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登場人物達の変化に伴い、観る側にも何らかの変化がある作品が素晴らしい…『かかってこいよ世界』佐藤玲さんと内田佑季監督に聞く!

2023年8月24日

ミニシアターを営む祖父と暮らす脚本家を目指す女性が、配給会社に勤める青年と出会い、映画と恋とアイデンティティに苦悩する『かかってこいよ世界』が8月25日(金)より全国の劇場で順次公開される。今回、佐藤玲さんと内田佑季監督にインタビューを行った。

 

映画『かかってこいよ世界』は、脚本家を目指す女性と在日韓国人3世の男性、そして彼らを取り巻く人びとを描いたドラマ。東京でミニシアター「白鯨坐」を営む祖父の正一と2人で暮らす浜田真紀は、脚本家を目指している。ある日、真紀はバイト先の居酒屋で映画配給会社に勤務する新井国秀と知り合い、恋仲になる。ある時、国秀は、正一にある作品を白鯨坐で上映したいと持ちかけてくる。それは在日韓国人を題材にしたドキュメンタリー映画だった。当初は上映を渋っていた正一だったが、国秀の熱い思いを汲んで上映を決断する。真紀と国秀の仲が深まる中、真紀は国秀から自身が在日韓国人3世であることを告げられる。その瞬間から2人の関係は少しずつ変わってしまう。真紀役を『死刑にいたる病』の佐藤玲さん、国秀役を『きみの正義ぼくの正義』の飛葉大樹さんがそれぞれ演じる。監督は短編『触れてしまうほど遠い距離』などを手がけてきた新人の内田佑季さんが務めた。

 

脚本家の梶原阿貴さんがプロデューサーとなり、若手女性監督による映画の企画があった。内田監督は、大学の先輩でもある脚本家の畠中沙紀さんとプロットを作る段階から携わり、脚本を一緒になって作っていく。内田監督は、畠中さんのプロットを見た時、ドキッとしてしまう。「今は言葉に敏感になっている時代。監督として在日韓国人というセンシティブな題材を撮る意味をしっかりと確信して見つけられるだろうか」と不安もあったが、今回のオファーについて「純粋にありがたい御依頼。学生時代から自主映画を撮っていたので、予算がある商業映画を撮るチャンスが容易に巡ってくることはない。撮影現場で働いてきたわけではないので、これが最後のチャンスかもしれない」と覚悟をもって臨んだ。佐藤さんも「恋愛をモチーフとして扱いながらも、センシティブな話題にも触れている。ボーイミーツガールなストーリーの中で、このテーマは本当に繊細だった。物語の主軸を大事にしながらも、その扱うテーマも大切に取り組んでいくことが凄く難しい」と受けとめ「大事なポイントであることを理解して、内田監督や相手役の飛葉さんと相談しながら一緒に作っていった」と話す。

 

役作りにあたり、佐藤さんは「真紀の”脚本家になりたい”という夢について、母親を中心にして、家族にどういう風に伝え、受けとめてもらえるか。真紀が葛藤しながら、どのように乗り越えていくか」と熟考。「真紀は、家族や友人や仕事で関わる人達との関係について、自分なりのやり方をしっかりと構築している人ではない」と認識し「他者との関わり、その中でも一番関わる時間の長い母親との付き合い方は大事なテーマであり、真紀が成長するテーマだ」と理解し、演じるようにした。クランクイン前に十分な準備期間を確保するのは大変ではあったが、内田監督は佐藤さんと沢山の質問のやり取りを行い「キャラクターの正解は監督としては持っている。ただ、実際にキャラクターを作るのは、やはり役者さん。肉体で表現された時にキャラクターが出来上がる」と手応えが得られている。

 

 

