Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

Now Loading...

関西の映画シーンを伝えるサイト
キネ坊主

  • facebook

世間からは愛でも正義でもないかもしれないけど、信じ通す映画を作りたい…『Love Will Tear Us Apart』宇賀那健一監督に聞く!

2023年8月16日

©James Ozawa

 

とある出来事以降、関わった人々が次々と殺されていく主人公と、犯人の目的に隠された真実を描く『Love Will Tear Us Apart』が8月19日(土)より全国の劇場で公開される。今回、宇賀那健一監督にインタビューを行った。

 

映画『Love Will Tear Us Apart』は、『転がるビー玉』『異物 -完全版-』『渇いた鉢』など様々なジャンルの映画を発表し続ける宇賀那健一監督が、『サヨナラまでの30分』『藍に響け』などで注目された久保田紗友さんを主演に迎えて描いた、サスペンスホラー&ラブロマンス作品。真下わかばは小学生のころ、いじめられていたクラスメイトの小林幸喜を助ける。しかし、それ以降、彼女と関わりをもった人たちが次々と殺されていくようになる。犯人も目的もわからないまま時は過ぎるが、やがて犯人が判明したとき、わかばは本当の愛を知ることとなる。主人公のわかば役を務める久保田さんに加え、友人役で『はだかのゆめ』などの青木柚さん、『女子高生に殺されたい』『なのに、千輝くんが甘すぎる。』の莉子さんが出演。そのほか、吹越満さん、麿赤兒さん、前田敦子さん、高橋ひとみさんら実力派の俳優達も多数出演した。

 

多様性が謳われている昨今に対し「正義や愛の形のようなものが凄く分かりやすくセグメントされている気がしている。結果的に、SNSでは言葉狩りのようなことが起きている」と異様な状況を鑑みている宇賀那監督。また「隣人を愛せない人が社会を語ることはできない」と考えており、愛を描く一つの表現として、セカイ系作品に注目してきた。特に、新海誠監督の『天気の子』が公開された際には「主人公が社会より愛する女の子を選んだ結果として地球が滅亡しそうになることを1つの美しいストーリーで描いている」と衝撃を受け「”こういう映画を待っていた”という観客としての喜びと共に、”先にやられてしまった”という作家としてのショックもあった。次は、自分なりの『天気の子』みたいな作品を作りたい」と模索。「『天気の子』は社会の表側から見せている。では、その真逆側から描くと、どうなるんだろう」と視点を切り替え「例えば『悪魔のいけにえ』では、レザーフェイス側の感情からの視点も描いた、お互いの思いが錯綜する作品を作りたい」と着想していく。「世間一般からすれば、それが愛ではないのかもしれないし、正義とは認められないことなのかもしれない。だけど、それが正義だと信じ通す映画を作りたい」と気づき、本作の制作に至った。なお、タイトルの「Love Will Tear Us Apart」は、イギリスのポストパンクのバンドであるJoy Divisionの代表曲でもあり「大前提として、Joy Divisionが大好きだが、最初からタイトルがあったわけではない」と呈した上で「今回は、或る種のポストホラーを描こうとしている。タイトルを直訳すると、愛は2人を切り裂く。作中に起こった出来事によって、ある2人が精神的な意味も含め離れていく。同時に、スラッシャームービーとして愛が誰かを切り裂いていく物語でもある」と述べ、ダブルミーニングであることも説く。

 

今回、独特のテイストを持つ作品を手掛けている映画監督の渡辺紘文さんと共に脚本を書いている。宇賀那監督は、渡辺監督の作品がお気に入りで「渡辺さんも僕の作品をずっと気に入ってくれていた。何かやりたいな」と願っていた。渡辺さんのトークイベントに登壇した時に「ホラーが大好きだ」と話をしたら「渡辺さんも滅茶苦茶ホラー好きだった。本当に詳しい。今までの作品ではホラーをイメージする作品こそないが、新しい風となる方法論を持っている方。なおかつ、年齢的にもキャリア的にも先輩。ご一緒したら、何かおもしろい化学反応が生まれるんじゃないか」と期待し、本作の執筆にあたり、オファーしている。2人による執筆は、最初に宇賀那監督がロングプロットまで書き、それを元に渡辺さんが初稿を作成。以降は宇賀那監督主導で進められ「ここはもっとこうしたい」と話し合っていき「あるシーンを考えてもらいながらも、丸々カットすることもある。お互いに意見を出し合って作っていった」と説明。宇賀那監督自身はサスペンスに興味がなかったが「渡辺さんがいなかったら、サスペンスの要素は入っていない。今後、もし僕がずっと1人で今後脚本書き続けたら、サスペンス要素は1回も入ってこない。そういう意味でも無茶苦茶刺激的でしたね」と良き時間となったことを振り返る。

