今こそ「4.24」教育闘争を改めて知ってほしい…『ニジノキセキ』制作委員会の朴東赫さんと金大翔さんに聞く!
1948年の「4.24教育闘争」の歴史をひもときながら、その精神の答えを見つけるために兵庫県下の朝鮮学校6校とそこで学ぶ児童・生徒、教職員、子どもたちの保護者、地域同胞たちに密着した『ニジノキセキ』が関西の映画館で上映中。今回、制作委員会の朴東赫さんと金大翔さんにインタビューを行った。
映画『ニジノキセキ』は、カメラを手にとった時には想像もしなかった困難と新時代の流れに直面しながら「ウリハッキョ」という「キセキ」を更に輝かせようと闘い続けた同胞たちは未来に何を見たのか?そして大きく育っていく学生たちの姿に誰もが希望という言葉を口にするのは何故か?70年の時を超え、「ウリハッキョ」のおかれた現状を伝えるとともに、何より、七色に輝く「ウリハッキョ」の「いま」を、未来へ、世界へ向けて届ける…
「4.24」教育闘争では、約1700人の方が検挙され、発砲もあり亡くなった方までいる。民族教育の学校を守るための凄まじい闘争だった。昨年、70周年を迎えたが、朴さんは「若い世代が忘れていってしまう。現在、朝鮮学校があるのは、先代が戦いを繰り広げた末に守ってきてくれたお陰」だと感じており「その思いを忘れずに継承し伝えていくという意味では、同胞の若い方に観て貰いたい」と願っている。また、同時に「日本の方々が全く認知していない」と感じており「何故僕らが住んでいるのか分かって頂きたい」とも思ってきた。今回の上映に当たり、どちらか一方にだけ作品を観てほしい、といった限定はしていない。
本作を作るにあたり、金さんは「歴史を伝えるにはモノクロ映像になる必要があるか」と考えていたが「それだけでは十分に伝わらない」と感じていた。「過去を振り返って辛い気持ちにならないように、学ぶべきことを学び、地に足をつけて未来へと歩んでいくために明るい表現方法を以て伝えていく必要がある」と捉え、歴史を扱いながら、明るい作品にしようというテーマを設定していく。
「4.24」教育闘争については、朴さんは親からも聞いてきており「僕らの民族教育では根底にある礎になっている」と解説。在日社会にある催しでは4.24(サイサ)が名称の一部にあるイベントがよく開催されている。金さんは「民族教育と同胞社会に強く繋がるテーマとしてサイサがある。実際に習ったが、70周年を迎え振り返ってみると、何が行ったのか理解していない人が多い」と実感してきた。「親の世代には分かっている人が多いが、若くなるにつれ、歴史の認識・継承が希薄になっているんじゃないか。もう一度4.24を見直していこう」という思いを以て、本作に携わっている。
なお、本作は、ヘイトスピーチの姿も捉えていく。「学生達は『僕達は負けない』と力強く受け止めている」と朴さんは感じており「一部の団体から様々なことを言われるが、70年前も弾圧を受けながら、形は変われど、今も偏見を以て見たり、罵声を浴びせたりする方が今も絶えないという事実がある」と真摯に向き合っている。70年前の大規模な出来事ではなくとも「日本の一部の方の根底には学校や子供達を悪く思ったり排除しようとしたりすることが、昔と違ってマイルドになったかもしれないが、本質的には変わっていない」と受けとめ「私達はそれらを変えていきたいが為に、知らない人に知って頂きたくために、日本の方々に観て頂きたい。この映画がその役割を担っている」と訴えた。
今作では、金功哲監督を筆頭に、制作委員会の人達が朴英二監督に思いを伝えて作られており、金さんは「ナレーションを務めた、現役教員である金紗梨さんの目線から過去・現在・未来を振り返ってみよう」という視点を重視しながら映画作りに携わっている。今後も「僕ら兵庫県に住む同胞の民族教育のために何が出来るかを考えていきたい。その一つの事業が映画であるが、さらに何でも取り組んでいきたい」と熱い思いを秘めていた。
映画『ニジノキセキ』は、6月1日(土)から、大阪・十三の第七藝術劇場、6月15日(土)から、京都・烏丸の京都シネマで上映。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
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