ウクライナ民謡に支えられた戦時下の3家族描く『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』がいよいよ劇場公開!
©MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020
第二次大戦下で歌に支えられ戦時下を生きた3つの民族の家族を描く『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』が7月7日(金)より全国の劇場で公開される。
映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』は、ウクライナ民謡をもとに生まれたクリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」をモチーフに、ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が戦火に翻弄されながらも子どもたちを守り抜こうとする姿を描いた戦争ドラマ。1939年、ポーランド領スタニスワブフ(現ウクライナ、イバノフランコフスク)。ユダヤ人が暮らす母屋に、店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越してくる。歌うことが得意なウクライナ人の娘ヤロスラワは「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面ではいつもその歌を披露していた。やがて第二次世界大戦が勃発すると、スタニスワブフはソ連軍やドイツ軍の侵攻を受け、ソ連に占領されてしまう。ポーランド人とユダヤ人の両親たちは迫害によって連行され、彼らの娘たちは家に残されることに。ウクライナ人の母ソフィアは3人の娘を分け隔てなく守り続け、さらにドイツ人の息子も匿うことになるが…
本作では、ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカらが出演。テレビドキュメンタリーを中心に手がけてきたウクライナ出身のオレシア・モルグレッツ=イサイェンコが監督を務めた。
©MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020
映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』は、7月7日(金)より全国の劇場で公開。関西では、7月7日(金)より大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や心斎橋のシネマート心斎橋や京都・烏丸御池のアップリンク京都、7月14日(金)より神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開。
幼い子供たちの美しいソプラノの歌声で始まるこの物語は、とても悲しく、そして心に残る。これまで幾多の映画で描かれてきたように、この物語もまた、第二次世界大戦の時代に命を奪われた数えきれない人々と、それを生き抜いたわずかな人々の、語り継がれるべき物語のひとつだ。
第二次大戦中はナチス・ドイツからの侵攻に怯え、終戦後はソ連からの圧力に蹂躙され、大国に翻弄されてきたウクライナ人の心情を描く様子は、現在まで地続きの切実なメッセージとして観るものに投げかけられる。一軒のアパートメントでたまたま隣人になったいくつかの家族たちが交流するが、彼らは一人また一人とナチスの手によって連れ去られ引き裂かれていく。2つの時間軸が描かれるため、一部の登場人物の行く末はある程度序盤に示されているが、それだけに周囲にいる人物達の行く末が心配で、ずっとやきもきしながら観ていた。ナチスが家に押し込んできた時、ユダヤ人の子供達はどうやって身を潜めたのか。突然に収容所へと連行される親が、せめて我が子だけは逃がしたいと選択した行動はどんなものだったのか。これもまた、過去に「アンネの日記」やその他の小説や映画で何度も描かれてきた情景が、リアリティを伴って見せつけられる。
ありきたりな作品なら、子供たちのコーラス大合唱シーンをクライマックスに持ってきて感動的なフィナーレを飾って終わることもできたのだろうが、本作は違う。もしかしたらそこで締めくくるのかな、という予想はしていた場面なのに、切なくも少しホッとするエンディングにただ落涙した。難しい役で、実質的な主人公であるソフィア先生がとても良いキャラクターであり、ヤナ・コロリョーバという俳優の今後の出演作にも注目したい。
fromNZ2.0@エヌゼット
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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