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草間彌生さんが世界に残した功績を見せていきたい…『草間彌生∞INFINITY』ヘザー・レンズ監督とイデノケイタさんに聞く!

2019年11月21日

世界が認めた日本を代表する前衛芸術家の草間彌生さんにスポットを当てたドキュメンタリー『草間彌生∞INFINITY』が11月22日(金)より全国の劇場で公開される。今回、ヘザー・レンズ監督と脚本のイデノケイタさんにインタビューを行った。

 

映画『草間彌生∞INFINITY』は、世界的に著名な前衛芸術家である草間彌生さんの半生を追ったドキュメンタリー。彼女の芸術への情熱を理解されなかった家庭環境、第2次世界大戦下の日本での生活、単身アメリカへ渡った以降も芸術界における人種や性の差別、自身の病など、草間彌生に降りかかるさまざまな困難。しかし、それらを乗り越えて、70年以上にわたり創作活動にすべてを捧げた彼女は、さまざまな分野で輝かしい功績を残してきた。そんな草間彌生の幼少期から、渡米後のニューヨーク時代に苦悩しながらおこなった創作活動、そしてそれらが国内外でどのように評価されたかなど、草間彌生の知られざる過去をアメリカ人女性監督、ヘザー・レンズの視点で切り取っていく。

 

ヘザー・レンズ監督が、草間彌生さんについて一言で表すならば、”トレイルブレイザー”。本作の制作を2004年に始め2018年まで14年の歳月を費やしたが「誰も行ったことがない道を進む開拓者」であることに変わりはなかった。独立系映画制作会社で初めて取り組んだフィーチャーフィルムである本作は、時代を先取りしている。様々な困難を乗り越えてきたが、草間さんと実際にお会いして「エキサイティングでワクワクするような経験でした」と今もその感動は絶えない。

 

現在90歳を迎える草間さんのライフストーリーを監督は伝えたかった。80分に満たない作品の中で草間さんの全てを紹介できないが「映画の中に盛り込み過ぎず、草間さんのことをもっと知りたい、もっと作品を観たいと思ってくれるような映画にしたい」と制作を進めていく。映画の流れを重視して映像を選んでおり「草間さんの作品画像をPCに取り込み、ニューヨークでペインティングが主だった時の写真をまとめています。スカルプチュアの写真に草間さんが映っていないか分別し、シーンでどの写真を使うか選んでいった」と説く。芸術作品を扱う本作であるため「色が正しく映画で映ることが大事なので、色の修正を行っています」と述べ、スペシャリストの力が役に立っている。

 

本作の制作を志した時、ヘザー・レンズ監督は日本文化を知しならかった。1990年代初頭、大学生の時、美術史を勉強したが、分厚く情報量の多い教科書を読んでも、女性画家は5名程度しか取り上げておらず。特に疑問を抱かなかったが、その後、彫刻の授業で草間さんのソフトスカルプチュアを観る機会があり「作品が作られてから数十年経っているにも関わらず、近代的でコンテンポラリーアートの側面を感じた」と興味に惹かれていく。そこで草間さんに関する唯一のカタログを読み「草間さんがアメリカの芸術界に残した功績が理解されず評価されていない」とが分かり、映画を作るモチベーションになった。

 

草間彌生さんはアメリカで斬新な作品を沢山作っている。絵画だけでなくスカルプチュアやインスタレーション、ベトナム反戦運動の一環としてハプニングを使用し裸体による芸術作品も手掛けていた。1960年代、裸体を使うことは珍しくはなかったが「アメリカのプレスがセンセーショナルに取り上げてしまった。なぜ草間彌生さんが反戦運動に思いがあるか、背後にある意図が理解されていなかった」と嘆いており、正しく理解してもらうためにも本作を制作している。14年の歳月までは想定していなかったが「長い制作時間のおかげで理解を深まりました」と納得していた。なお、監督の夫は日本人であり、夫の祖父が広島の原爆で亡くなっている。戦争の悲惨さを深く理解し「草間彌生さんのカラフルで楽しい作品を映画の中で取り上げながら、戦争という歴史の暗い一部分を織り込んでいる。戦争映画を観たくない若い人達にも重要な歴史について認識してもらえれば」と願ってやまない。

 

監督が14年間をかけて完成させた本作は、制作時期によって様々なクルーが携わっている。イデノさんが参加した時は、アメリカ人のエディターと携わっており「彼は草間さんのインタビューを英語で紙に起こしたものを編集しており、日本語と英語の文法は違いぐちゃぐちゃになっていました。改めて白紙状態して一から草間さんのインタビューを見直して作り直しました」と明かした。ネガティブな情報も含まれていたが、ヘザー・レンズ監督は躊躇いなく取り入れている。「なぜ草間彌生さんが類稀なアーティストになったか、彼女がいかに大変な苦労に直面したか、直結している事実です」と捉えており「彼女は困難に直面しても絶対に諦めなかった。必ず足を前に出し続けて歩みを止めなかった。アーティストとして、たとえ注目されなかったとしても作品を作ることを諦めなかった」と称えていく。イデノさんも同様に躊躇いがなく「日本人の女性アーティストがアンフェアな扱いを受けても、乗り越えて現在のサクセスに向かっている。アメリカや世界のオーディエンスに見せないといけない」と揺るぎない気持ちで携わった。

 

改めて、草間彌生さんの功績を振り返り、ヘザー・レンズ監督は「現代においても、若い女性がアメリカで夢を追うことは、勇気が必要な決断。1957年に単身渡米を成し遂げたのは驚くべき事実」だと捉えており「長く生きている方は世界の変遷を目撃している。芸術家に限らず長く生きてきた方の経験から学ぶことは興味深い」と心から尊敬している。

 

映画『草間彌生∞INFINITY』は、11月22日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都・烏丸の京都シネマ、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸をはじめ、全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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