古代日本人が衣服に込めた力探るドキュメンタリー『倭文(しづり) 旅するカジの木』がいよいよ関西の劇場でも公開!
©Visual folklore Inc.
日本神話の中で語られる神聖な織物である倭文の原料となるカジの木のルーツを辿って、台湾・インドネシアなどに足を運び、日本各地に残された倭文の痕跡を追う『倭文(しづり) 旅するカジの木』が6月7日(金)より関西の劇場でも公開される。
映画『倭文(しづり) 旅するカジの木』は、日本神話に登場する幻の織物・倭文(しづり)に着目し、衣の神秘的な始源をたどったドキュメンタリー。邪悪なものを祓い、身体を守護する神聖な力を持っていたという幻の織物である倭文。その力の源について解き明かす鍵は、衣服の始源を担ったカジの木にあった。中国南部を原産とするカジの木のルーツをさかのぼり、台湾、インドネシアのスラウェシ島、南太平洋のパプアニューギニアへと旅していく。さらに日本各地で倭文の痕跡を追っていくと、古代国家の重要な謎が明らかになる。現代の織物作家たちが倭文の創造的復元に取り組む姿も映し出す。『チロンヌプカムイ イオマンテ』など映像作品と文筆によって独自の“映像民俗学”を開拓してきた北村皆雄監督が、5年の歳月をかけて本作を完成させた。謎めいた日本神話の再現映像には、大駱駝艦主宰の麿赤兒さんと俳優としても活躍するアーティストのコムアイさんが出演。モデルの冨永愛さんが語りを担当した。
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映画『倭文(しづり) 旅するカジの木』は、関西では、6月7日(金)より京都・烏丸の京都シネマ、6月8日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。
淡路島出身者としては、倭文と書いて、しとおり、と読みたくなるが、本作では、日本神話に登場する幻の織物である、しづり、と読む。だが、⽇本の原始布が残る徳島県の旧⽊頭村を訪ねることから始まるので、関係ないことではないように思える。カジの⽊やコウゾの⽊の樹⽪からとった繊維による⽷で織った布が日本ではルーツを辿っていく上で重要であることも興味深い。しかし、糸を使わない織物以前の布が世界にあるというからさらに驚くばかり。そこでは、最近紹介した『フィシスの波文』で取り上げられた文様があるのだから、木をルーツに持つ文化が繋がっている、と気づかされた。そして、改めて、日本各地にある倭文の痕跡を追っていくと古代国家の重要な謎に辿り着く。カジの木が如何にして世界の中で伝播していき、”倭の国”にあるルーツにおいても重要な役割であったか。本作を観ながら、改めて様々な起源を知っていくと共に、挟み込まれる麿赤兒さんとコムアイさんによる舞踊によって神話を描いていく姿に羨望の眼差しを送らざるを得ない。
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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