大阪・梅田周辺でサバイブするアジア人達の実像を描く158分の群像劇『COME & GO カム・アンド・ゴー』が関西の劇場でもいよいよ公開!
(C)cinemadrifters
大阪キタに集まった、日本を含めた9ヶ国にルーツを持つ人々の日々を描く『COME & GO カム・アンド・ゴー』が12月3日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『COME & GO カム・アンド・ゴー』は、通称「キタ」と呼ばれる大阪の繁華街で生きるアジア人たちの人生を描く群像劇。春のある日、大阪のキタにある古びたアパートの一室で白骨化した老女の死体が発見された。警察は捜査を開始し、アパート周辺で聞き込みを続けるが、孤独死なのか、あるいは財産がらみの謀殺なのか、さまざまな噂が飛び交っていた。同じころ、中国・台湾・韓国の観光客、マレーシアのビジネスマン、ネパールの難民、ミャンマー人留学生、ベトナム人技能実習生など、キタにやってきた外国人たちと、彼らと日常を共有する日本人たちの間に、さまざまな出来事が起こっている。やがて事件の捜査が終わるとき、人びとは新たな人生の岐路を迎える。
本作は、大阪を中心に活動しながらアジアやヨーロッパなど世界各国を舞台に映画を撮影している中華系マレーシア人のリム・カーワイ監督が、『新世界の夜明け』『恋するミナミ』に続いて大阪を舞台に描いた。ツァイ・ミンリャン作品の常連として知られる台湾のリー・カンション、ベトナム映画『ソン・ランの響き』のリエン・ビン・ファットのほか、アジア各国のキャストが参加し、日本からは千原せいじさん、渡辺真起子さん、兎丸愛美さん、尚玄さんらが出演。
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映画『COME & GO カム・アンド・ゴー』は、関西では、12月3日(金)より大阪・梅田のテアトル梅田、12月4日(土)より大阪・九条のシネ・ヌーヴォ、12月10日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、2022年1月14日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸、1月28日(金)より兵庫・宝塚のシネ・ピピアで公開。また、京都・出町柳の出町座でも近日公開。
リム・カーワイ監督は、とても興味深い人だ。関西のアジア映画好きな人々にとっては、距離感が近く馴染み深い人物である。年に1度開催される大阪アジアン映画祭では、来日ゲストの通訳を担いながらトークショーの司会を務め、会場内では来賓の映画人たちと親しそうに話をしている姿を連日見かけていた。大阪のミニシアターであるシネ・ヌーヴォでは、アジア各国のインディーズ作品から有名監督の作品まで幅広く上映されているが、特集上映の場にリム監督がMCとして登壇することも多い。劇場内では、普段からスタッフや一般客と話をしている姿もよく見かけ、映画好きな常連客のおじさん達に溶け込んでいる。
本作は、リム監督が「大阪三部作の締めくくり」と銘打つ作品。土地勘を心得切った監督が映し出すのは、センチメンタルな雰囲気をたっぷりと含んだ大阪の情景。確かにそこにある本物のミナミや梅田の姿である。大阪に暮らす者として観ていても、ご当地の分かりやすい名所だけををつないだようなありがちなロケではなく、登場人物たちが地区を移動する動線がリアルであることに嬉しくなり、遠景の夜景シーンではあの中に自分もいるのかもしれない、という気持ちで胸が温かくなった。さすが、ずっと大阪にこだわりを持って活動を続けてきたリム監督の本領が発揮された映像だ、と感服する。
なお、大きく7つに分かれたエピソードと10人以上のキャラクターが交錯して描かれる群像劇である今作。外国人労働者の過酷な待遇や横行するセクハラの実態、日本人同士のエピソードでも浮気や性風俗業界のトラブル等、辛くなりそうなキーワードが満載である。しかし、登場人物たちの強さか、彼らの姿を見つめる視線の優しさからか、それとも語り口のコミカルさ故なのか、見終わったあとには清々しい気持ちが湧いてしまう。
関西在住の人にとってはおなじみの地元が舞台の物語だが、それ以外の地域の方にも、本作を観たらぜひ大阪を訪れてほしい。少し足を延ばすことが可能な方は、シネ・ヌーヴォで観てみるのも一考だ。舞台挨拶も随時予定されており、普段以上に顔を出しているリム監督と話せるかもしれない。是非、一度は劇場を覗いてみては。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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