マイノリティの性を描く『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』がいよいよ劇場公開!
(C)Touch Me Not – Adina Pintilie
障がい者やトランスジェンダーなど、マイノリティと呼ばれる人たちの多様な性を描く『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う休業要請の緩和により、7月4日(土)より全国の劇場で公開される。
映画『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』は、マイノリティの人々の性生活を虚実入り混ぜながら赤裸々に描かれた作品。父親の介護で通院する日々を送るローラは、自身も人に触れられることに拒否反応を起こす精神的な障がいを抱えていた。ある日、ローラは病院で患者同士がカウンセリングする不思議な療養を目にする。無毛症のトーマス、車椅子のクリスチャンら様々な症状を抱える人々が、互いの身体に触れ合うことで自分を見つめていく。自分と同じような孤独感を持つトーマスにひかれたローラは、街で彼に導かれるように秘密のナイトクラブに入り、そこで欲望のままに癒やし合う群衆を目撃する。
本作は、ルーマニア出身の新人監督アディナ・ピンティリエによる長編初監督作。第68回ベルリン国際映画祭の金熊賞(最高賞)と最優秀新人賞をダブル受賞した。主人公ローラを『お家に帰りたい』のローラ・ベンソン、彼女が思いを寄せるトーマスを『氷の国のノイ』のトーマス・レマルキスが演じている。
(C)Touch Me Not – Adina Pintilie
映画『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』は、関西では、7月4日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォと京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。
不思議なことに本作を”安心”という感覚を通して観賞していた。本作が出来るだけ映画特有の”作られた感”を排除しており、ドキュメンタリーに近い撮り方をしているからだと感じている。非常に繊細で、個人的な部分を暴く映画となっていた。
性を考える、性を求めること=”汚らわしい”ではない、と気づけるかどうか。私たちの社会は”性”と聞くと不潔なものだと感じるような構造になっている。この映画を観る時、その既成概念をきれいさっぱり忘れて鑑賞して欲しい。本作は、純真に自分の持つ性への感覚について考え、悩みながら向き合う映画だ。そう感じることができ、真っ先に”安心”を本作から感じ取られた。映画でありながら、本質的に人を捉えたカットが多く、特に登場人物の一人であるハンナはとても人間的に魅力のある人物だ。相手に敬意を持ちながら話をする人である。もちろん、登場人物全員が他人に敬意を持つことができる、社会的に成熟した大人達しかいない。
クリスチャンが「不快感を示したって良いのではないか。”良い/悪い”なんて無くて、それは後から社会が定義したことだ。」と言ってくれたことで、救われる人がいるのではないか。醜さとは何か、マイノリティであることはどういうことなのか、私の持つ身体はどうなっているのか。触られることの恐怖は本人以外に理解できるものなのか。自分の性や、身体、性的趣向に悩んでいる人が観て安心出来るような作品である。そんな人達にどうか届きますように。タッチミーノット、私に触らないで。観た後に余韻に浸って欲しいので、お一人で観賞して頂けたら。
from君山
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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