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作る人の呼吸を映画へ吹き込む…「みずもとひろゆきアニメーションシリーズ『よるのたんけん それと2つの旅の映画』」みずもとひろゆき監督に聞く!

2018年11月23日

(C)Hiroyuki MIZUMOTO

 

ちょっと不思議でこわくて、可愛らしさのあるドキュメンタリーと手作りアニメを横断する異才の作品を一挙公開する「みずもとひろゆきアニメーションシリーズ『よるのたんけん それと2つの旅の映画』」が11月24日(土)から大阪・十三のシアターセブンで公開。今回、大阪での公開タイミングにみずもとひろゆき監督にインタビューを行った。

 

『よるのたんけん』は、みずもとひろゆき監督が、子どもたちに向けて8年の歳月をかけて完成させたストップモーションアニメ。とある港町の貨物置場で、運ばれてきたウサギが箱から出て海を眺めていた。一方、檻に入ったゾウは「行きたいところがある」とため息ばかり。見かねた港のおじさんが夜の間だけゾウを檻から出し、朝まで町を散歩してくるよう促す。それを見ていたウサギは、ゾウと一緒に町に探検に出るが……

 

また、『いぬごやのぼうけん』は、いがみ合う少年と犬が大海原を旅する過程で他者の大切さを知り、成長していく姿を描いたストップモーションアニメによる短編作品である。

 

みずもと監督は、手づくりの質感を好んで、ストップモーション・アニメーションの手法を選んでいる。近年では、コンピュータを用いて様々な数値を管理しながらアニメーションを作る手法が便利かつ綺麗に仕上げることも可能になった。だが「自分の身体とは別のものが作り出したように思えてしまう。粘土をこねて茶碗を作るには、自分の手の力や感覚、呼吸が大事」だと考えている。とはいえ、失敗したら全てやり直しで、元に戻すだけでも大変だ。しかし、茶碗を作る人や絵を描く人のように「作る人の呼吸を映画へ吹き込むために、ストップモーションという作業を選んでいます」と語る。

 

『きおく きろく いま』は、95歳のシスターによる長崎の原爆証言をアニメーションで描いた意欲作。長崎県・出津教会の95歳のシスター、橋口ハセさんが、貧しかった子ども時代や原爆被害の救援に駆け付けた当時の体験をカメラの前で語った。その様子を4000枚の写真に印刷し、長崎県大村市の人々が写真をなぞって絵を描き、橋口さんのインタビューをアニメーションに仕上げた。制作に関わった1000人以上の人々の手により、1人のシスターの記憶を浮かび上がらせる…

 

この作品のひとつ前に、みずもと監督はドキュメンタリー映画『縄文号とパクール号の航海』を撮っている。企画段階で長崎県大村市で多くの市民が協力し一緒に映画を作ることだけが決まっていた。そこで、下調べ時に長崎でシスターと出会いインタビューの模様を撮影。ドキュメンタリーで原爆となると数多くの作品があり「いまさら私がやるべき仕事ではない。ドキュメンタリーもアニメーションも扱えるという経験を活かす」と考えた。そこで、数多くの人が参加しなければ成立しない方法として、一瞬一瞬の静止画から成るインタビュー映像を無数の人が描くというコンセプトを作り上げる。

 

作品を作るにあたり、ドキュメンタリーにするか、或いは、アニメーションにするか。みずもと監督は「撮影したい人や風景が具体的に存在する場合は、ドキュメンタリーを選ぶ。旅に行くのが好きなので、ドキュメンタリーであることが多い。一瞬ふと見た風景から世界観を広げていく場合は、アニメーションになることが多い。アニメーションは、動物が話をしたり現実に無い事も楽しめるので、特に楽しんで作ります」と説く。また「小さな子供に向けて作って喜んでもらいやすいというのもアニメーションを作る一つの軸となっている」と語る。今回の上映では、少しくらい騒がしくても大丈夫な、小さなお子様連れの方も大歓迎の[こどもげんき回]も実施していく。

 

なお、現在のみずもと監督は、インドネシアのマグロ漁師に関する作品と、若者がおばあさんから聞いた失われた盆踊りをリメイクする模様を捉えたドキュメンタリーに取り組んでいる。いずれの作品も撮影は既に4年以上も掛けており、今後良い作品として仕上がり次第、劇場公開される予定。アニメーション映画はひと段落しているが「小さな子供に向けたアニメーション作品は作りたい」と情熱は止まらない。フィクション作品については「よいご縁があれば作るかもしれません。やるとしたらロードムービーか怪獣映画がいいですね」と幅広く関心を持ちながら、未来を見据えている。

 

 

みずもとひろゆきアニメーションシリーズ『よるのたんけん それと2つの旅の映画』」は11月24日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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