ジェンダーの揺らぎは、現代の多様性を肯定していく…『21世紀の女の子』安川有果監督と加藤綾佳監督を迎え舞台挨拶開催!
“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間が映っていること“を共通のテーマに、15人の女性若手映画監督が繊細な目線で捉えた物語が映し出される『21世紀の女の子』が、2月22日(金)より関西の劇場でも公開。初日には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に安川有果監督と加藤綾佳監督を迎え、舞台挨拶が開催された。
映画『21世紀の女の子』は、『溺れるナイフ』の山戸結希監督が企画・プロデュースを手がけ、自身を含む1980年代後半~90年代生まれの新進女性映画監督15人がメガホンをとった短編オムニバス映画。「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマに、各監督が1編8分以内の短編として制作。
上映後、安川有果監督と加藤綾佳監督が登壇。安川監督は、かつて梅田ガーデンシネマで3年間アルバイトをしており、感慨深く挨拶。加藤監督は、これまでに自身の作品が関西で上映されてきたが、初めてシネ・リーブル梅田での上映となり、喜びを表した。なお、2人は関西で知り合った仲。大阪で撮影された作品に取り組み、準備するスペースが同じ場所だったことから、お互いが準備に必死で大変だったことを懐かしんだ。
自身の実体験を基にして着想した加藤監督は「携帯電話にあったメモから一発ネタとしておもしろいと思った。さらに主人公のモデルとなった女の子と重ねた」と明かす。8分以内の作品と指定され、設定だけでどのように伝えられるか苦労したが「見てわかりやすい作品にしたかった。登場人物の顔に説得力があれば、語らずとも人物像が見えるように俳優を選んだ」と自信があった。安川監督は、他の監督違い、テレビ番組を見て着想。「あるお笑い芸人による妻へのトークから繊細さを感じた。各々による視点の違いから、登場人物の有り様を見せれる話を作れないか」と考察していく。また、劇映画における女性の一面的な扱われ方に疑問を感じており「それだけじゃない、と普段からずっと思っているなかで、山戸さんが設定したテーマに結びついた」と作品へ取り組む意図を明かした。
8分以内の作品を指定され、安川監督は「最初は15分になった。気に入っていたが、編集で頑張り8分にした」と苦労したが「普段はやらないような編集ができ、勉強になりました」と振り返る。「素敵な俳優が集まり、全部のシーンを気に入っており、1秒でも長く使いたい」と思いを込めており「今までの長編映画では、2時間を想定していたはずが、60分ぐらいになったことがある。なかなか上手くいかない。」編集の大変さを物語った。加藤監督の場合は、最初は10分程度に納まり、逆にホッとしている。
他の監督作品について、安川監督は、ふくだももこ監督の『セフレとセックスレス』を挙げた。「脚本では書けない、現場で生まれたと思うシーンがある」と述べると、加藤監督は「即興で出来上がったシーンだと聞きました」とフォロー。これを受け、安川監督は「俳優さんの魅力を引き出していて素晴らしい」と絶賛。加藤監督は、金子由里奈監督の『projection』を挙げる。公募枠から選ばれた監督でありキャリアは長くないが「主人公を演じる伊藤沙莉さんと被り、監督の思いが伝わってきた」と評する。安川監督も「伊藤沙莉さんは関西弁のおもしろいキャラのイメージが強かったので、見たことない表情を引き出していて、興味深かった」とコメントした。なお、山戸結希監督作品『離ればなれの花々たちへ』について、加藤監督は「怒涛の勢いでエンディングを纏め上げていく強さがある。この作品によって『21世紀の女の子』が完成している」と信頼を寄せている。今作について「女性同士の恋愛や憧れの関係性があれば、赤裸々な部分もある。ジェンダーの揺らぎだと思っていたものが、最終的には、多様性を肯定する内容」だと解説し、さらなる集客を呼び掛けた。
(C)21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、VAP)
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