“死の天使”に寵愛された男が真の地獄を語る『メンゲレと私』がいよいよ関西の劇場でも公開!舞台挨拶付き大阪先行プレミア上映も開催!
©2023 BLACKBOX FILM & MEDIENPRODUKTION GMBH
第2次世界大戦中に、数々の非人道的な人体実験を行ったヨーゼフ・メンゲレ医師に気に入られ、強制収容所で人間の暗部を目の当たりにしながらも生き延びた少年が、パレスチナへたどり着くまでを映しだす『メンゲレと私』が12月9日(土)より関西の劇場で公開。また、12月6日(水)には、大阪・十三の第七藝術劇場で舞台挨拶付き 大阪先行プレミア上映が開催される。
映画『メンゲレと私』は、『ゲッベルスと私』『ユダヤ人の私』に続く「ホロコースト証言シリーズ」3部作の最終作で、ホロコーストの生存者である91歳の男性ダニエル・ハノッホの証言を記録したドキュメンタリー。リトアニア出身のユダヤ人ダニエル・ハノッホは、9歳の時にカウナス郊外のゲットーに送られ、12歳でアウシュビッツ強制収容所に連行された。金髪の美少年だった彼は、非人道的な人体実験を繰り返したヨーゼフ・メンゲレ医師の寵愛を受け、特異な収容所生活を送る。しかしダニエルが見た真の地獄は、終戦間際に連合軍の攻勢から逃れるため捕虜たちが強制的に移動させられた「死の行進」だった。ダニエルはそこで、暴力や伝染病、カニバリズムといった人類史の最暗部を目の当たりにする。監督は前2作に続いてクリスティアン・クレーネスとフロリアン・バイゲンザマーが務めた。
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映画『メンゲレと私』は、関西では、12月9日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場、12月15日(金)より京都・烏丸の京都シネマで公開。また、12月6日(水)には、大阪・十三の第七藝術劇場でクリスティアン・クレーネス 監督とフロリア・ヴァイゲンザマー 監督を迎え舞台挨拶付き大阪先行プレミア上映を開催。
リトアニアのユダヤ人として少年期を過ごしたダニエル・ハノッホ氏の語りを映画として構築している本作。ホロコーストについては多くの映画でストーリーが描かれるほか、ドキュメンタリーや書籍が事実を伝えている。そのような構築されたものを通して心が動かされたり事実を学んだりした経験があったが、オーラルヒストリーによるホロコーストの語りは生きた声として、それまでの経験とは異なるものであった。ハノッホ氏は時に怒りや笑いを交えつつ、彼の身に起こったことと感じたことを淡々とした様相で言葉にする。語りを言葉で捉える以上のものが求められる作品であり、言葉の受け手一人一人が頭の中で映像にする光景というものが本質だ。
第二次世界大戦が終わって78年を迎え、経験者の生きた声を聴く機会はわずかになった。ハノッホ氏の語りからは、戦争経験者として存命の祖母のことを考えざるを得ない。ふとした時に語る祖母の声を記録にする必要があるのではないだろうか、という焦りもある。歴史が都合よく改変され、今を生きる我々を欺く道具になっている時代がすでに来ている。猶予はないだろう。
fromにしの
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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