ソ連崩壊後のリトアニアで祖国を追われた母と息子の物語を描く『MOTHERLAND』がいよいよ劇場公開!
©2019 Studio Uljana Kim / Locomotive Productions
独立して間もないソ連崩壊後の1992年のリトアニアを舞台に、故郷やアイデンティティをめぐる理想と現実を映し出す『MOTHERLAND』が7月4日(土)より全国の劇場で公開される。
映画『MOTHERLAND』は、独立直後のリトアニアを舞台に、リトアニア出身の母とともに同地を訪れたアメリカ生まれの少年の視点から、故郷をめぐる記憶や葛藤、そして移りゆく時代の狭間で生きる人々の姿を静かに見つめたドラマ。1992年、ソ連から独立を果たしたばかりのリトアニアに、アメリカからヴィクトリアとコヴァスの母子がやって来る。ヴィクトリアは幼い頃にソ連占領下のリトアニアで家族と引き離され、家と土地を失った過去があった。ナチスドイツからソ連へと支配が移り変わったリトアニアでは、異なる体制のもとで人々の自由は揺らぎ続けてきた。20年ぶりに故郷へ戻ったヴィクトリアは、失われた実家の土地を取り戻し、息子とともに新たな暮らしを始めようとするが、そこにはすでにロシア人一家の生活があった。簡単には土地を取り戻せない現実を突きつけられ、理想としていたリトアニアでの再出発は静かに歪みはじめていく。
本作が初の長編劇映画となるトーマス・ベングリス監督が、ワシントンD.C.でリトアニア移民の息子として育った自身の経験をもとに、領土や体制の変化に翻弄される人々の現実を繊細に描き出す。リトアニアにルーツを持つアメリカ生まれのマータス・メトレフスキが少年コヴァス、リトアニアを代表する俳優セビリヤ・ヤノシャウスカイテが母ヴィクトリアを演じた。

©2019 Studio Uljana Kim / Locomotive Productions
映画『MOTHERLAND』は、7月4日(土)より全国の劇場で公開。関西では、7月4日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、7月24日(金)より兵庫・洲本の洲本オリオン、7月31日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、8月12日(水)より神戸・元町の元町映画館で公開。
離婚した母に連れられ訪れたリトアニアは、ソ連から独立したばかり。母の故郷はアメリカに比べたら人もまばらで静か。まだまだ外国製のモノは少なく、持ち込んだチューインガムを配ると、物珍しいからか、皆が興味津々。しかし、モノに興味があるだけで、自分自身に興味を持ってる様子ではない。仲良くしてくれているようで、一員が増えたくらいなものだろう。両親の離婚による傷も癒えず、新しい土地にも馴染めず不安だらけ。母の友達のロマスの娘 マリアだけはなんだか心を許せそうだ。母親は生家を取り戻そうと必死。周りは母親の考えているよりも無茶に計画を進める。そんな状況に戸惑いを見せながら、何もできずに見つめるだけだったコヴァスは…。
いきなり知らない土地、しかも海外に行くなんて不安で不安でしかたがない。母の故郷だと言われても、言葉は伝わらないかもしれないし、友達もいないし、考えれば考える程に不安が膨れ上がっていく。そんな不安でたまらない空気をしっかり作り上げたマータス・メトレフスキさん。不安だけでなく、どこか訝しみの気持ちも表情に現れていて抜群の演技だった。特に窓などから身を乗り出している時の掴みどころのない表情が印象に残っている。そんな息子だけでなく、母親のヴィクトリアもずっと不安なのだ。自分の生まれ故郷といえども、結婚してからはおそらく帰ってきていない。実際どんな状況かもわからない中、離婚を機に帰郷した。息子のコヴァス以外ほぼ全て失った、と云っても過言ではない。そんな中で息子を育てていくために必死の思いで帰郷したが、生家は他の家族が生活を営んでいる。それには参ってしまうが、家族にとっても困ってしまう。国の情勢に右往左往させられており、どちらも必死に生きていこうとした結果ではある。だが、どちらかが折れないと決着はつかない。段取りを踏んで解決を試みる母を尻目に、目的を達成させるために強行な手段に出る母の友達たち。それを見つめ、呆れ果てたコヴァスは大胆な行動に出るわけだが、そのきっかけは友達のマリアに教えてもらった秘密の技術。褒められたことじゃないけど、日本の平和な論理では語りきれない胸が熱くなる展開に心を打たれた。少しは強くなったね、コヴァス。
閉鎖的な小さな村はどこの国も同じようで、家父長制でがんじがらめな姿や性別役割を求められ、男性的なコミュニケーションを主として、そこに参加しない者は除け者である、といった空気を感じた。1992年の話であり、これから変化していくだろうが、コヴァスもマリアもその呪縛から解かれた空間で健やかに育ってほしい。
トーマス・ヴェングリス監督にとっては本作が長編デビュー作品。それにしても、出来過ぎているが、それもそのはず。学生時代から評価された彼は、編集者としても活動しており、テレンス・マリックやケリー・ライカート、レナ・ダナム等の映画で、主任編集も務めた実力者である。今作は自身がワシントンD.C.でリトアニア移民の息子として育った経験をもとに制作された。今後も自身の経験が活かせる物語を書いていくだろう。また、全く違ったアプローチの作品も観てみたい。
fromブライトマン
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

















