未来って自分で切り開いていくものなんだな…『となりのとらんす少女ちゃん』中川未悠さんとはるな愛さんと東海林毅監督を迎え大阪先行上映会開催!
中学2年生の少年が、彼の前に現れた10年後の姿だという女性との対話を通して、自分らしい生き方を模索する姿を描く『となりのとらんす少女ちゃん』が11月27日(金)より関西の劇場で順次公開。10月13日(火)には、大阪・扇町の扇町キネマに中川未悠さんとはるな愛さんと東海林毅監督を迎え、大阪先行上映会が開催された。
映画『となりのとらんす少女ちゃん』は、大阪を舞台に、自分の性別違和に気づきはじめた思春期の主人公が、未来からやって来た“もうひとりの自分”との対話を通して自分らしい生き方を探求する姿を描いた人情コメディ。トランスジェンダー当事者である漫画家のとら少さんが、トランスジェンダーの若者たちの感情をリアルに描いた短編漫画集「となりのとらんす少女ちゃん」収録の一編「未来から来たとらんすちゃん」を原作に、『老ナルキソス』『片袖の魚』など性的マイノリティを主人公にした作品を多く手がける東海林毅さんが監督・脚本を手がけた。母親と2人で大阪に暮らす中学2年生のユウタのもとに、ユウカと名乗る女性が現れる。ユウカは10年後の未来からやって来たユウタ自身で、多くの苦労の末に性別適合手術を受けて現在の姿になったのだという。ユウカはユウタに対し、大人の身体になる前に一刻も早く性別移行に向けて動きはじめるよう迫る。周囲の友人たちとの間で小さな違和感を覚えていたユウタだったが、あまりにも強引なユウカに反発し、2人の攻防が始まる。そんな中、ユウタの14歳の誕生日にある事件が起こり、ユウタは未来への選択を迫られることになる。『ブルーボーイ事件』で知られるトランスジェンダー当事者の俳優である中川未悠さんが未来からやって来たユウカ役で主演を務め、はるな愛さんが自身初となる母親役で出演している。
満員のお客様が見守る中、中川未悠さんとはるな愛さんと東海林監督が登場。会場は大きな拍手に包まれた。まずは中川さんが「みなさんこんにちは~!棚木ユウカ役を演じさせていただきました中川未悠と申します。本日はよろしくお願いいたします!」と挨拶。続いてはるなさんは「みなさんこんにちは!!今日はようこそおいでいただきましてありがとうございます~!終わった後なので、みなさんがどういう反応なのかドキドキしてまいりました!どうぞよろしくお願いします!!」と笑顔を見せた。監督も続いて「本作の脚本・監督・プロデューサーを務めました東海林毅と申します!みなさん本当に今日はいっぱいの周りの皆さんで迎えていただきまして本当にありがとうございます!!」と話し、会場に集まった皆さまへ向けて感謝を伝えた。
本邦初披露となる先行試写会が、物語の舞台でもある大阪で開催されたことについて、兵庫県神戸市出身の中川さんは「ちょっと前まで大阪に住んでいたこともあるので、ここに帰ってこれたんだな、関西の“熱い気持ち”が蘇ってきたなと思う」と喜びをコメント。「タクシーの運転手さんが『大阪はやっぱ周りの都道府県と2、3℃違いますからね』とジョークをはさみながら、すごい熱いトークで(笑)。やっぱ大阪の人って熱いよねって、楽しく来させていただきました。大阪の愛をすごく感じる上映会・試写会ができたらいいなと思ってます」と、タクシーの中での大阪ならではのエピソードも交えながら会場を盛り上げた。続いて、はるなさんは「私が生まれ育ったこの町なんですけど、15歳の時にショーパブで働き始めて、それが私にとって新しい世界だったんです ! (今日は)そこのみんなも観に来てくれてて、そしてお母さんもお母さんの友達も、”オバチャーン”も来てくれてて~。もう客席がすごすぎて、クセ強ですよね、やっぱり。負けたらあかんと思いました! よろしくお願いします!」と地元での上映への思いを語った。監督も「この映画は今年の1月下旬に大阪で撮影をしてまして、今こうしてやっとここに戻ってこれて、みなさんにこうやって作品を観ていただけて本当に嬉しいです。今日は僕も”オバチャーン”に負けないように !」と着用している猫のTシャツとピンクのパンツをアピールすると、はるな愛さんが「可愛い!トラじゃなくて猫でね!ニャンで! でも負けてます、やっぱり」と反応。さらに客席に座っていた”オバチャーン”のメンバーからも「豹はネコ科やで」と監督に突っ込みが入り、会場が爆笑に包まれた。

