上手くいっていない人がもう一歩だけ足掻いてみようかな、と思ってもらえたら…『愛のこむらがえり』磯山さやかさんと吉橋航也さんと高橋正弥監督を迎え舞台挨拶開催!
日本映画業界の片隅で理想とする映画を作ろうと奔走する男女の悲喜こもごもを描く『愛のこむらがえり』が関西の劇場でも公開中。7月1日(土)には、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田に磯山さやかさんと吉橋航也さんと高橋正弥監督を迎え舞台挨拶が開催された。
映画『愛のこむらがえり』は、映画の街である調布を舞台に、映画制作の夢をかなえるべく奮闘するカップルの悲喜こもごもを描いたハートフルコメディ。地方公務員として働いていた佐藤香織は、地元の映画祭で見た自主映画に感動し、仕事を辞めて上京する。映画関係の仕事に就いた香織は、とある撮影現場で彼女を感動させた自主映画を作った浩平と出会い、2人は恋に落ちる。同棲するようになった2人だったが、そこから8年の月日が流れたいま、2人は崖っぷちに追い込まれていた。そんな中、浩平が書きあげたシナリオにほれ込んだ香織は、映画化を実現させるべく奔走するが…
磯山さやかさんが香織、劇団東京乾電池の吉橋航也さんが浩平を演じ、柄本明さん、品川徹さん、吉行和子さん、浅田美代子さんらベテラン勢が脇を固める。『渇水』の高橋正弥監督がメガホンをとった。
上映後、磯山さやかさんと吉橋航也さんと高橋正弥監督が登壇。天候の悪い中で朝から集まったお客様を前に和やかな舞台挨拶が行われた。
TVのバラエティー番組への出演で来阪することが多い磯山さんは「会話のリズムが早くて、一瞬置いてかれそうになるんですが、楽しいですね。皆さんが楽しんでいらっしゃるので、そこに一緒になると、自分もおもしろいんじゃないか、と思えて。アットホームな雰囲気が好きです」と大阪を気に入っている。また、大阪ならではのグルメも好きで「番組で、梅田の北で開発されているところ、おにぎりやらーめん、意外なものが。オシャレなお店もあり、おもしろいな」と堪能しているようだ。吉橋さんは、2年前に、柄本明さんや藤原竜也さんらが出演の舞台が新歌舞伎座で開催され、演出助手として関わっており「新歌舞伎座の近くに古くからある明治屋という呑み屋に1人で入って、とてもあたたかくして頂いた。料理も美味しかった」と良い思い出になっている。高橋監督は、20代の頃に阪本順治監督らの作品に携わり、新世界で過ごしていたことがあり「ディープなエリアが分かります。最初に監督した作品は大阪を舞台にした映画でした。新世界あたりから始まり梅田や淀川に向かっていく」と思い返し「20代から30歳前後はよく大阪にいました。食べのが美味しい。お好み焼き屋さんに行くようにしていました。50mおきにお好み焼き屋さんがあるので、色々なところに行って味を楽しんでいました」と懐かしんだ。
主演作が18年ぶりとなる磯山さんは、マネージャーからオファーの話を聞き「バラエティーに出ていることが多かったので、ある番組のドッキリなんじゃないか、と思いドキドキしていました。『何故、私なんだ!?そんなはずない!』と、嬉しさより疑いの方が大きかったですね」と告白。脚本が届き「『愛のこむらがえり』というタイトルも絶妙だな」と思い、さらに半信半疑に。その後、監督から御手紙を頂いたり御会いしたり他のキャストと共に本読みをしたりしながら、じわじわと実感が湧いてきた。吉橋さんにとっても初主演となる本作だが「嬉しさと同時にプレッシャーもあった。どうしよう、気持ちも同時に湧いてきた」と最初は落ち着かなかったが「クランクインしてから、楽しくてしょうがなかった。クランクイン前のヤバい心境の時、角替和枝さんからの『映画に主演するようなことがあったら、大事なことは、頑張らないことだぞ』というアドバイスを思い出した。今頑張ちゃっているから舞い上がって気持ちのアップダウンが激しいんだと思い、頑張らないようにしていたが、クランクインの朝に、柄本明さんから『頑張れ』というメールが…」と困惑しながらも、自身の中でツッコミを入れて気持ちが楽になった。なお、今回の舞台挨拶登壇にあたり、張り切ってオーダーメイドのスーツを作って着ており、気合いが入っている。
