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kino cinéma 心斎橋も観客が育てていく…『あんのこと』河合優実さんと入江悠監督を迎え舞台挨拶開催!

2024年12月15日

コロナ禍で露わになった、社会的弱者に焦点を当てた社会派ドラマ『あんのこと』が12月13日(金)新たにオープンした映画館kino cinéma 心斎橋でオープニング記念上映中。12月15日(日)には、河合優実さんと入江悠監督を迎え舞台挨拶が開催された。

 

映画『あんのこと』は、『SR サイタマノラッパー』『AI崩壊』の入江悠が監督・脚本を手がけ、ある少女の人生をつづった2020年6月の新聞記事に着想を得て撮りあげた人間ドラマ。売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、ホステスの母親と足の悪い祖母と3人で暮らしている。子どもの頃から酔った母親に殴られて育った彼女は、小学4年生から不登校となり、12歳の時に母親の紹介で初めて体を売った。人情味あふれる刑事の多々羅との出会いをきっかけに更生の道を歩み出した杏は、多々羅や彼の友人であるジャーナリストである桐野の助けを借りながら、新たな仕事や住まいを探し始める。しかし突然のコロナ禍によって3人はすれ違い、それぞれが孤独と不安に直面していく。『少女は卒業しない』の河合優実さんが杏役で主演を務め、杏を救おうとする型破りな刑事の多々羅を佐藤二朗さん、正義感と友情に揺れるジャーナリストの桐野を稲垣吾郎さんが演じた。

 

今回、上映後に河合優実さんと入江悠監督が登壇。今回のチケットが3分で完売したことを聞かされると河合さんは「チケットを3分でゲットしていただいてありがとうございます。公開からだいぶ時間が経って、また皆さんの前で『あんのこと』の話ができる機会をいただけてすごく嬉しいです」と挨拶。入江監督も「新しい映画館の空気感がいいですね。オープニング作品に『あんのこと』を選んでいただいてありがとうございます」と感謝の思いを語り「6月に公開された作品が年末まで上映が続いて、色んなところでお客さんにお会いできるので、今年は『あんのこと』と一緒に走った1年だった」と振り返っていました。

 

パリで開催された【KINOTAYO(キノタヨ)映画祭】観客投票によって決まる最高賞のソレイユ・ドール賞を受賞したことがMCから明かされると、場内からは大きな拍手が。入江監督は「こういう題材なので、個人的には浮かれないようにしてますが、スタッフや俳優が評価されるのは嬉しい。杏という子のことを皆で一生懸命考えて丁寧に紡いだ映画なので、それを評価していただけたのは嬉しいです」と感想を話す。受賞を受けて河合さんは「海外でもたくさんの方に観ていただけて、その土地の方に届いているのが嬉しいです。そこに行かないと温度感はわからないので行きたかったです」と思いを語っていく。

 

 

劇場での舞台挨拶や海外の映画祭での反応について入江監督は「自分の体験に引き寄せて感想を言ってくださる方が多い」と明かし「自分の人生と重ねて観るというのは、命がけで観てくださってるんだと感じる。お客さんとお話するたびに鍛えられている気がします」と観客の感想や観客との対話が力になっていると語る。Yahoo!検索大賞俳優部門1位を受賞するなど、大躍進の1年となった河合さん。『あんのこと』は河合さんにとってどのような存在なのか聞かれ「撮影は22022年の終わりだったのでちょうど2年ぐらい経ちますが、今年の色々な動きとは全く別で、私にとって特別な経験になったし、数あるお仕事と同列には語れないような作り方だった」と思い返す。さらに「検索大賞で1位を獲ったということは知らない人が検索してくれてるということ。私を知ってくれた人が『あんのこと』を観てくれたかもしれないし、それぞれの作品が影響し合って、次に公開されるものに良い風が吹くこともあったと思うので、今年、『あんのこと』が公開されて1人でも多くの人に観ていただけたのは、ものすごく良かったと思う」と作品への思いを語った。一方、撮影中の河合さんをどのように見ていたのか問われ、入江監督は「ほとんど演出していない」ことを明かし「杏の考えていたことは僕もわからないので、河合さんにお任せした部分もあった。そういう意味では、毎日発見があった」と振り返り「脚本はありましたが、その時に杏がどういう心境になるのかは河合さんを通して僕たちも見せてもらっていた」と河合さんを称賛していました。

 

 

そして、2日前にオープンしたばかりのkino cinéma 心斎橋について入江監督は「前のシネマート心斎橋は韓国映画を推してて。そういう個性がミニシアターのいいところだと思う」と思いを語り「この映画館も観客の方が育てていくと思うので、次に来た時に変な色がついていたらいいな」と笑わせる。河合さんは「時間があればできるだけ映画館で観たいと思ってる」ことを明かし「新しい映画館で、こんな風にスクリーンを見上げられる椅子で映画を観られて羨ましい」とkino cinéma 心斎橋について語り「ある日映画を観に行ったら、当時私がやっていたSNSのアカウントに『今日、映画館にいた人ですよね』とDMが来たんです。そこで『僕の映画に出てください』と言われて、初めて映画に出ることができたので、映画館は始まりの場所です」と映画館の思い出を語った。また、河合さんが初めて映画館に行ったのが『ラストサムライ』で「2000年生まれなので2歳で、親から聞いた話だと、泣いちゃって途中で出たらしいですが、抱っこされながら観た記憶がなんとなく残ってる」と振り返ると、入江監督は「僕の育った町には映画館がなくて、映画好きのおじさんがスクリーンと映写機を持ってきて上映してくれた。その人が地元にミニシアターを作ったんですが、夢は叶うんだなと思った」と思い出を明かす。年末も近づく中、来年の抱負を問われ、河合さんは「具体的には何も決めてませんが、余計なものを振り払ってシンプルに過ごしたい。余計な心配や感じなくていいストレスを手放して大胆に軽やかに」と抱負を語る。

 

 

最後に、入江監督が「この映画とともに日本全国を周ってきて、色んな方が杏や登場人物のことを考えてくださった。映画監督として節目の作品になった。僕も年末年始は映画館に通って元気をもらいたいと思いますので、関西の映画館で僕を見かけたら優しく声をかけてください」挨拶。河合さんは「『あんのこと』の公開当日はすごくドキドキしました。監督がよく、映画が公開すると自分の手元から離れていくとおっしゃいますが、初めてそういう感覚を得ました。嬉しい感想や色んな反響が届いて、映画を作って人に観てもらうってこういうことなんだと実感した作品です。そこから時間が経って、皆さんの前でお話できて嬉しいですし、映画館でまた公開されるので、初めてこの映画に出会う方がたくさんいてくださると嬉しいです」と挨拶すると、大きな拍手で見送られ、舞台挨拶は終了しました。

 

映画『あんのこと』は、大阪・心斎橋のkino cinéma 心斎橋でオープニング記念上映中。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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