どんな悲劇的なことがあってもその後に良いことがあるかもしれない…『また逢いましょう』大西礼芳さんに聞く!

撮影:田村充
介護施設に通い始めた父に付き添う娘が、所長の考え方に触れ、自身の人生や親子の関係を見つめ直す『また逢いましょう』が7月18日(金)より全国の劇場で公開。今回、大西礼芳さんへのインタビューが公開された。
映画『また逢いましょう』は、介護施設で織り成される人間模様を通じて、生と死の関係を深く温かくつづったドラマ。京都市のデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏さんの著書「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」を原案に、『嵐電』のプロデューサーである西田宣善さんが監督、『夜明けまでバス停で』の梶原阿貴さんが脚本を手がけ、現代社会に生きる女性の視点を加えてフィクションとして描く。東京でアルバイトをしながら漫画を描いている夏川優希は、父の宏司が転落事故で入院したとの知らせを受けて京都の実家に戻る。出版社に持ち込んでいた漫画の原稿も不採用となり、先の見えないまま京都で暮らすことになる。退院した父は介護施設「ハレルヤ」に通所を始め、優希も付き添いで訪れると、そこは利用者と職員が和気あいあいとリハビリに励む、居心地の良さそうな場所だった。優希はベテラン職員の向田洋子やケアマネージャーの野村隼人、利用者たちと交流するうちに、彼らを温和な笑顔で見守る武藤所長の考えの深さにひかれていく。『嵐電』『夜明けまでバス停で』の大西礼芳さんが優希役で主演を務め、劇中の漫画とピアノ演奏も自ら手がけた。優希の父である宏司を伊藤洋三郎さん、施設のベテラン職員である洋子を中島ひろ子さん、所長の武藤を田山涼成さんが演じ、カトウシンスケさん、筒井真理子さん、田中要次さん、梅沢昌代さんが共演している。
☆まず本作の脚本を読んだ時の感想を教えてください。
⾒たことのない映画に出演したいっていう願望があり、本作はそういった映画の部類だと感じました。「死んだ後のことを考えると怖くなる」と話す場⾯で、急に「⺟が他界して」と話し出すんですが、会話が噛み合ってない感じがすごくリアルだなと思って。脚本の梶原さんが映画の中で描きたいという⾔葉が、少し強めの激しい⾔葉で書かれている。そのアンバランスさみたいなのが、おもしろいなと思いました。
☆マンガ家・夏川優希役ということで実際に描いた作品も映画の中に⼊っていますね?
とても嬉しかったです。ライフワークというほどではないですが、趣味で描いているマンガが実際に美術として映画の⼀部に組み込まれて、とても幸せなことだなと思いました。ポスターのイラストも描かせて頂いたのですが、登場⼈物を全員分描くことを⾃ら決めてしまったので⼤変でした。映像を⾒返しながら、登場⼈物をどう組み合わせたらまとまりが出るかなと考えて描きました。
撮影:田村充
☆共演者のみなさんについても伺えますか?
観て頂けたら分かると思うのですが、クセが強い⼈たちばかりで(笑)それがおもしろかったですね。あの施設にいる⽅たちの奔放さ・⾃由さみたいなものを、役者さん⾃⾝が本当に持っていると思いました。カトウさんとは、何度も共演させてもらっていましたが、こんなにガッツリ⼀緒にお芝居させてもらうことなくて、本当に明るい⼈で。中島さんからも、かなりパワーを頂きました。中島さん演じる洋⼦さんと優希の映画でもあると思う。最後に向かうにつれタッグを組んで、介護業界の状況を⽀えていかなきゃみたいなぐらいのパワーを感じますよね。
☆本作の撮影前と後で、介護について⾒⽅が変わったことなど有りますか?
もし家族が⼈の⼿を借りないと⽣活するのが難しい…となった場合、まずは⾃分が世話をしなければいけないという考え⽅ってまだ根強くあると思うんです。でもその考え⽅が少し軽くなったというか、介護施設に対して前向きな印象を持てるようになりました。やっぱり介護のイメージって、⾝内を預けることが後ろめたいと思う⽅も多いように思うのですが、この映画を⾒ると、そういった気持ちが少し軽くなると思います。これは介護を放棄するとかではではなくて、やはりプロの⽅に⾒て頂きながら各施設で様々な⾊があって、そういったことを知ることが出来た事も本当に感謝ですね。
☆映画の中で描かれている「死⽣観」については、どう感じられましたか?
死を意識しながら⽣きるっていうことに関しては今回の映画を通して、私⾃⾝の⼤切な考え⽅になりました。今も根強く残っていて、これ以降の作品への考え⽅、取り組み⽅が若⼲変わった気がしています。終わりがあるという事はもちろん分かっていましたが、ここまで強く意識したことがなかったから。
撮影:田村充
☆最後にご覧になる⽅にメッセージをお願いします。
『また逢いましょう』は、主⼈公が居場所を⾒つける映画だと思います。⽗の怪我という悲劇が始まりではありますが、そこから⾊々な⼈たちや新しい考え⽅に出会って、⾃分が変わる感覚を覚え、表現したいものを⾒つけられるようになっていく。どんな悲劇的なことがあってもその後に良いことがあるかもしれない、そういった【⼩さな希望】を⾒つけられる映画だと思います。他にも様々な要素がある映画でもありますが、楽しんで観てもらえたら嬉しいです。
映画『また逢いましょう』は、7月18日(金)より全国の劇場で公開。関西では、7月18日(金)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォや京都・烏丸御池のアップリンク京都、7月25日(金)より神戸・長田の神戸映画資料館で公開。
撮影:田村充

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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