キャスティングにあたり「かおりさんは太陽のように明るくて笑顔が素敵なヒロインがいいな」と思い描いた高橋監督は「数多くいる女優さんの中から、磯山さんが良いな」とひらめく。吉橋さんについて「(浩平の)一見頼りなくて情けないところがあるが、ひたすら直向きに頑張るところが、吉橋君本人のキャラクターに合っていました」と明かす。演じた香織について、磯山さんは「人の為に頑張ろうとする思いは共感できる。だけど、あそこまで行動できるか。難しいな」と冷静に話す。酔っ払いになるシーンがあるが「お友達からは『普段っぽい』とは言われる。あんな風になるかな、と驚いています。酔っぱらったら、どうなるんでしょうね」と惚けるが、すかさず高橋監督は「酔っていてもしっかりしているような気がしますけどね」とフォローしていく。浩平を演じた吉橋さんは「(自身が)抜けていたり、絶妙なタイミングで電源がおちたりする。大学時代、駅のホームで電車に乗る時、友達と喋りながら乗ろうとしたら、隙間にスポッと落ちた。リュックでどうにかひっかかった。トイレで便器に嵌ったこともあるが、誰も観ていないのが残念」と自身のエピソードを披露。これを受け、高橋監督は「絶妙なタイミングで色々やって頂いた。磯山さんも吉橋君もこのままの感じです。コメディっぽく撮っているつもりなんですが、わりとドキュメンタリーに近づいているかな、と思いながら撮影していました」と振り返った。
作中には、映画業界ならではエピソードが盛り込まれているが、元々はオリジナル脚本が存在していた今作。高橋監督としては「助監督の経験や映画業界の話は身につまされるようなエピソードが沢山ありました。僕自身も浩平のように失敗しながら育ってきたので、自分の中に取り込みながら監督や演出が出来た部分が大きい」と自負がある。だが、映画業界に関するエピソードより、2人の出来事をフィーチャーしたく「家の中で言い合いや作品終盤での出来事は、振り返って観ていてもおもしろい。2人に一生懸命に演じて頂いたので、そういうところも観て頂けたらな」とお願いしていた。2人が言い合いになるシーンではノートを投げる演技もあり、磯山さんは「本当に狙っていった、むかついていたので。監督の気持ちで演じて下さい、と言われていたので。言葉のリズムとか考えずに」と正直に話し、吉橋さんは「本当に角が当たった。でも、有難かったです。痛がる演技をしないので。流石だな。コントでは絶対に外さない人」と讃えた。
最後に、磯山さんは「皆さんに観て頂いて、心があったまったり、”頑張ってみよう”とか”応援してみよう”と思って頂けたりしたら嬉しいです」とメッセージ。吉橋さんも「今現在、上手くいっていない人も沢山いると思います。そんな時、もう一歩だけ足掻いてみようかな、と思ってもらえたら嬉しいな」と願っている。高橋監督は「関西の笑いとは違う感じで、皆さんのご感想が心配ではありますが、おもしろかったり良かったりしたら、広めて頂ければ」と思いを込め、舞台挨拶は締め括られた。
映画『愛のこむらがえり』は、関西では、大阪・梅田のシネ・リーブル梅田や京都・烏丸御池のアップリンク京都や神戸・三宮のシネ・リーブル神戸で公開中。
Photo by りらいと
- キネ坊主
- 映画ライター
- 映画館で年間500本以上の作品を鑑賞する映画ライター。
- 現在はオウンドメディア「キネ坊主」を中心に執筆。
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