撮影現場について、内田監督は「撮りきれるか撮りきれないか、毎日が狭間の戦いだった。限られた時間の中で絶対撮り切らないといけないので、あまり記憶がない程に必死になって撮影をしていました」と振り返りながらも「普段は少人数で作っていたので、スタッフの方々が増え、短時間でコミュニケーションしながらチームワークを作らないといけないことは、いつもの撮影と違いますが、楽しかったですね。大きなトラブルは無かったので良かったです」と思い返す。とはいえ、家のシーンでの撮影は大変で「屋根裏にある真紀の部屋が凄く小さい。それが良いと思って選びましたが、真夏を迎える前の時期に30人程度のスタッフが入りエアコンを設置できない状況下で撮影していたので、過酷でした」と打ち明ける。佐藤さんも「狭いお部屋で汗をかきながら演じましたね。登場人物として、ここは別に汗をかいているわけじゃないところもありました」と苦笑しながらも「世界観がしっかり作り込まれたお部屋でした。クランクインした日にその部屋で撮影することが多かったんですけど、真紀という女の子がどういう生活をしているのか、どういうものに興味があるのか、お部屋にいる時間が進むにつれて馴染んできた」と肌感覚からも真紀を理解していった。佐藤さん自身は、様々な役を演じてきた中で「役と完全にシンクロしたことはあまりない。私の経験ではおそらく1つもない」と告白しながらも「100%パーセント一致ではないけど、真紀の要素に関して、シンクロしている経験を多面的に考えた時に、リンクしている箇所は要所にあり、短い撮影期間の中で集中力が高まり、次第にエンディングに向かうにつれて、ドライブがかかっていった感覚が次第にありました」と振り返る。

 

編集作業について、内田監督は「自主制作では、編集中に一度は”これはダメだ”と挫折を感じてしまいますが、最終的には納得できる作品に仕上がっていく」と述べ「今回は尺が長い分だけ確認作業等が大変ではありました。1回目のラッシュ作業を経て、プロデューサー達と意見を交わしていく中で『オープニング映像をつけた方が良い』ということなり、当初予定していなかったオープニング映像の制作では、アニメーション等も含め既存の素材の中で作らないといけなかった」と明かし、苦労を重ねている。本作について「本作に関する企画を話して、映画の脚本を書き、役者さんが台詞を発した時点で、映画が始まっている」と捉えており「佐藤さんが真紀になって演じられた時点で、芝居の空気感や作品としての間が生まれた段階で既に映画になっている」と実感できた。

 

完成した作品について、佐藤さんは「撮影中は、真紀の成長を感じていた」と思い返しながら、自身が映っていないシーンが加わると「真紀の物語が主軸ではあるけれども、真紀を取り巻く人々の思いや葛藤や悩みや障壁が全体を通して伝わってくる」と脚本に立ち返って感じている。改めて「撮影中は視点が第一人称になってしまうところもあるんです。1人の観客として、恋愛下手な男女の出会いや成長物語だと一口には言えない広がりと深さの両方を感じられて、こういう映画になったんだな」と冷静に受けとめていた。内田監督は、試写の機会に「ラストがバシッと決まっていますね」と言われたことを喜んでおり「撮影前から、ラブストーリーが大前提で撮っていたので、観終わった後は好きな人に会いに行きたくなるような映画にしたいな、という思いがありました。『気持ちよく終わった』という感想を聞くことが出来て良かった」と嬉しそうだ。

 

今作は、畠中さんの実体験を基にした作品だが、内田監督は「次作は可能ならば自分の企画で監督して長編が撮れたらいいな」と楽しみにしている。佐藤さんは、最近では俳優活動だけではなく、制作の仕事を勉強するために活動しており「観始める前と観終わった後に何か持ち帰るものがあったり新しい発見があったりしながら、映画の中の登場人物達の変化に伴って、観る側にも何らかの変化があることが良い作品の1つの条件なんじゃないか」と考えており「今作はピッタリの作品だと思っています。今後も観にきてくださる方が何か1つ持って帰るものがある作品に俳優として参加したいですし、作品を作っていく時にはそういうところを大事にしていきたいな」と未来に目を輝かせていた。

 

映画『かかってこいよ世界』は、8月25日(金)より全国の劇場で順次公開。関西では、8月26日(土)より神戸・新開地のCinema KOBE、9月9日(土)より大阪・十三の第七藝術劇場で公開。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

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