ワンカットならではの難しさを改めて思い知らされた…『札束と温泉』小浜桃奈さんと佐藤京さんと川上亮監督を迎え舞台挨拶開催!
温泉宿を舞台に、修学旅行中の女子高校生がお金の入った鞄を見つけたことで事件に巻き込まれていく様を描く『札束と温泉』が7月7日(金)より関西の劇場でも公開中。7月8日(土)には、大阪・心斎橋のシネマート心斎橋に小浜桃奈さんと佐藤京さんと川上亮監督を迎え舞台挨拶が開催された。
映画『札束と温泉』は、『人狼ゲーム』シリーズの原作・脚本を手がけ、シリーズの8作目『人狼ゲーム デスゲームの運営人』では自らメガホンもとった川上亮さんの長編監督第2作。今作は、古風な温泉宿を舞台に、女子高生たちがいわくつきの札束を発見したことから起こる混乱を描いたクライムコメディだ。高校の修学旅行で訪れた温泉宿で女子高生たちが、ヤクザの愛人が持ち逃げした札束の詰まったバッグを発見する。金を取り戻すために現れた殺し屋や、ヤクザの愛人、担任の教師など、さまざまな人物の思惑が絡まり、混乱が広まっていく。主演は「ミスマガジン2018」グランプリで注目され、グラビアのほかドラマ「彼女、お借りします」や映画『グリーンバレット』などでも活躍する沢口愛華さん。そのほか小浜桃奈さん、糸瀬七葉さん、大熊杏優さん、佐藤京さん、星れいらさん、小越勇輝さんら若手俳優たちが共演した。
上映後、小浜桃奈さんと佐藤京さんと川上亮監督が登壇。川上監督による司会の下、和やかな雰囲気の中で舞台挨拶が繰り広げられた。
シネマート新宿での公開2日目、佐藤さんは、高校時代の親友と一緒に鑑賞しており「あ、画面に出てるんだね」と言われたことを告白。「俳優を始める時に相談していた友達だった。『左に京がいて、前の画面に映っていて、感慨深いわ』と言って下さって、泣きそうになった」と聞き、嬉しくなりがらも「映画の中身は、ドタバタしてました」という言葉を噛み締めていた。小浜さんは母親と観に行っており「私が演技していること自体が不思議。ちゃんとした演技や映画も初めて」と認識しながら「すっぴんだし。私の冬の部屋着とほとんど同じ。『家にいる桃ちゃん観たい』と言われた。家にいる我が子がスクリーンに映っているので『おかしな感覚で内容が入って来なかった』と言われた。なんて失礼なんだ。でも『もう1回観に行きたい』と言ってくれたのは嬉しかった」と本音を漏らす。
撮影では、小浜さんが勝手に御化粧してメイクさんに怒られていたようで「温泉のシーンから始まる。お風呂の設定なんです。5日間で撮っているので、毎日メイクの濃さが違う。風呂上りはまつ毛が上がっている。まつ毛を上げるためにホットビューラーをかける。まつ毛を上げ過ぎていて『上から抑えて下さい』と言われていた」と真相を話していく。また「涙袋を書いたら、コンシーラーを塗られた。ひたすら顔を修正されて、メイクさんと戦っていた」と振り返ると、川上監督からは「戦わなかったいいじゃないですか」と突っ込まれてしまう。しかし、小浜さんは「普段からメイクが濃いので、薄い自分を見ていると家にいる自分を見ている気分になり、気合が入らない。まつ毛を上げないとスイッチが入らない。その反動で、塗ったことないぐらいにアイシャドウを入れて遊びに行った」と明かす。撮影オフの時間について、佐藤さんは「修学旅行の夜という舞台設定なので、5日間の昼は皆お休みでした。メイク準備やアクション指導練習に時間を当てていた。オフの日に監督が別府冷麺に連れて行って下った。その帰りに、私と桃奈でこっそりハーモニーランドに行って、オフを満喫した日がありました」とフォロー。小浜さんは「なおさら仲が良くなった。糸瀬さんと3人でごはんも行っている」と加えると、佐藤さんは「このメンバーで行けるのは縁がありますね」と仲の良さを表す。
取立人であり名目上は殺し屋である越智遥を演じた佐藤さんは、役柄について「本人としては、いたって自分が好きな仕事を選ばず、向いていた仕事に流れていった。折り合いをつけた人生の着地点が偶々殺し屋だっただけ。あくまでも遙は様々な人生を抱えた人として演じたい」と理解して演じていた。また、川上監督と様々に話していく中で「現場の中に入って見つけたひかるへの思い入れが撮影を重ねていく毎に遥の中でドンドン膨らんでくる気持ちがありました」と振り返る。そこで、ラストシーンについて「『本当にどうだっていいんです』という台詞について、言葉通りではなく、遥としてひかるの背中を押したい気持ちが強くなり、監督に『こういう気持ちを込めて伝えてもいいですか』と話した。温泉のシーンを回収する台詞を遥が話すので、ひかると遥の気持ちが近くて、映画の中でも少しでも自分に近い存在に願いをかける。嫌いな若者の背中を押したいと思う遙になったよ、と気持ちを込めたかったな」と回想した。
改めて「撮影中は真面目だったんですよ」と小浜さんは話し「京ちゃんと2人で2階のスイートルームで話すシーンを撮り終わった後、大号泣してたんですよ」と打ち明ける。「8回ぐらい撮ったんですけど、納得いくものがなかった。大人の価値観は違うので、私の中で描いてきたひかるがあったので、ひかるを突き詰めたい。なかなか嚙み合わず、悔しくて泣いていた。でも、そのシーンを観たら、すっと腑に落ちた」と安堵し、作品全体を観て「私と京ちゃんの掛け合いやテンポ感について良いものを選んで頂いた。こうやって見えるんだ、と違いが分かり学びを深められた」と実感できた。佐藤さんから「疑似ワンカットだから、何回もシーンを取り直す程良いシーンになるわけじゃない。カメラマンや録音さんや私達の集中力が疲れてくる。シーンがカチッとハマる瞬間をお互いに探っていくのも難しかったですね」と話すと、小浜さんは「ワンカットならではの難しさを改めて思い知らされた。大分に行く前から『2人のシーンは完璧にしよう』と話してきた。もっと準備できていたものがあるんじゃないか、と悔しかった」と振り返る。
最後に、小浜さんは「私が女優、というイメージがかけ離れていた。女優は作られているもの!?でも、作り込むというより、素を活かさせて頂いた部分が大きかった。だから演じることを楽しさを知れた。全部作るのではなく自分を活かせることも、やりがいを感じることが出来た」と実感しており「今度はもっと違う役、殺し屋みたいな役もやってみたいな。監督に『私にアイドルの作品を書いてくれ』と言ったんです。アイドルになりたいけどなれないから『劇中でアイドルにならせてくれ』と話したので、アイドル役が出来たらいいな」と渇望。佐藤さんは「人が好きなので、映画に俳優として携われることが嬉しいです。始めて来た映画館で自分が舞台挨拶で立たせて頂けるのは感慨深いですね。様々なところに作品を届けられるようにしたい。いつか映画祭や海外に向けても進出していけるぐらい良質な作品に出会っていけるように演技を磨きたい」と現在の思いを話し、舞台挨拶は締め括られた。
映画『札束と温泉』は、関西では7月7日(金)より大阪・心斎橋のシネマート心斎橋や京都・九条の京都みなみ会館で公開中。
Photo by りらいと
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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