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ポエティックでピースフル!ミルクマン斎藤さん迎え『バンクシーを盗んだ男』トークイベント開催!

2018年8月11日

正体不明のグラフィティアーティスト、バンクシーと彼の絵がもたらす影響力に迫るドキュメンタリー『バンクシーを盗んだ男』が関西の劇場で8月11日(土・祝)より公開。公開初日には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田で、映画評論家のミルクマン斉藤さんを迎えたトークイベント付き上映が開催された。

 

映画『バンクシーを盗んだ男』は、ロンドンを中心に世界中で神出鬼没な活動を展開する正体不明なグラフィティアーティストのバンクシーと、数千万円~1億円という超高額で取引される彼の作品が人びとに及ぼす影響力に肉迫したドキュメンタリー。パレスチナ・ヨルダン西岸地区にあるベツレヘム。紛争地区に指定されているその場所にはパレスチナとイスラエルを分断する高さ8メートル、全長450キロを超える巨大な壁が存在する。その壁にバンクシーが描いた「ロバと兵士」の絵は、パレスチナの住民たちの反感を買い、絵が描かれた壁はタクシー運転手のワリドによってウォータージェットカッターで切り取れてしまう。ワリドはその壁画をオークションに出品し、最高額の入札者への売却を試みるが……ナレーションは、アメリカンロック界のカリスマ、イギー・ポップ!

 

上映後に、ミルクマン斎藤さんが登壇。上映初日に来て頂いたことを感謝するとともに「今日観て頂いたお客さんは僕が話さなくともバンクシーをよく知って頂いている方が多いのでは?」と謙遜しながらトークを始めた。

 

バンクシーはストリートアート・グラフィティアートで最も有名で、様々な意味で最も成功し、知られている作家の一人。HIPHOPのムーブメントから登場し、20年近く活動している。日本では、2000年代初頭にサブカル雑誌が取り上げ、知られるようになった。バンクシーが描く絵について、ミルクマン斎藤さんは「品が良く、いかにもイギリス人らしいユーモアがある。社会的なメッセージを発するにしても、斜に構えており、文言はストレートだが御洒落。基本的にはピースフルな人、花が添えられている。暴力を批判するにしても、平和の象徴を以って活かしている」と捉える。バンクシーの活動については「社会に訴えるアートの有効性を考えていると思う。消されることも計算した上でやっている」と受けとめた。その上で、本作の大きな主題は「グラフィティアーティストがその場所を蔑ろにして成立していいものかどうか」だと理解し「間違ったことを言っていないが、タクシー運転手が怒っていることもよくわかる」とコメントする。

 

イギリス・ブリストルから活動を始めたバンクシーは、2003年の大英博物館を皮切りにMoMAやThe Met等、世界各地の美術館であまり人が通らないところにこっそりと自分の作品を置いて解説まで書いていくが、あまり気づかれない。ヨルダンには2005年・2007年に訪れ、壁に書いていった。グラフィティアーティストを呼んでヨルダン西側の壁に書き始めた時、「ロバと少年」が描かれる。本作の中心となる「ロバと少年」について、ミルクマン斎藤さんは「基本的にステンシル(型紙技法)を使っているだろうが、完成度が高く技術が凄い。描かれた数年後、(マルコ・プロゼルピオ)監督が現地を訪れ”ロバと少年”を追ったのが本作」と解説。これまでに描かれた作品の写真を見せながら「ポエティックでセンスが良い。資本主義に対して皮肉が効いている。だが、消えていくのが運命だと覚悟している」とバンクシーを評する。

 

2013年10月、バンクシーは1ヶ月間ニューヨークをアート・ジャックし、1ヶ月ほぼ毎日事件が起きた。その模様は『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』としてドキュメンタリー映画にもなったが「自分の立ち位置を自虐的に描いている。グラフィティ作家として矜持を含めた宣言」だとミルクマン斎藤さんは表現する。なお、バンクシーは、自ら監督した『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』や、ディズニーランドのパロディ的なテーマパーク「ディズ・マランド」をプロデュースするなど、多岐に渡って活動してきた。今後のバンクシーについて「彼は多くの作品を作り続けて、活動展開に合わせた映像作品も生まれていくと思う。正体がバレてきている、と言われているが、それらを含めておもしろいことになっていくでのはないでしょうか」と楽しみにしている。

 

映画『バンクシーを盗んだ男』は、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都のT・ジョイ京都で公開中。また、10月6日(土)より、神戸・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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