当時の事件を今見ても、今の学生の心には響く…『青春の反抗』スー・イーシュエン監督とリー・リンウェイとイェ・シャオフェイに聞く!
©2023 SUZ CREATIVE STUDIO ALL RIGHTS RESERVED.
1994年の台湾を舞台に、世界最長の戒厳令を経て、表現の自由を求めて学生運動に参加した芸術を学ぶ学生が、活動のリーダー、その恋人の間で芽生えていく恋愛模様を描く『青春の反抗』が3月8日(金)より全国の劇場で公開。今回、スー・イーシュエン監督と主演のリー・リンウェイとイェ・シャオフェイへのインタビューが公開された。
映画『青春の反抗』は、戒厳令解除後の台湾で実際に起きた学生運動を題材に、若者たちの自由と揺るぎない愛を描いた社会派青春映画。1947年の二・二八事件をきっかけに戒厳令が敷かれ、1987年に解除されるまで40年にわたって市民への恐怖政治が行われた台湾。1994年、大学の黙従文化に不満を募らせた芸術学科生のチーウェイは、表現の自由のためにストライキに参加する。抗議行動が白熱していくなか、チーウェイは学生運動のリーダーであるクァンの恋人チンにひかれるが、クァンもまたチーウェイに興味を抱くようになり、3人の関係は複雑に絡み合っていく。やがてチーウェイは、創作の自由と同じように、内なる欲望と自身の感情は制約を受けるものではないことに気づく。Netflixドラマ「返校」のリー・リンウェイがチーウェイ役、新人俳優イェ・シャオフェイがチン役で主演を務め、Netflixドラマ「返校」のスー・イーシュエン監督が長編初メガホンをとった。2023年の第36回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門でも上映された。
【スー・イーシュエン監督】
☆1994年の学生運動を、なぜ今映画化されたのでしょうか?
一番の理由は、2015年にドキュメンタリーを制作していて、学生運動の映像などを調べていたときに目にしたためです。そのうちの1本が、創造の自由を求めて学校で34日間のストライキを行った美術学生たちの映像でした。これは台湾史上最⾧のストライキなのですが、実はこの中国文化大学の草山運動(別名:中国文化大学美術学科事件)は学生が中心で、当時はあまり情報が出回っていなかったので知らない人が多いのです。「野百合(学生運動)」などの方が知られているかもしれませんが、それよりもこの学生運動に私が惹かれたのは、先ほど話した創造の自由という、より個人に関わるものだったという点です。
’90 年代は、台湾の戒厳令が解かれた直後ということもあり、まだ政治的な要求のためのものが多く、特定の制度の廃止や政府の規制に対する抗議が中心でした。ですから、この運動は、逆に個人のための闘いという意味合いが強く、作り手である私にとっては、より身近な事件だと思います。そして、30年経った今でも、学生たちが創造の自由を求めて闘う、自分の意見を表明したいという欲求や、あるいは前の世代との考えや違いを表現したいと思う、そういった隔たりも、常に存在していると思います。ですので、この事件を今見ても、今の学生の心には響くものがあると思います。
☆影響を受けた映画監督はいらっしゃいますか?
アジアならイ・チャンドン監督と是枝裕和監督が好きです。イ・チャンドン監督の作品は、社会的な側面を描いたものが多く、歴史的、文化的な背景の中で、異なるコミュニティに属する人々や社会的に弱い立場の人々も含め、優しいまなざしで世界を見ています。是枝裕和監督は、どのシーンも現実に起こっていそうで、登場するすべての人々のやりとりがリアルに感じられるところがとても好きです。映画に現実感を出すのは非常に難しいと思うので、監督はドキュメンタリー出身の方なのかもしれませんね。
©2023 SUZ CREATIVE STUDIO ALL RIGHTS RESERVED.
【リー・リンウェイ】
☆演じるなかで大切にしていた部分、難しかったと感じた部分を教えてください。
私にとって、チーウェイは澄んだ水のような存在です。その純粋さこそが、チーウェイというキャラクターの核となる部分であり、一番重要な部分です。彼女を演じるためには、自分の中にその純粋さがなければなりません。
今は膨大な量の、複雑な情報が飛び交う時代です。だから、そんな純粋なキャラクターを演じることは非常に難しいことでしたし、大きな挑戦でした。
☆今後はどういったことに挑戦してみたいですか?
俳優としての道を歩み始めたばかりなので、いろいろなことにトライしたいと思っています。挑戦することが大好きです。
日本のチームと一緒に仕事をしてみたいです。ご一緒できる日を楽しみにしています。
また、スパイの役を演じてみたいという願望が少しあります。スパイはとても魅力的です!ある場面では、正体を偽りほかの誰かを演じていますが、実はミッションを遂行していて、効率的かつ冷酷、そしてセクシーな姿が魅力的です!
©2023 SUZ CREATIVE STUDIO ALL RIGHTS RESERVED.
【イェ・シャオフェイ】
☆この学生運動のことはご存じでしたか?
この映画を撮るまで、この出来事については知りませんでした。 少し調べましたが、それが本当にこの出来事について理解する助けになりました。撮影の準備を始めるときに、監督が当時の学生運動に参加した方々を呼んでくださり、話を聞かせていただいたり、フィールドワークに協力していただいたりしたので、非常に理解が深まりました。
☆演じたキャラクターとリンクする部分はありましたか?
2人とも矛盾を抱えているところかもしれませんが、矛盾の仕方が違います。例えば、チンは自分らしさを大切にしていて、他人のために行動や考えを変えることはありませんが、心の中では愛されたい、面倒をみてもらいたいとも思っている子供みたいな人です。だから私は、チンを演じるとき、基本的に矛盾の感覚を保たなくてはなりませんでした。私自身の矛盾している部分は、もっと別の種類のものです。実は、私は物事を正確に進めたいタイプなのですが、自分の感情に従って物事を進めるので、矛盾がとても多く、そこはチンとリンクするところですね。
☆今後はどういったことに挑戦してみたいですか?
『バイオハザード』のようなアクション映画に出演したいです。
映画『青春の反抗』は、3月8日(金)より全国の劇場で公開。関西では、3月8日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や京都・烏丸の京都シネマ、3月30日(土)より神戸・新開地のCinema KOBEで公開。
©2023 SUZ CREATIVE STUDIO ALL RIGHTS RESERVED.
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
- 最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!