 

キャスティングにあたり、若手俳優らを揃えたメインキャストは基本的にオーディションで選んだ。同時に、今回は周辺のキャストも大事にしており「物語に深みを与える。なおかつ、映画に深く接している人間であればいるほど、おもしろがってくれるような内容でもあったので、僕がご一緒したいと思っていた方々にお声がけしていった」と話す。撮影は2年前の夏に実施しており「コロナ禍によって様々なことが窮屈になっていく。感染症対策をしなければいけないから、画が窮屈になっていってしまっている部分がある」と実感しながらも「こんな時代だからこそ、感染症対策はしっかりしながら、できるだけいろんなロケーションで撮影がしたい」と計画していった。ロケーションの数も多く移動の回数増えると共に、造形的要素が多く、スタッフによる準備やケアも大変に。ホラー要素があることで、感情を最高潮まで到達しないといけないシーンの数も多くなり「アクションをやりながら、感情をマックスに高めなきゃいけない俳優部の精神自体は相当ボロボロだったと思います。俳優部もスタッフも、大変だったと思う」と気遣った。なお、子役の俳優が多く出演しているが、子供を特別視扱いせずに演出しており「オーディションで選んだ時点で、自分のやるべきことを明確に分かっていた方々。感情が爆発するシーンも多いので、リハーサルから100%で演じようとしてしまうが『10%で良いので、100%は取っておいてね』と」という指摘をより丁寧に行うように心がけたこと以外は大人と同様に接しており、1つ1つのシーンを丁寧に仕上げている。

 

本作について「本質的にはサイコパスな映画ではあるけど、サイコパスを描いた映画ではない。主人公達は、真面目に愛だと思って演じているが、客観的に見るとコメディかもしれない」と評し、クライマックスシーンについては「キャストやスタッフの思いが爆発したシーンだった。僕が目指していたロマンスであり、ホラーであり、サスペンスであり、コメディといった要素がしっかりと全部このシーンに詰まったな」と手応えがあり、本作の完成を確信できた。

 

出来上がった作品のワールドプレミアは重要視しており「夏に公開するホラー作品として決めていたので、映画祭と劇場公開する時期とのバランスは大事。春は意外と映画祭の数が少なく、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭が4月なので、ピンポイントで狙っていった」と明かす。ポートランドホラー映画祭では、クライマックスシーンで大爆笑が起こったのを見て「無茶苦茶嬉しかった。外国ではこういう反応になるだろうと思っていたので」と喜んだ。また、今作前半にある虐めのシーンへのコメントもあり「虐めやネグレクト、貧困に関する部分に関して追求されることが多かったのは意外だった。コロナ禍では諸外国においても貧困レベルが強まった人も多かったり、家で一緒に過ごす時間が多くなりネグレクトが行われたりすることが多くなった。虐めに対する1つのアンサー映画だ、と云われていた」と関心の高さがうかがえる。なお、日本で試写を行った際の反応として「ロマンス映画とコメディ映画に捉え方が二極化しており、個人的には興味深い。ホラー好きな方からしたら、別にそんなにホラー要素が強い作品には見られないかな」と捉えていた

 

今後は、今秋から来春にかけて立て続けに新作の劇場公開を予定している。昨年に撮影した作品がほとんどであり「自分で書いて自分で撮るからこその早さもある。エッジの効いた作品である代わりに、規模の大きな作品ではないので、小回りが効きやすいところもある」と挙げ「『異物-完全版-』のように、短編から長編にした作品が2本もある。結果として、短編がティザーとなり、短編の時点で映画祭での評価があると、長編作品が撮りやすい。コロナ禍で誰かが感染すると撮影が止まってしまうので、1日か2日で撮り切る短編を作るプロセスが出来上がっていった。最初から狙っていたわけではないけども。ある意味ではコロナ禍の産物かな」と冷静に語った。

 

映画『Love Will Tear Us Apart』は、8月19日(土)より全国の劇場で公開。関西では、8月19日(土)より京都・九条の京都みなみ会館、9月23日(土)より大阪・十三のシアターセブンで公開。また、神戸・元町の元町映画館でも近日公開。なお、8月20日(日)には、京都みなみ会館で17:20~の回上映後に宇賀那健一監督を迎え舞台挨拶開催予定。

キネ坊主
映画ライター
映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
最新のイベントレポート、インタビュー、コラム、ニュースなど、映画に関する多彩なコンテンツをお伝えします!

Popular Posts