タイ南部の海辺の町で出会う2人の女性を描く『今日の海が何色でも』がいよいよ劇場公開!
仏教国タイの南部、イスラム文化が息づく町を舞台に、保守的な家庭に生まれ結婚を急かされる女性が、伝統と恋の狭間で葛藤する『今日の海が何色でも』が1月17日(金)より全国の劇場で順次公開される。
映画『今日の海が何色でも』は、タイ南部の海辺の町で出会った2人の女性がひかれあう姿を、環境問題をテーマにしたアートを交えながら美しい映像でつづったドラマ。イスラム教徒が多く暮らすタイ南部の町ソンクラー。かつてこの町には美しい砂浜があったが、高潮によって侵食され、現在は護岸用の人工の岩に置き換えられている。保守的なイスラム教徒の家庭に生まれ育ったシャティは親から結婚を急かされているが、親が決めた相手と結婚させられることに疑問を抱いていた。そんなある日、シャティは町で防波堤をテーマにした美術展を開くため都会からやって来たビジュアルアーティストのフォンと出会い、彼女を手伝うことに。正反対の環境に生まれ育った対照的なふたりは、互いを深く理解していくなかでひかれあうようになるが…
本作が長編劇映画デビュー作となるパティパン・ブンタリクが監督・脚本を手がけ、アイラダ・ピツワン、ラウィパ・スリサングアンらが出演。2023年の第28回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門にてNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞した。
映画『今日の海が何色でも』は、1月17日(金)より東京・渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷をはじめ、全国の劇場で順次公開。
寄せる波涛が砕ける音が、静かに響く波打ち際。海岸線をまっすぐに俯瞰するファーストシーンから、心はもう掴まれっぱなしになる。
主人公は二人の女性。適齢期を迎えて周囲から当然のように結婚を勧められるシャティが体現する女性の生きづらさや息苦しさと、写真家として活動する翼が生えたように奔放なフォンの自由気ままなようでそれでも実は抱えている悩みの深さと。
二人の出会いを通して描かれるお話は静かでシンプルなのだが、演出が実に魅せる。予備知識を入れずに見ていただきたいので詳しくは触れないが、極小の世界から星の彼方まで、ときおり差し込まれるカットに「どうしてここで、それが映るのか?」という不思議な気持ちを感じつつも、しかしこれ以外にはありえないのだという絶妙な雰囲気が映画全体のトーンの調和を保つ。原題の「solids by the seashore」も、劇中のセリフでも説明される字面とおりの意味の他にも、いくつものミーニングを含んでいることが想像される。
ラストシーンの、そのショットが最高すぎて「あっ。。。あぁ!!」と唸ってしまった。この良さを言語化して伝えられない自分がもどかしいのだけれど、こんなラストカットが撮れることこそが、こんな場面が観られることこそが、映画の奇跡であり映画を観る者の喜びなのだと深く感じ入ってしまう。素晴らしかった!
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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