“自分を産んだ罪”で少年が両親告訴、中東の貧困問題を描く『存在のない子供たち』がいよいよ関西の劇場でも公開!
(C)2018MoozFilms
わずか12歳で両親を訴えた少年の語る壮絶な人生を通し、中東における貧困などの社会問題を鋭く描く『存在のない子供たち』が8月2日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『存在のない子供たち』は、貧しさゆえに親からまともな愛情も受けることができずに生きる12歳の少年の目線を通し、中東の貧困・移民問題を抉り出した人間ドラマ。中東の貧民窟で暮らす12歳のゼインは、貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。ある日、ゼインが仲良くしていた妹が、知り合いの年上の男性と強制的に結婚させられてしまい、それに反発したゼインは家を飛び出す。仕事を探そうとしたがIDを持っていないため職に就くことができない彼は、沿岸部のある町でエチオピア移民の女性と知り合い、彼女の赤ん坊を世話しながら一緒に暮らすことになる。しかしその後、再び家に戻ったゼインは、強制結婚させられた妹が亡くなったことを知り……
本作は、長編デビュー作『キャラメル』が高い評価を得たレバノンの女性監督ナディーン・ラバキーが2018年のカンヌ国際映画祭で審査員賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。キャストには役に似た境遇にいる素人を起用。その心情を露わにしたリアリティ溢れる演技が光る。
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映画『存在のない子供たち』は、8月2日(金)より、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。また、9月13日(金)より、京都・出町柳の出町座でも公開。
一体、何が彼らをそこまで貧困に追い込んだのか…
本作は、主人公のゼインが、自身を産んだ罪で両親を訴えるシーンから始まる。その後、なぜ訴えることなったのか振り返っていく。正直、こんな親なら誰しもが訴えたくなる。では、なぜ親はそんな状況に自らを追い込んでしまったのか。それは、本作が作られたレバノンという国がどのような状況に陥っているか知る必要がある。レバノンは北側と東側はシリアに囲まれており、シリア難民が…南側はイスラエルと接しており、パレスチナ難民が…レバノンにとっては、どうしようもない状況に追い込まれていて…と考えると、両親を憎んでも憎み切れない状況にあるわけで…でも、このような映画によって世界に訴えることが出来るなら、大いに意義ある作品になると信じたい。
なお、本作に出演しているキャストは、難民を経験している人達ばかりである。いわば演技経験のない方々ばかりだが、自身の経験に基づいた役柄であることから、思い思いに演じている。それだけ切実な環境に晒されていたいたことが伝わってきて、なんとも言えない感情に至ってしまった。だからこそ説得力のある演技は観客の心を掴んで離さない。
昨年は『判決、ふたつの希望』というレバノン映画が私の心を掴んで離さなかった。今年は『存在のない子供たち』がある。今後も、レバノン映画は注目せずにはいられない!
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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