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1人1人がクリエイティビティを発揮し、エネルギーに満ちた作品が完成した…!『写真の女』串田壮史監督と永井秀樹さんに聞く!

2021年2月18日

写真館を営む女性恐怖症の男が体に傷を持つ女性と出会い、徐々に惹かれていく様を描く『写真の女』が大阪・十三の第七藝術劇場で2月27日(土)より公開。今回、串田壮史監督と主演の永井秀樹さんにインタビューを行った。

 

映画『写真の女』は、写真を補正加工するレタッチャーの男と、身体に大きな傷のある女が織りなす愛の行方を描いたドラマ。父が残した小さな写真館で写真のレタッチを行う孤独な男である械は、事故で胸元に大きな傷を負ったキョウコと出会う。女性恐怖症の械はなれなれしいキョウコに戸惑うが、彼女に頼まれ、画像処理で傷のない美しい姿を生み出す。その姿に魅了されるキョウコだったが、SNS上では美しいだけでは注目されず、傷ついた姿をさらすことで多くの人が興味を抱いてくれた。理想の自分と現実の自分の狭間で精神的混乱に陥ったキョウコは、自らの存在意義を見失ってしまう。そして、自分だけがキョウコを救えると感じた械は、彼女の全てを写真に収め続けることを決意する。

 

CMや短編作品を手がけてきた串田監督は「CMは絵コンテに書かれてあることを映像にする形式での映像制作」と述べ「キャスト達を集めて読み合わせを行った後に僕が思いを語る、ということはしなかった」と明かす。現場では絵コンテを用いて演出するという独自の手法で本作を撮影している。普段は舞台俳優である永井さんにとっては違和感がなく「演劇では、串田監督のスタイルに近い。皆で気持ちを作っていくことはしない。指示に倣うことに違和感はない。共演相手ともお互いの表情から感じ取っている」と演じやすかった。

 

企画当初から、男性の観客をターゲットにした串田監督。「男性がターゲットなら、男性がヒーローであることに共感して楽しむ映画にしたかった」と考え、女性の恐ろしい一面を描こうとしていく中で「カマキリのメスが交尾の後にオスを食べて栄養にしてしまう」と発見。カマキリを研究している先生に連絡をとり、カマキリの生態について伺い「何故オスが逃げないのか。本能的に自分の存在が偉大なものになることを知っているんじゃないか」という学説を知っていく。「単純に女性を悪者にして男性をヒーローにするより、相手のために自分を捧げることで自分の存在が偉大になると感じるほうがヒーローとして現代的だ」と捉え、本作のストーリーを仕上げていった。

 

主人公の械は写真館を営む孤独な50歳の男性。つまり、フィルムを知っている世代だ。以前は写真の加工・修正が効かなかったが、現在はデジタルカメラが普及し修正が可能になり、写真は大きく変化した。だが、カメラマンの仕事が尊敬されなくなった時代となり、串田監督は、過度に自身の仕事に誇り高くならないキャラクターとして描いている。永井さんは演じながら「女性を加工するので、いびつな感じがする」と打ち明けたが、改めて考えてみると「化粧をしていることの延長線上だと考えると、女性の気持ちは至極まっとう。外に対してアピールするためのツールとして加工された写真を選んでいる」と捉えるようになった。

 

ストーリーが進むにつれ、登場人物それぞれが縛られているものから解放されていくように描かれていく。串田監督自身は「縛られていることだらけ」だと告白。「CM撮影において、監督は調整役。タレントと広告会社の要望に縛られながら説得していく。様々な条件に縛られています」と打ち明け「映画制作には自由があると云えども、年単位で撮るわけにはいかない。時間や予算に縛られている」と話す。しかし、それ故に一体感があり「それぞれの能力を発揮でき、エネルギーに満ちた作品が出来上がる。10日間で『撮り直しできない』と意識して取り組んでいる」と自信がある。さらに「この作品は特定の光が一番綺麗な時間を意識して撮影している。撮影監督の大石優さんが時間を計算して撮影している」と説き「天気には恵まれた。天気が違っていたら全く雰囲気が異なる作品になっていた」と自負。夜の撮影に関しても「照明の佐伯琢磨さんが、演出として様々な角度から光を当てて魅力的なシーンに仕上げている」と解説し「1人1人がクリエイティビティを発揮し、アイデアを出してもらい、実現できる環境だった」と感謝している。

 

主演の永井さんは、平田オリザさん主宰の劇団「青年団」で活躍しており、青年団のドキュメンタリーを観ていた串田監督は「平田オリザさんは、役者が演じている時、頻繁に止めて指示を出している。事前に役作りを固めず、臨機応変に対応している」と分析。本作は全編アフレコで構成されており「撮影中は指示しており、事前に話し合わなくても撮影中に修正出来る。永井さんはこの方法に普段から長けていらっしゃるので、受け入れて頂ける」と確信し、青年団の手法を取り入れている。永井さんは舞台出演がメインであるため「舞台と本作との違和感はなかった。映画に舞台での演技を持ち込めた」と串田監督を信頼して演技に挑めた。なお、カマキリとのシーンには苦労しており「僕らの考えが及ばない行動をする。カマキリの先生から扱い方を教わっているが、思い通りにならない」と苦笑い。クライマックスシーンでは印象的な動きをしており、串田監督は「ドキュメンタリーのような撮影でした。生々しいリアルなシーンが撮れました」と自信がある。

 

斬新なスタイルとなった本作だが、今後も串田監督は魅力的な作品を手掛けようとしており「歯医者をテーマにした作品。歯の痛みは全世界共通。誰が観ても分かる感情や行動を大事にしたい。どうやって観客の共感を得るのが良いんだろう」と構想中。また、永井さんも「『パトリス・ルコントのボレロ』における奏者の役をやってみたい。もの言わずひたすら叩き続ける。人間味の全てが詰まっている」と目を輝かせて話す。2人の類を見ない作品を今後も大いに期待したい。

 

映画『写真の女』は、2月27日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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