1人の女が悲惨な人生を語る『奇麗な、悪』がいよいよ劇場公開!
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©2024 チームオクヤマ
静かな精神科医院を訪れた女性が、診察用の寝椅子でピエロの人形に向かいながら、自身の壮絶な半生を語っていく『奇麗な、悪』が2月21日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『奇麗な、悪』…
街の人混みのなかを、まるで糸の切れた風船のように危うげに歩くひとりの女。やがて古びた洋館にたどり着いた彼女は、そこが以前に何回か診てもらったことのある精神科医院であることを思い出す。ひと気のない洋館の中に吸い込まれるように足を踏み入れ、以前と同じように患者用のリクライニングチェアに身を横たえた女は、自身の悲惨な人生について語りはじめる。
本作は、映画プロデューサーの奥山和由さんが約30年ぶりに劇映画のメガホンをとり、2016年にも『火 Hee』のタイトルで映画化された中村文則さんの短編小説「火」を原作に撮りあげた実験的な自主映画。『由宇子の天秤』『火口のふたり』の瀧内公美さんが主演を務め、1時間以上におよぶワンカット撮影で圧巻のひとり芝居を披露。全編を彩るピエロの口笛のメロディは、芸術文化功労賞受賞者で国際口笛大会優勝経験を持つ加藤万里奈さんが担当した。
©2024 チームオクヤマ
映画『奇麗な、悪』は、2月21日(金)より全国の劇場で公開。関西では、大阪・梅田のテアトル梅田や心斎橋のイオンシネマシアタス心斎橋、京都・烏丸御池のアップリンク京都や桂川のイオンシネマ京都桂川、神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
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過去の出演作品を思い出すと、ひたすらスクリーンに映し出された『由宇子の天秤』という作品もある瀧内公美さん。本作においては、ついに、ひとり芝居によって構成された映画によっても実現した。改めてどれほどの実力派俳優であるか思い知らされた。中村文則さんによる短編小説「火」の映画化は、桃井かおりさんによる監督・脚本・主演によって制作されたが、他のキャストも映し出されている。だが、同じ原作による本作においては、完全なるひとり芝居だ。精神科医が本当に現場に存在して話しかけているように感じられるのだが、映し出されるのは、アンティークな人形のみ。どこかに医者はいるのだろうか。そう願いたい気持ちもあるのだが、実際には、存在していないようだ。ならば、この主人公の女性が繰り広げるパフォーマンスは狂気じみているとしか思えない。次々に明かされていく女性の人生を聞けば聞くほどに、よくぞこれまで生きてきたな、と思わずにはいられなかった。そして、この女性を1時間以上におよぶワンカット撮影で演じ続けている瀧内公美さんに圧倒されるしかない。観客の中には、一体何を見せつけられているんだろう、と困惑する人もいるのではないか。それだけ、良い意味で賛否両論で議論したくなる作品でもある。是非とも劇場で或る種の異常な体験をしてみてはいかがでしょうか。
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- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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