と云われると、嫌な気しない。アホでいいんだぁ、と思える。そして、好きやで、て云われたいね」と趣向を変えていく。草野監督にも求められ「素晴らしいキャストに恵まれて、めっちゃ好きやねんけど」と伝えながらも「せっかく大阪なので。なにわ男子の道枝君がめっちゃ好きやねん。めちゃくちゃ可愛い」と告げると、観客からも好反応が挙がる。
最後に、神尾さんは「この作品をご覧頂いて、皆さんが今どう思っているかわからないですけど、もし良かったと思ってもらえたり考えるきっかけになってもらえたら嬉しいな」と願い、山田さんは「最近、コロナ禍で大阪とか地方で舞台挨拶出来ることがあまりなかったので、今回来られて嬉しいです。私自身、優しくて大好きな作品なので、皆さんの言葉で広めてお力をお借りできたらな」と期待を込めていく。今井さんは「僕にとってもこれからも大切にしたい、透き通るように美しく温かい作品を以て皆さんの前に立てること、皆さんに観て頂けることを嬉しく思っております。こういった題材は特別なことではなくて、時代として皆さんが互いに肯定し合い、豊かな時代にしていくという大切なメッセージがありますので皆さんに感じて頂けたらいいな」よ多様性の理解も訴求。草野監督から「大きな作品ではないですが、1人でも多くの人に届いて、考えるきっかけになったり、感じ取ってもらえたりしたら嬉しいな、と。誠心誠意頑張って作りました。僕にとっては爽やかな青春映画でもあるのかな。今から劇場を出る時に、皆さんが気持ちよく劇場を出てくれたら嬉しいな」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『彼女が好きなものは』は、12月3日(金)より全国の劇場で公開。現在、関西では、大阪・梅田のTOHOシネマズ梅田と松原のTOHOシネマズセブンパーク天美で先行上映中。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
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