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近代日本を生きた作家達の思いを受け継いだ…『ある女工記』清水尚弥さん、中村朝佳さん、児玉公広監督、西谷郁プロデューサーを迎え舞台挨拶開催!

2018年10月27日

福岡県みやこ町出身のプロレタリア作家である葉山嘉樹さんが29歳の時に獄中で執筆した短編小説を映画化した『ある女工記』が10月27日(土)から大阪・十三のシアターセブンで公開。上映初日・2日目には清水尚弥さん、中村朝佳さん、児玉公広監督、西谷郁プロデューサーを迎えて舞台挨拶が開催された。

 

映画『ある女工記』は、葉山嘉樹さんの短編小説「淫売婦」の映画化作品。舞台は明治・大正・昭和にかけて、日本最大の産炭地と工業地帯を有する北九州。さまざまなモノが門司港より世界へ出航していった。人々がめまぐるしく往来する港町の淫売宿で南洋船員は瀕死の淫売婦に出会った。持てるものと持たざるもの、飢えや貧しさ境遇に抗い女工は労働者はゴロツキはいかに時代を生きるのか。
主演は『独裁者、古賀。』『死んだ目をした少年』舞台『惡の華』の清水尚弥。『あの娘、早くババアになればいいのに』『キネマ純情』の中村朝佳。『恋の渦』『下衆の愛』北九州出身の後藤ユウミ『めんたいぴりり』の神田朝香。音楽は『ローリング』ドラマ『ディアスポリス 異邦警察』COMBO PIANOの渡邊琢磨。ほかにも地本行橋の劇団風雷坊から 門田大輔 尾形 公 劇団のショーマンシップから仲谷一志 14+の村上差斗志 山本由貴らを起用し福岡のスタッフ・キャストによる福岡発の映画を世界へ発信する。

 

また、葉山嘉樹さん原作の「セメント樽の中の手紙」を現代の女子高生が朗読をしながら、葉山嘉-樹の故郷、福岡県みやこ町を散策する実験映画『セメント樽の中の手紙』も同時公開。

 

まず、上映前に、清水尚弥さん、中村朝佳さん、児玉公広監督、西谷郁プロデューサーが登壇。それぞれが思い思いに挨拶を行う。特に、本作が3年前に撮影されたことに触れ「撮影現場を思い出しながら、しみじみ懐かしい気持ちに浸っています。映っている風景や建物等味わい深いものが映されています」と中村さんは本作を紹介していった。

 

『セメント樽の中の手紙』『ある女工記』の順に上映し、4人が再び登壇。西谷プロデューサーは、原作とは趣向を変え、原作にはないシーンが追加されていると明かし「葉山嘉樹さんの出身地である福岡県みやこ町より、多くの民間団体の皆さんから支援を頂いた。卒業した旧制豊津中(現、育徳館高)には、芥川賞作家の鶴田知也さんや思想家の堺利彦さんらがおり、人間関係が近く交流が深かった。合わせて描いたらどうなるか、実験的にオリジナル要素が入っている」と説明する。

 

葉山嘉樹さんについて、児玉監督は「元々は船乗り。彼が陸に上がって作家になっていくエピソードが軸。原作『淫売婦』の中にも、船乗りの主人公が一夜の出来事を話に書くエピソードがある」と解説。葉山さんは、名古屋の刑務所で『淫売婦』を書いたが、刑務所に入った経緯について「葉山嘉樹さん自身は、労働運動の活動によって刑務所に入れられる。『淫売婦』の中に自身も投影している。現実と想像を織り交ぜながら書いている」と説き、おもしろいと思い、映画に取り込んだ。西谷プロデューサーも『淫売婦』を読み解き「看守の方にお礼を書いている。私達が執筆時の光景を想像し、興味深い」と感じ、制作に取り組む。

 

中村さんは、体重を6Kg減量させて撮影に臨んだ。真夏の撮影で気温は38℃を超え、100年近い倉庫で埃が多く汚い状況に。だが、怯まず、役を通して、その都度、食べ物を変えたり、環境を自分で変えてみたりしながら「モノや生きる環境が貧しい時代の中での役どころは初めてだった。まず、自分が身体を変えて、ゆきのと同じような気持ちに近づこうと努力した。体型の変化を通して勉強にもなった」と振り返る。現在では「意外にも、食べない方が頭がスッキリする。今は食べ過ぎですね。空腹を保つ方がいいですね」と様変わり。逆に、清水さんは「僕は好きなものを食べていた。全部美味しかった」と満足している。撮影現場について「唯一の楽しみが、現場での食事。地域の皆様にご協力頂いて、地域の婦人会から炊き出しもあった。本当に美味しくて、東京に帰ってからは何も要らなかった」と思い返す。

 

3年前の撮影を振り返り、中村さんと清水さんは共に故郷のように感じている。当時、偶然にも築百年の名家の家が残っており「撮影時の衣食住用にお貸しして頂いた。現在はリフォームされてレストランになっており、土日に美味しいものが食べられます」と西谷さんが紹介。3年が経過し、重要な場所は次々になくなっており「台風被害等を受けて補修して様変わりしている。この映画が記録映像になっている」と意義を語る。清水さんも「そのままの姿が映像に残っていることにも目を向けてもらいたいですね」と共感。中村さんも「その形がなくなってしまい、当時を生きた作家達の思いを受け継いだという意味でも貴重な作品となった」と心に刻んだ。

 

映画『ある女工記』は、大阪・十三のシアターセブンで10月27日(土)から11月2日(金)まで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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