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非日常で異国感を意識して撮った作品が今こそフィットできた…『クレマチスの窓辺』永岡俊幸監督に聞く!

2022年5月25日

ストレスの溜まる都会を離れた女性が、海辺の街で過ごす1週間を描く『クレマチスの窓辺』が関西の劇場でも5月27日(金)から公開。今回、永岡俊幸監督にインタビューを行った。

 

映画『クレマチスの窓辺』は、東京育ちの女性が島根県松江市の街で過ごした1週間の休暇を、オール松江ロケを敢行して描いたドラマ。東京生まれ東京育ちの絵里は都会での生活を抜け出し、亡くなった祖母が暮らしていた地方の水辺の街にある古民家でバカンスを過ごす。彼女がその街で過ごした1週間の中で、絵里はその街で生きている人々と交流する。建築家の従兄とフィアンセ、大学生の従妹、靴職人、古墳研究者、バックパッカーなど一癖ある人びととの出会いと祖母が遺したものたちが、絵里を少しだけ変えていく。モデルとして活躍し、『愛の小さな歴史 誰でもない恋人たちの風景 vol.1』で主演を務めた瀬戸かほさんが絵里役を演じる。1970年代の日活映画で活躍した小川節子さんが、本作で約45年ぶりに女優復帰を果たした。

 

島根県益田市出身の永岡監督。松江市は高校生時代の寮生活で住んでおり、当時の風景が頭の中に残っていた。また、フランスのバカンス映画が好きで「窓辺を中心にした作品で、1週間の中で日毎に章分けして7つの短編集にしよう」と構想した際に「松江市が合うんじゃないか」と思いつく。なお、エリック・ロメール監督の作品もお気に入りで「『海辺のポーリーヌ』や『レネットとミラベル 四つの冒険』など好きですね。本作のスタート地点です」と明かす。本作の共同脚本を担う木島悠翔さんとは偶然にも東京の映画祭で出会い「同じ島根県出身なら、一緒に作れたらいいね」と意気投合した。

 

主演を務める瀬戸かほさんは、これまでに永岡監督が撮った2本の短編作品に出演して頂いている。手掛けた短編作品『オーロラ・グローリー』が映画祭で入選し続けていく中で「次は長編映画を撮りたい」と構想していく中で、最初に瀬戸さんに相談した。「僕の撮り方を理解していらっしゃるので、撮りやすい」と信頼しており「元々はモデルさんですが、演技が上手くなっている」と気に入っている。また、近年のインディーズ映画では主役級の方達に出演頂いており「サトウヒロキさんが出演している『この日々が凪いだら』には助監督で参加し、同時期に撮影しているが、それ以前で映画祭でお会いしており、次は仕事が出来たら、とお願いしていた。星能豊さんも同様ですね」と映画祭でお会いした方々との縁を大事にしてきた。なお、伝説の女優である小川節子さんは、現在所属している事務所の社長さんと仲が良く、紹介して頂いている。

 

撮影にあたり、ロケ地の方々が協力的で「様々なものをお借りできた。自身で用意するものがなかった」というほどに助けられた。とはいえ、山陰地方であり雨が多いことは重々承知していたが、苦戦しており「まともに晴れたのは1日だけでした。それ以外は雨が降ったり止んだりで大変でした」と漏らす。第三章「3日目海に行く。」の撮影では「本当は、綺麗な青い海。だが、台風一過で海が大荒れで、断崖に波が打ち付けていたので、全ての台詞を変えました。荒れた海に合った台詞ではなかった」と本来の予定を断念。しかし「青々とした海より、荒れた海に圧倒され、風が強く音声も大変でしたが、逆に良かったのかな」と前向きに捉えている。なお、絵里が滞在する古民家は、松江フィルムコミッション協議会の方から「同僚が住む家屋の雰囲気が作品にあっている」と紹介してもらった。ロケハンで現地に伺うと、即決するほどの家屋で「元々住んでいらっしゃったおばあさんが老人ホームに入居され、人に貸し出していた。おばあさんが所有していたレコードプレーヤーや描いていた絵画や何十冊の日記があり、良い趣味をしている方だった。そのまま使わせてもらった」と感謝している。また、撮影の3日目には、第六章「6日目花を買う。」の古墳でのシーンを1時間程度で一気に撮っており「今回、現場で考えざるを得ない状況が多々あり出たとこ勝負で頑張っており疑心暗鬼になってしまうことがあったが、古墳で手応えがあった」と、本作が映画として出来上がる確信を持てた。

 

自身が手掛けた作品について「基本的には、自分を投影させたくない。客観的に見られなくなってしまう」と話す永岡監督。本作は、女性が主人公であり、登場人物にも女性が多く「自分とは違う存在である他者と如何にして向き合うか」と考えているが「とはいえ、自分の人柄が表れているんじゃないか」と冷静に話す。その上で、自作について「僕が書く脚本にはクセがあるので、表れているかな。ストーリーに自分自身を投影させているわけではない」と説く。

 

既に東京や名古屋の劇場で公開しており、お客様の反応に対しては不安だったが「良い反応を頂いている。逆に疑心暗鬼になってしまう」と本音を話す。「コロナ禍があり『どこかに行きたい』と思っていらっしゃっる方が多く、フィットしたのかな。例えば、島根県出身の方が帰省しづらくなったり、赴くままに旅行が出来なかったりするので、映画好き以外の方にも良く観て頂けた」と劇場公開のタイミングも味方に出来た。なお、本作は、方言で話さず地名も出さず、観光地も何処か分からないようにしており「非日常であることや異国感を意識して撮っている。ご当地映画にはしたくなかったので、ご当地映画には違うものに観られたかな」と手ごたえを感じている。今後は「クラシックな劇伴を付けたメロドラマをやりたいですね」と、今作とは違ったテイストの作品も構想中だ。

 

映画『クレマチスの窓辺』は、5月27日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、6月3日(金)より京都・烏丸御池のアップリンク京都で公開。なお、5月28日(土)にはシネ・リーブル梅田に瀬戸かほさんと永岡俊幸監督を迎え舞台挨拶を開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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