ナチスに奪われたエゴン・シーレの名画「ひまわり」をめぐる実話をもとにした『オークション ~盗まれたエゴン・シーレ』がいよいよ劇場公開!
©2023-SBS PRODUCTIONS
2000年代初頭、オークションで働く競売人が、著名な画家の作品の鑑定依頼を受けたことから、さまざまな思惑が交錯する『オークション ~盗まれたエゴン・シーレ』が1月10日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『オークション ~盗まれたエゴン・シーレ』は、ナチスドイツに略奪されたエゴン・シーレの絵画「ひまわり」を巡って美術オークションの世界で繰り広げられる駆け引きの行方を、実話にインスパイアされて描いたフランス映画。パリのオークションハウスで働く競売人アンドレ・マッソンは、エゴン・シーレ作と思われる絵画の鑑定を依頼され、元妻で相棒のベルティナとともにフランス東部の工業都市ミュルーズを訪れる。絵があるのは、化学工場に勤める青年マルタンが父亡き後に母と2人で暮らす家だった。シーレほどの著名作家の絵画はここ30年ほど市場に出ておらず、当初は贋作を疑うアンドレだったが、現物を見てシーレの傑作であることを確信。思いがけず発見された名画を巡り、さまざまな思惑を秘めたドラマが動きだす。
本作では、小説家・映画監督・コメディアンとして活躍するアレックス・ルッツが競売人アンドレ、『ジュリアン』のレア・ドリュッケールが相棒ベルティナを演じた。監督・脚本は、ジャック・リベット監督作の脚本や『華麗なるアリバイ』等の監督作で知られるパスカル・ボニゼールが務めている。
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映画『オークション ~盗まれたエゴン・シーレ』は、1月10日(金)より全国の劇場で公開。関西では、1月10日(金)より、大阪・梅田のテアトル梅田、京都・烏丸御池のアップリンク京都、1月18日(土)より神戸・新開地のCinema KOBEで公開。
日本で圧倒的に人気な西洋画家といえば、ゴッホやルノワールをはじめとする印象派だが、それ以外でファンの多い画家のうちの一人がこのエゴン・シーレだろう。クリムトと合わせて語られることの多いウィーン派の画家。彼を特集した企画展が東京で開催されたのが、ちょうど2年前の2023年1月。夜間まで開館している東京都美術館が連日盛況だったという当時の報道も記憶に新しい。
名画を題材にした映画はこれまでに多数作られているが、作品の真贋を巡る派手なコン・ゲームや、はたまた加熱するオークションの競り合いを描くマネーゲームのような娯楽作品ではなく、本作は絵画の売買を扱うオークショニスト達の仕事ぶりを実直に描いた作品だ。
また、実はこの作品は絵画を巡る一連の騒動が主題ではなく、現代のフランスの世相と各種の問題が描かれているところがテーマのように思える。「工場で夜勤をしている労働者」と言い表す、階層社会の上から下を見下ろす者たちの視点。娘の交際相手のことを指して「黒人と付き合うなんて!」と吐き捨てる白人のマダム。ことさらにスポットは当てられないが、むしろ当たり前の日常の中に映し出されていく。
発掘された幻の名画の行く末には、はっきりとした決着がつけられる。映画として期待していた結末と言えるだろう。しかし、そこで動いた大金の扱いについては、ちょっと意外に思いながらも現実だったら自分もそうするかもしれないな、というリアルな納得感もあった。このオチにこそ、この作品のメッセージが象徴されているのかもしれない。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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