“違法宝くじ”で一攫千金を狙え!孤児の少年達の姿を描く『走れロム』が関西の劇場でもいよいよ公開!
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ベトナムの裏社会を舞台に、巨額の当選金を得るため“闇くじ”に挑む孤児の少年の姿を躍動感溢れる映像美で描く『走れロム』が7月30日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『走れロム』は、サイゴンの裏町を舞台に、孤児の少年が夢をかなえるために巨額の当選金が手に入る違法宝くじに挑む姿を描いたベトナム映画。サイゴンの路地裏にある古い集合住宅。詐欺師の債権者からの借金を背負っている住民たちは、アパートを維持するため大金が当たる違法宝くじに熱中している。14歳の孤児ロムは宝くじの当選番号の予想屋で生計を立てていた。ロムは地上げ屋から立ち退きを迫られている住民たちを救い、生き別れとなった両親を捜すため、危険な違法宝くじで一獲千金をもくろむが…
本作の監督は長編デビュー作となるチャン・タン・フイ。そして、チャン監督の実弟であるチャン・アン・コアが主演を務めている。なお、『青いパパイヤの香り』『ノルウェイの森』のトラン・アン・ユンがプロデューサーを務めた。
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映画『走れロム』は、関西では、7月30日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田と京都・烏丸御池のアップリンク京都、8月27日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
サイゴンの混沌とした下町を、少年たちが駆け抜ける。79分があっという間だった。本当の生活空間に入り込んだかのようなリアルな映像の裏側は、限られた予算の中で考え抜かれた設計と、綿密なリハーサルに基づいている。大量のオートバイが行き交う交差点や入り組んだ商店街など、現場で当日の時間帯における太陽の光までを計算に入れ、ゲリラ撮影のように撮られていた。全編を通して多用される斜めのアングルは、社会の底辺で暮らす人々の不安定さを表している。日本の公式HPで公開されている日本語字幕付きのメイキングも必見だ。
本作の元になったオリジナル版ともいうべき、同じくチャン・タン・フイ監督の短編『16:30』からのつながりも興味深い。違法くじを巡って奔走していた少年たちの姿はそのままに、アクションシーンの組み立てや撮影技術は大幅にパワーアップしている。チャン監督の手腕が躍進していることがうかがえた。一方では、短編と全く同じシーンがいくつも再編されており、監督の作品に対する思い入れが伝わってくる。バーおばあちゃんも全く同じ役で登場するが、長編では彼女の姿も追いつくすように描かれていた。
チャン監督の長編デビュー作であるからこそ渾身のこだわりによる、劇中の画作りも素晴らしい。沈む夕日に対して逆向の中、トタン屋根の上に座り込むロムの場面は、殺伐とした物語の流れをほんの一瞬忘れてしまう程に美しい。情景のカラーバランスもまた、時間をかけた丁寧な調整作業の成果。美しい数々のショットには見とれてしまうが、実際にサイゴンで今日も走っているであろう少年たちには、美しさに気づく余裕はないのかもしれない…と少しつらい気持ちが心に残った。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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