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甲子園を目指す高校野球にはメジャーリーグと違う世界がある!『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』山崎エマ監督に聞く!

2020年8月20日

日本の夏の風物詩とも言える“夏の甲子園”こと、全国高校野球選手権大会。第100回記念大会出場を目指す球児たちとその指導者を追った『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』が8月21日(金)より全国の劇場で公開。今回、山崎エマ監督にオンラインでインタビューを行った。

 

映画『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』は、2018年、記念すべき100回大会を迎えた夏の甲子園を追ったドキュメンタリー。ニューヨークを拠点に活躍する映像作家の山崎エマさんが監督を務めた。「高校野球という日本独自の文化を海外に紹介したい」という思いを抱いた山崎監督が、アメリカの撮影クルーとともに100回記念大会へ挑む激戦区の雄である横浜隼人高校と、大谷翔平さんや菊池雄星さんを輩出した岩手県の花巻東高校の球児と指導者へ1年間におよぶ長期取材を敢行。後にメジャーリーガーとして活躍することになる選手たちの原点を描き出すほか、山崎監督ならではの視点で、高校野球を日本社会の縮図と位置づけ変わりゆく時代の空気を切り取り、青春のすべてをぶつける高校球児と、指導者たちの葛藤や喜びなどを見つめる。

 

神戸で生まれ中学生以降は西宮で育った山崎エマ監督。近所には甲子園があった。しかし、中学・高校生時代はインターナショナル・スクールに通っていたので「日本の部活動は、インターナショナル・スクールの隣にあった高校のグラウンドから聞こえてくる程度しか見たことがない。青春時代に一つのことをやり遂げるのは憧れだった」と明かす。幼い頃にはイチロー選手の本を読み、憧れのヒーローになり「野球が好きになりました。高校野球は近くにあり、人並み以上に熱狂して感動して過ごしていました」と振り返る。そして、19歳から10年近くはニューヨークに住んでおり「日本の空気感にブランクがありました」と打ち明けていく。

 

前作『モンキービジネス おさるのジョージ著者の大冒険』を制作した後に「次は日本に関する作品を手掛けたい」と考えるようになり、東京とニューヨークを行き来しながら「リサーチをしている中で、高校野球が目に飛び込んできました。高校球児の姿を見て、日本人として究極的なものが詰まっているんじゃないか」と気づいた。次の第100回記念大会に向けて彼らを撮ることにより「今までとこれからの高校野球の在り方を日本社会の縮図として考えられる」と着想し、本作の制作を決意する。とはいえ、全国で4,000もある高校の野球部の中から何処をどのようにして撮ればいいのか、ゼロからのスタートだった。山崎監督は、アメリカを中心に外国の方に観て頂くために本作に取り組んでおり「高校野球は世界に殆ど知られていない。こんな日本の姿があるんだよ」と伝えたく「アメリカで知られている日本人メジャーリーガーと繋がりがある高校にしよう」と取材先を絞っていく。また、野球の歴史に興味があり「アメリカから横浜港を通して明治時代初期に野球がもたらされており、神奈川県は全国的に見ても野球が盛ん」と知り、横浜とメジャーリーガーをキーワードにして探していった。そこで、映画『蔦監督』の蔦哲一朗監督とは知り合いであることから相談し、横浜隼人高等学校の水谷哲也監督を紹介して頂く。さらに、花巻東高校の佐々木洋監督と出会い「恩師である水谷監督の教えをベースにしながら、次の世代として、自分なりに考えたことを採り入れてやっている。二人の師弟関係を含め、観てもらえる要素が詰まっている」と気づいた。

 

100数名の男子高校生達と土埃が激しい中で向き合う日々が続いた撮影。朝練と放課後から夕方迄の練習で球児達がグラウンドにいる間はカメラを回し続け、横浜隼人高校を一番多く撮りながらも、タイミングを見計りながら花巻東高校も撮っている。実は、さらに2つの高校も撮っており「外国の方に甲子園を知ってもらう為に撮っていたので、何れかの高校が甲子園に行かないと成立しない作品でした」と、大変なスケジュールだったことを明かす。なお、高校球児達と山崎監督は10歳程度の年の差があり、お互いが打ち解けて普段の姿を撮影出来るまでは時間が必要であり、思っていることを気楽に伝えてもらう工夫も施していく。撮影を初来日の外国人カメラマンが手掛けており「監督には初歩的なことから1つずつ説明してもらいました。だからこそ、日本人の方が観ても改めて気づきや感じることがあります」と解説。「毎日、皆さんが真剣に指導されているなかで撮ることは相手にとっても負担になります。意義があると思って参加して頂いている方々の邪魔にはなりたくない。だけど映像に収めたい。その駆け引きは毎日ありました」と話し「体力と気力と自分達が立つべき位置を5分毎に判断する毎日でした。振り返ると、毎日よくやったなぁ、と思います。一生出来ないような貴重な経験でした」と思い出として残っている。とはいえ、撮影前に100人以上いる隼人高校野球部の皆の見分けがつかなかったが「カメラを回していくと、すぐに分かっていきました。3年生は49人もいるけど、皆を撮っても全てを収録できない。誰が成長してAチームに入るか分からない。誰が怪我するかも分からないし、緊迫した場面でスターになるか分からない。なるべく多くの子達を春先から夏まで映像を撮ることで、ストーリーに必要な要素に出来る」と確信。春の段階から30人近くをインタビューしながら「ある場面に立ち会いながら、いい画が撮れていくことに気づきました。夏の大会までは様々なストーリーが撮れました。泣く泣くカットしたけれども、皆がインタビューを受けた経験を前向きに考えてくれていたらいいな」と願っている。収録時間は300時間にも及び「高校野球を撮るからには、春から撮り始め、夏の終わりは必ずある。映画の時間軸が出来上がる中で何が起こるか、勝負が決まるか、自分ではコントロールできない」と認識し「球児が全力で頑張っているので私も感情移入しやすかった。撮影素材を冷静に見ながら、球児達の魅力以上に指導者側の苦しみや孤独が映っていた」と改めて気づき、監督を中心にした内容へと編集され本作は完成した。

 

本作は、2019年6月にアメリカのドキュメンタリー映画祭「DOC NYC」でワールドプレミア上映され、2020年6月にアメリカのスポーツ専門チャンネル「ESPN」で放映されている。山崎監督は「初めて高校野球や甲子園の世界に触れた人が多かった。『こんな世界があったんだ』と発見した人が多かった。”KOSHIEN”という英語を使って反応があった」と感激しており「アメリカとは違う野球の世界がある、と知ってもらった。複雑な日本人像を見てもらった。思い通りに受け取って頂いた」と喜んだ。今後も手掛けてみたいテーマは沢山あり「高校野球の延長線上で、日本の小学校を1年間かけて撮りたい」と語る。「日本の公立小学校で1年生と6年生を撮る。自分の基盤は小学校で学んだ人間の在り方が大きい。自分達で掃除や給食の支度をして、運動会では力を合わせてクラスや班で取り組み、1+1=2以上になることを子供ながら経験したからこそ、アメリカでも私は評価されていった。パラダイムが変わろうとしている今だからこそ考えおくべき題材」と捉えており「日本から離れた経験があるからこそ、日本のいいところが見えてきて、何を変えて何を残していくべきか考える作品を作っていきたい」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』は、8月21日(金)より、大阪・梅田の大阪ステーションシティシネマ、京都・烏丸御池のアップリンク京都、兵庫・西宮のTOHOシネマズ西宮OSをはじめ全国の劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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