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半身不随の主人と家政婦の関係を描く『淪落の人』がいよいよ関西の劇場でも公開!

2020年4月1日

NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED (C) 2018

 

半身不随となって人生に絶望した中年男と、夢を諦めて介護の仕事に就いたフィリピン人の出稼ぎ少女の交流を温かく描く『淪落の人』が4月3日(金)より関西の劇場でも公開される。

 

映画『淪落の人』は、半身不随となり人生に絶望した中年男性と、家族のために夢を諦めた出稼ぎ家政婦の交流を描いたヒューマンドラマ。事故で半身不随となったリョン・チョンウィンは、人生に何の希望も抱けないまま日々を過ごしていた。妻とは離婚、妹との関係もうまくいかず、楽しみは唯一の友人である元同僚ファイとの会話と、海外の大学に通う息子の成長だけ。そんなある日、若いフィリピン人女性エブリンが住み込み家政婦としてやって来る。広東語が話せない彼女にいら立ちを募らせるチョンウィンだったが、片言の英語で会話をするうちに、互いに情が芽生えていく。やがて、エブリンが生活のために写真家の道を諦めたことを知ったチョンウィンは、彼女の夢を叶える手助けをしようと考えるが…

 

本作は、『インファナル・アフェア』のアンソニー・ウォンが主演を務め、第38回香港電影金像奨最優秀主演男優賞など数々の賞に輝いた。2019年の第14回大阪アジアン映画祭に『みじめな人』のタイトルで出品され、観客賞を受賞している。

 

NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED (C) 2018

 

映画『淪落の人』は、4月3日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田、4月11日(土)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。

「淪落」つまりは「堕落」「落ちぶれ」。作品タイトルから薄暗い物語を想起したが、実際には人の優しさに触れられる穏やかなヒューマンドラマであった。事故で半身不随になった男と家政婦の若いフィリピン人女性、共に失意のうちにあった2人が出会い、不器用に寄り添うような優しさが温かく描かれていく。説明的な表現は少なく、人物の表情や情景からシーンの意図や過程が汲み取れる。香港の四季と共に展開が進み、物語を心地よく軽やかに巡っていく。どんなに辛い過去を経て酷い扱いを受けようとも強く生きたいと思うが、厳しい現実を度々容赦なく突き付けられる。生きることに精一杯で、抱いた夢は遠い幻想の様に霞んでいく。それでも未来に希望はあると信じたくなる。各々が困難を抱えながらも互いに相手を想い、背中を押そうとする2人の言葉は強くて美しい。忙しなく過ぎる日々の中で、つい忘れてしまいがちな、真摯に相手を想う優しさをもっと大切にしたくなった。淪落の人になろうとも、夢を抱き、誰かを想って与えられる人でありたい。

fromため

 

登場する全ての人が、多角的な意味で障害や障壁を抱えながらも生きており、誰かを支え、誰かに支えられ、生きている。人物の表情や生活感から話を読み取ったり、結果から逆に過程を想像したりと、考察が捗る映画であった。物語の中でも、フィリピン女性が路上でダンボールで囲いを作って行う会話シーンや、外国人介護士を毛嫌いする市場の女性など、細かいところを挙げればキリがなく、現地の情勢や文化が反映されていたのも一つの魅力。性別も年齢も言語も文化も総じて受け入れた先に、光が差していく様がとても温かで、人の優しさが心に染みた。たとえ淪落の人になろうとも、夢や願いは誰もが思い描いていいものだし、諦めなければ最後までチャンスは転がっている。

fromねむひら

 

人が人を思いやる優しさに触れて、涙を流す。そんなかけがえのない体験をした映画だった。

 

2019年の大阪アジアン映画祭で日本初上映された本作は、各国から出品された話題作・傑作が並び立つなかで観客賞を受賞した。日本中から毎日のように大勢つめかけた、熱心なアジア映画ファンによる投票で1位を獲得したということは、誰もが認めるこの映画祭のナンバーワンの作品であったということだ。受賞作品が発表された瞬間、万雷の拍手が場内を満たしたことをよく覚えている。終盤のあるシーンの演出が衝撃的かつ感動的なのだが、映画祭では場内が静まりかえり観客がみな息を呑んだのが伝わってきたのも鳥肌の立つような体験だった。

 

この映画を観た当時、忙しい日々の生活に荒んでしまっている気がしていた自分の心に、この映画を観て涙を流せるうちはまだ大丈夫だ、と勇気を与えてもらったことも強く印象に残っている。どうか一人でも多くの人に観てみていただきたい傑作だ。

fromNZ2.0@エヌゼット

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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