西成で行われた撮影について聞かれると中川さんは「すごく寒かった印象です。福島の撮影ではお部屋のシーンが多かったんですけど、大阪のシーンはほとんど外だったので、ユウタくん(髙橋蒼太)とかマサキくん(竹内大騎)とかと一緒に、凍えながら撮影してました。大好きなシーンが、公園で(子供たちに)お姉さんっぽい感じでセリフを言う場面があったんですが、それが結構思い出深いです」と振り返った。はるなさんは「西成の撮影には参加してないんですよ。(私が参加したのは)南相馬の撮影だったんですよね。でもやっぱりこうやって大阪の下町を切り取って、みんなに観てもらえる。一つの人間の人生を観てもらえるっていう意味では、こんなにあったかくて色んなことがあって… だから面白んでしょうね。大阪でよかったなって。この作品を通じて、(キャラクターのみんなが)強く生きれてると思ってました。楽しそうでした西成の撮影は !」とコメント。監督は「実は漫画が原作なんですけど、原作者のとら少さんが生まれも育ちも西成で、是非、原作者にゆかりのある場所で撮りたいですね、という話になって、実際にとら少さんが長く住まれていた西成の鶴見橋商店街に何度もロケハンに通って、地元の方々と徐々に仲良くなり、撮影させていただいたという経緯がありました」と本作を制作したきっかけを語った。大阪に帰ってくると食べたいものについて行かれたはるなさんは「やっぱりお好み焼きなんですよ~!」とテンションを上げる。「劇中でも焼いてましたけど、私の焼き方にはこだわりがあって、みんな出来上がった後ソースの後に鰹節をかけるんですけど、焼く前に鰹節を中に入れて焼くっていうのを撮影中もこだわってました」とこだわりを披露。はるなさんのお好み焼きに対しては、中川さんも監督も「本当に美味しかった」と語り、喜びを見せていた。
本作は、トランスジェンダー当事者のとら少さんによる短編漫画集『となりのとらんす少女ちゃん』の一編「未来から来たとらんすちゃん」を映画化した作品。監督は原作について「他のトランスジェンダーやLGBTQの作品は大体真面目でシリアスで、笑っちゃいけない空気があって、悲しいお話が多いので、そうじゃないものを撮りたいなってずっと思っていたんです。僕自身もLGBTQの一員として、暗い話よりも明るい話がないかなと思っていたところで、この作品を見つけて、これはぜひ映画にしたいとキャスティングや準備を始めました」と、映画化に至った経緯を説明した。主演の中川さんは、トランスジェンダー当事者であり、関西弁ネイティブで、コメディの演技ができることを評価され、ユウカ役に抜擢された。脚本を読んだ時の印象について「すごく面白い映画になりそうっていうのが第一印象で、関西丸出しのセリフとかSFコメディでファンタジーということもあるんですけど、でもどこか、となりにそっと温かみを感じるような家庭愛があったりして、こういうLGBTQ系のホッとするような作品に今まで出会ったことがないなと思ったので、この作品に携わらせていただいて、色んな方に笑って欲しいなという気持ちで脚本を読んでました。また神戸出身なので、大阪ならではのセリフがつまっていて、楽しい映画になるんだろうなと思ってました」と、出演への思いを明かした。

監督の前作『片袖の魚』の上映イベントで交流したことをきっかけに、母親役のオファーを受けたはるなさんは「子をもつ母親になりたかったので、はじめ聞いた時に私に!?という嬉しさと、できるかなっていう…子供も育てたことがないしどうしようと思ったときに、やっぱりうちのお母さんを思いました。(LGBTQに対して)私が子供の時にはなかなか理解できなかったと思うんですよ。なので当時のお母さんとこの役は違うんですが、どこかお母さんに寄せて演じていて、どんなことがあってもいつも笑顔でいたなと思って、そういうお母さんでいようと。当時のお母さんにはどう接していいかわからなくて、なかなかうまくコミュニケーションが取れない時があったけど、(今回の母親役を演じるにあたって)子どもってどうなるんだろう、親ってずっと不安かもしれない。でもそこを優しく不安ながらも見守りたいなって。」と当時の心境を振り返りながら役柄への思いを語った。中川さんは「(はるなさんは)撮影中もずっとお母さんで、“となとらチーム”のみんながもっとはるな愛さんを好きになったと思います。」と付け加えた。
さらに、この日は、はるなさんのご家族も客席で本編を鑑賞。はるなさんから映画の感想を直接聞かれたはるなさんの実の母親は「最後、自分らしく生きることになってとても良かった」と温かなメッセージを送り、会場を優しい感動で包んだ。続けてはるなさんから「私の演技はどうやった!?」と聞かれた母親が言葉を詰まらせると「あんまりやね」とはるなさんは自虐的に会話を締めくくった。それぞれの印象に残っているシーンについてもトークが展開。中川さんは「ユウタをいかに女の子にさせるかっていう無茶苦茶なセリフがあるんですけど、“女子はみんなアフタヌーンティーやで”っていうセリフに、『そんなわけあるかい』って私も思っていて(笑)、そういったセリフがコメディっぽいなと楽しかったです」と笑った。福島での撮影では、はるな愛さんと食事に行った後に見上げた星空がとても綺麗だったと語り「なんて素敵な場所で撮影させてもらったんだろうと思いました」と思い出を語った。

最後に監督は「72分しかない小さな作品なんですが、是非みなさんの口コミで広げていただいて、ようやくスタートが切れるかなと思うので、お近くの方にこんな楽しいLGBTQの作品を観たよっていうのを伝えていただけるととても嬉しいです。」と作品への思いを語った。はるなさんは「タイトルにもあるように、となりの出来事だと思うんですけど、本当に身近にそれぞれの家庭の事情があって、将来どういう人生で生きていくかっていうのはみんな違うので、観た感想を色んな方に言っていただいて、“となりの出来事”なんだってことを感じてもらえたらなと思います。その子が自由に生きられるような未来を願って、色んな話が出るようなきっかけになってくれればなと思います。たくさんの人に観ていただきたいと思います」と呼びかけた。中川さんも「この作品を通じて、本当に身近に感じていただける作品だと思います。家族の愛だったり絆も再確認できたりとか、自分が13歳に戻れたらと思いながら携わらせていただいたので、観る前も観た後も、青春時代たくさん悩んだことがあったけど、皆さんに支えられて今の自分がいるんだなと改めて気づけました。未来って自分で切り開いていくものなんだなと改めて感じさせられました。『#映画となとら』で拡散していただけたらと思います。本当にありがとうございます。」と締めくくった。
映画『となりのとらんす少女ちゃん』は、関西では、11月27日(金)より大阪・阿倍野のあべのアポロシネマや京都・出町柳の出町座、11月28日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場や神戸・元町の元町映画館で公開。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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