ある中年夫婦の危機と再生を詩的な映像と繊細な演技で描写した『修行』が第17回大阪アジアン映画祭の台湾:電影ルネッサンス2022で日本初上映!
ある中年夫婦の危機と再生を詩的な映像と繊細な演技で描写した『修行』が第17回大阪アジアン映画祭の台湾:電影ルネッサンス2022で日本初上映された。
映画『修行』…
一人息子の結婚式を目前に控えた中年夫婦。妻のイエン夫人は模範的な妻を演じつつも、心の安らぎを新興宗教に求めている。無気力な夫イエン・フーシェンは、会社では仕事をせず、退社後はコンビニで時間をつぶして帰宅もしない。辛い修行のような日々を送りながら、ゆっくりと家庭崩壊が進んでいったある日、イエン夫人は一本の国際電話を受け取る。それは、夫の元秘書であり、愛人でもあったスー・クーユンの姉からの電話であった…
本作は、『EXIT-エグジット-』(2014)で中年女性の愛と喪失を鮮烈に描き、チェン・シャンチーに台湾で金馬奨の主演女優賞をもたらしたチエン・シャン監督の長編第2作。台湾の人気作家ワン・ディングォの短編「妖精」を原作に、中年夫婦の危機と再生を緊張感たっぷりに描き上げた。
映画『修行』は、3月20日(日)12:30よりシネ・リーブル梅田でも上映。
世間から見れば、一人息子の門出を祝う中年夫婦がなら、問題ない夫婦関係があるだろうと見えてしまう。だが、実際は冷めきっていた。夫と頻繁に会話がないなら、妻は新興宗教にすがってしまう。妻の相手に辟易している夫ならば、仕事に精が出せず真っ直ぐ帰宅しない。完全に冷め切っている夫婦にとっての家庭生活は、まさに修行だと感じてしまう。英題の「Increasing Echo」の如く、本作ではシーンの切り替え等で事あるごとに反響音が鳴っていく。刻一刻と夫婦関係が崩壊していくことを告げられているようにも感じる。穏やかに崩壊は始まっていき、突如知らされた衝撃の出来事に対して拒否することは出来ず、幾つもの裏切りまで受けてしまう。夫婦にまとわりつく不条理とは如何に苦しいものなのか、とぶつけられたような気分になった。最終的にはある種華やかなシーンを以て終わりを告げるが、本作は一種のハッピーエンドを見せていいものだろうか、苦悩の一作であった。
- キネ坊主
- 映画ライター
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