2人の女性の運命や行く末をモノクロ映像で静謐に描く『イェンとアイリー』が第20回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で日本初上映!

©Bering Pictures
2人の女性の運命や行く末をモノクロ映像で静謐に描く『イェンとアイリー』が第20回大阪アジアン映画祭のコンペティション部門で日本初上映された。
映画『イェンとアイリー』…
同じ顔を持つふたりの女性。イェンは母を守るために父親を殺し、アイリーは演技のレッスンを通して自分の生き方を模索する。母と娘の運命を主軸に、静謐なモノクロ映像がふたつの時間軸を交錯させていく。キミ・シア、ヤン・グイメイ主演。OAFF2014審査委員、『星空』(OAFF2012)、『夕霧花園』(OAFF2020)のトム・リン監督最新作。
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映画『イェンとアイリー』は、3月21日(金)18:50よりABCホールでも上映。

日本では、コンスタントに監督作品が劇場公開されると共に日本での初上映を大阪アジアン映画祭で行われてきたトム・リン監督。今回は、脚本の段階から巧みな才能を発揮していることが伺える。本作では、イェンとアイリーという2人の女性を交互に映し出していく。イェンについては、母を暴力から守るために父を殺してしまい、出頭した後に刑務所で8年の刑期を終えて出所し母の下に戻ってきた時点を軸にして物語が展開されていく。一方、アイリーは、地域の市民大学で開講されている演技クラスに体験入学してみた時点から物語を展開。2人の女性の名前をタイトルにしていることから、いつこの2人の女性が作中で交差していくのだろうか、と観客としては気になるところ。お互いに心に抱えている闇が大き過ぎて、交わりそうで交わらなそうでもありながら、共通項がいくらでもありそうだ…と思っていたら、この2人に関してはこのような真相だったとは…まさに脚本が秀逸だとしか思えない。そして、モノクロ映像によって映し出される本作は、無駄なものを取り除き、静謐な画を構築しており、翻って見事な心象風景を描いている。全ての行く末が判明した時、まさに、イェンとアイリーの未来に幸があることを願ってやまない。

- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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